『賭博エリア⑳』
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「うーん?」
「どうでしょうか──?」
結界から少しだけ外側へ──そう外側へと出たヘルメスにナビが問いかけているが当の本人は実感が感じられていないのか不思議そうに首を傾げているのだった。
「違和感が無さ過ぎて──」
「エリアのコントロールはどうでしょうか?」
「それは手足の様に感じられるのと──うん、分かる」
ナビの指摘にヘルメスは頷きつつ、1つ1つ丁寧に確認するように自身の現状を確かめるのだった。
*
「うん──違和感も無い。もう少し離れてみたいかも……?」
「えっと──そうなりますと……」
『もう少しか……』
(距離感的には……)
「えっと……一緒に居たいの」
『…………』
言わずもがなとは──こういう事なのだろうか。
自分とナビが悩んでる素振りをしてる中で本当に伝えたい事をヘルメスは念を押すようにこちらに伝えてくるのだった。
*
(ん……?)
ヘルメスがこちらにお願いして来たタイミングと同じく魔力ネットワークを介して連絡が自分に来る。
でも、周りの皆を見るに共通して連絡が来ているみたいだった。
「あのー? 繋がってますか? もしもーし!」
「繋がってますよー!」
連絡を皆に寄越して来たのは先程別れたセーレさんからだった。
セーレさんの問い掛けにリンが元気よく応える。
「あ……よかったです! えっと──大丈夫そうですか? もう試されましたか?」
『今しがた試し終わった所ですね』
「あ……なるほど。 えっとですね──すみません、何て言えば良いのでしょうか……」
セーレさんの少し言葉に悩むような声が聞こえてくると同時に魔力ネットワーク上ではセーレさんの姿が反映される。
そこはどこかの書斎のようで──重ねて反映されると同時に横合いから渋めの男性の声が入って来るのだった。
「セーレよ、大丈夫だ。彼らに私と話して貰えるか聞いてくれるだけでいい」
「あっ──はい! す、すみません……」
「まったく──焦ると思考が乱れるところは相変わらずなのだな。焦らなくてもいい」
「か、畏まりました!」
可視化された向こう側ではセーレさんと……セーレさんしか映っていなく、姿は見えないが男性の声が引き続き入って来るのだった。
「シエル様──そして皆さま方、すみません……」
「えっと──聞こえていたと思うのですが……、出来ましたら当主──リッチ様とお話頂けましたらと……」
「お時間? ──いえ、あの宜しいでしょうか?」
セーレさんは未だに少し慌てているのが会話の中で伝わって来たが伝えたい内容はしっかりとこちらへと届いて来るのだった。
「えっと──シエル様?」
『はい──大丈夫ですよ』
「────よかったです! すみません……! でしたら、今すぐお繋ぎ致しますので!」
セーレさんの弾んだ応えてくる声が返って来る。
そして、セーレさんはリッチさんを自分達との会話に繋ぐのだった。
coming soon




