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『リアル①』
現実のような夢?
夢のような現実?
それはまだ”誰にも”分からない
男は、過去を振り返る。
思い出されるのは、幼少期の頃の記憶。
男は、人見知りだったのだろうか?
又は、人と触れ合うことに幸せを見いだせていたのだろうか?
又は、全うな、誇れる人間だったのだろうか?
又は、人の皮を被った。
全く別な、曰くつきの忌み子の存在だったのだろうか?
だが、どんなに考えても思い出されるのは人の暖かさを知っていたこと。
けれども、人の視線は嫌でも目についていた事だろう。
”それが良かったかは未だに、男には分からない”
成長する過程で、その小さな疑問は零れ落ちていくように。
疑問も、欺瞞も、嘘も、偽りも。
様々な、黒い感情の粒たちは、〝心の記憶〝として時間をかけ、綺麗に感情の海から流され落ちていったのだから。
男は、人を好きだったのだろうか?
男は、愛を知っていたのだろうか?
*
(…………)
いや、今は現状を把握するべきだ。
そうだ、感傷に浸っていては何も変わらない。
今は意識を覚醒させなければいけない。
そして男の意識は現実へと回帰する