『賭博エリア⑱』
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「シエル? どこまで考えていたんだ?」
『ん?』
ナビ達が服屋さんでヘルメスの服を一緒に買っているところ、横からバルが話しかけて来た。
「いや、お前のことだから色々と考えていたのかと思ってな」
「あぁ、それは俺も気になってた」
バルに続いてシュンも話しに加わってくる。
『いや、何も考えられていなかったよ。ただ──』
「ただ──?」
『困っているのなら助けたいと思っただけだよ』
「あぁ、確かに──それはシエルらしいな」
最後にシュンはどこか自分に照らし合わせたのだろうか、苦笑しながらも嬉しそうに言葉を述べるのだった。
「だが、シエル?」
『ん?』
「ヘルメスは賭博エリアから出れると思うか……?」
『そうだな──』
そして自分はヘルメスへと視線を向ける。
(あの時とは違うものな──)
シャドウ事件の際は賭博エリア自体が再起不能に陥ってしまい、ヘルメスの存在自体も賭博エリアとの接続が切れているような状況に陥ってしまい──その存在する事さえ危ぶまれていた状況だったらしい。
なので、あの際は無作為に中央に連れて行った訳ではなく、シロの恩恵を受けて存在を繋ぎとめ──賭博エリアの復興に合わせ、エリアの管理も含めて再接続したような背景があったのだった。
『まだ予想の範囲だけれども──世界は可能性に溢れてると思う。だから……』
「大丈夫だと思うと?」
『この世界に生を受けた時点で人も精霊も縛られるということは無いと思うよ』
「そうだな──」
バルはしみじみとした声音で頷いていた。
そして自分も改めて精霊の可能性を思うのだった。
(マザーは特別だ──)
人工AIとの疑似的な契約精霊……言葉ではそう表現されているが根本的には人工AIが設置されているエリアから離れられない現状が存在している。
それは云わば人工AIに縛られているともいえる──そこから離れられるということは存在自体が精霊に固定されて……人工AI部分が補助部分になるという立場的にも見方も変わる話だった。
『やる価値はあると思うし、そして縛られないのならマザー達のこれからの動きも変わってくると思うんだ』
「それはまた大きく歴史が動きそうだな」
「でも、そういう世界見てみたいな」
自分の言葉にバルとシュンも頷きながら反応を返してくる。
そう──もし縛られる事なく自由に動けるようになるのなら……、ナビと自分みたいにある程度離れても大丈夫になり、且つ可能性の世界が広がるのだろう。
そうして、もう少しだけバルとシュンと話し合いつつ──自分達はヘルメスの服の購入を待つのだった。
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