『賭博エリア⑧』
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「えーと……こちらになります──」
セーレさんを先頭に案内された場所は敷地内の離れだった。
「こちらに居るのですか?」
「離れでも──中々の大きさだねぇ」
マリとリンがセーレさんの後に続いており、見えて来たヘルメスの居ると言う離れの印象を語っていた。
『これは確かに──』
「大きい──」
自分の言葉に継いで、隣に一緒に歩いて来ていたレイが反応する。
確かに離れなのだが、佇まいも趣も凝っており素晴らしいという形容だった。
「すみません……少しだけ──お声を掛けてきます」
そう言いつつ自分達から離れ、セーレさんが建物に近付いていく。
*
「ヘルメス様──! ヘルメス様? ……お客人が来ていますよー」
「────」
「……ダメみたいですね」
コンコンとノックをしてセーレさんがヘルメスにドア越しに語り掛けていたが反応は無く──気落ちした様子も無くセーレさんはいつも通りだと言うようにこちらへと戻って来るのだった。
「本当に反応が無いんだな」
「──本当に居るのか?」
「あっ──はい! それは確かに居ます。私も最後にこちらへ入られるのを見ましたから……」
シュンとバルの疑問にセーレさんは答えていると──。
「……居るのは確かだと思います。けれども──なんと言うのでしょうか……」
『ん? どうしたナビ?』
「は、はい。シエル様──酷く不安定な感じの気配がします」
「ん、それは──分かるかも」
ナビがポツリと言葉を零して、それを確かめると不安定という言葉が出て来たのだった。
それを同意するようにレイも頷いて肯定していた。
(────)
少し目を凝らすようにヘルメスの居る離れを視てみる。
けれども自分の視線からは特段不思議な気配は感じないのだった。
(女性でしか分からない……?)
自分とナビ、レイの違いというと……連想しそうになったところで思考を止める。
流石に突拍子も無いと自身で思うのだった。
「不安定ですか? ──ですが賭博エリア内の結界等……機能に問題は特には」
セーレさんもナビとレイの言葉には首を傾げているのだった。
「とりあえず──シエルくん」
「気を付けて、行ってらっしゃい!」
『あ、あぁ──』
微妙な空気になった所でマリとリンが「それでも、もしかしたら……シエルくんなら」と前置きを置いて自分へとエールを送って来るのだった。
(行くしか──ないよな)
とりあえず、皆へと目線で合図を送った後にセーレさん同様に離れへと1人で近付いて行き──ヘルメスへと声を掛けるのだった。
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