『賭博エリア⑭』
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「ねぇ──僕がこうなった理由……分かる?」
『えっと──』
ヘルメスの視線を一身に受けつつ思考を巡らす。
けれども、先程まで居たナビは意味深に離れてしまっていて居なく──思考の逃げ場も無いのだった。
「僕──シエルの事……」
『落ち着こうヘルメス──ほら、まだ僕たちは出会ったばかりじゃないか』
「……これから仲良くしていけば──いいってこと?」
『そ、そうだね……』
ヘルメスは念押しで確認するようにこちらへとスルスル──と近寄って来て自分をジッと見てくるのだった。
(ち、近い──)
目と鼻の先にはヘルメスが居て──。
「なら、今はこれだけでも──」
そう言って、自分の頬へと口づけをしてくるのだった。
「「「あっ────!!」」」
そのタイミングだった──背後からマリとリン、レイのハモった声が聞こえてくるのだった。
背中にヒンヤリと汗がかいてくる気配がしたが……口づけから離れて行くヘルメスの顔はどこかしたり顔の表情なのだった。
「シエル──今、何をしていたの?」
「シエルくん……?」
「私だってまだなのに……」
背後からの3人の非難の声が聞こえてくる。
「シエル──すまない、俺は何も言えない」
シュンが最後に言葉を締めて、バルは無言のまま目を伏せていたのだった。
*
「えっと──私としては2人の仲が解消されたらと思っていたのですが……」
ナビのどこか冷たい声が自分に届いて来る──ヘルメスの方は申し訳なさそうな雰囲気を出しながらも……どこか満足しているような感じだった。
『えっと──ご、ごめん』
「シエル──自覚ない」
「シエルくんは気を付けないとすぐに……」
「目を離すと本当に──」
レイ、マリとリンからも再度非難の声と視線が自分に注がれて来る。
「えっと──すみません、あの……申しあげにくいのですが……」
「そうだな──話を戻そう」
「ヘルメス様? なのですよね──?」
セーレさんが気まずそうにしながらも声を上げて、それを助けるようにバルが口を挟み──セーレさんは核心の質問をやっと出来るのだった。
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