『賭博エリア②』
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「さて──皆行ったか」
談話室内には自分達以外にはイアンしか残っていなかった。
「ちょっと待っててくれ───」
そう言いながらイアンは自分達の前で何やら、やり取りをする。
(メッセージを送っているのかな?)
目の前のイアンを見ている限りは何かの合図を送っているらしく、それは正解だったようで──。
「すみません、失礼致します──」
「うむ、失礼する」
セーレさんとボンが室内へと入って来るのだった。
*
「呼び止めてすまないな──話というのはな……」
「いや、ここからは私が──いや、セーレの方がよいか」
「わ、私ですか!?」
セーレさんの驚いた声が静かな談話室内にて響き渡る──。
「あっ、はい──いえ、すみません……」
「そうですね……、私からで良ければ──」
「あのシエル様? その……ヘルメスについてはどれくらいご存知でしょうか?」
『えっ──?』
恐れ入りますが──と前置きにセーレさんは自分に問いかけて来ていた。
少し予想していたものと違った切り口からの話題で自分は素っ頓狂な反応をしてしまうのだった。
*
『ヘルメスですか──』
そう切り出しつつ、自分の現状知っている情報を話す。
あれから人工精霊としても回復して賭博エリアの守護を任せられている事。
自分達との記憶は消されずに保っている事。
それくらいの知識しか持ち合わせておらず、素直に伝える。
「なるほど──実はですね……」
そして自分の話を聞いたセーレさんは言葉を選びつつも自分達にヘルメスの現状を伝えてくるのだった。
*
「えっと──寂しがってる?」
「精霊で寂しがるというのは──」
シュンの疑問にマリが精霊についての見識を話そうとしたところで、何かに気付いたようにナビを見ていた。
「ふぇ……?! わ、私はそんな寂しいだなんて──いえ、その、あの……精霊も十霊十色とも言いますし……」
「ナビ──そんな言葉、私聞いたことない……」
そして急に慌て出して反応をしてるナビに──冷静にレイがツッコミを入れているのだった。
「それで──えっと? 寂しがっているのは分かったけれども……どういうことなの?」
リンがタイミングを見計らいつつも、セーレさんへと問いかける。
「えっと、ですね──現状ヘルメスは賭博エリア内ですと……私達──リッチ家の住宅に居着いておりまして……」
「そうだな──それで会う際は色々と手続きが必要になってしまうと思ってな、それでこれを──」
そう言いつつ、ボンは一歩前に進み出て自分達に宝玉を渡してくる。
「これは──以前見せて貰ったブリッケンさんの住居に入る際の宝玉に似ているな……」
横から見ていたバルから声を掛けられる。
「むっ? ──そうかシエルくん達はブリッケン殿と知り合いだったな」
そう言い頷きつつボンはバルの読みが合っている事を告げるのだった。
「でも、賭博エリア内で会うのは出来ないのですか……?」
話の成り行きを見ていたマリは率直な疑問を声にする。
「それがだな──」
「えーと……ですね──」
「…………」
そのマリの問い掛けにイアン、セーレさん、ボンの3人はどこか気まずそうに黙り込んでしまうのだった。
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