『美しい世界⑪』
上手く笑えるようになれたら──私、美しい?
それから1月があっという間に経った。
ガイウスさんとは「定期的に連絡が欲しい」と伝えられ──自身も思うところもあり了承したのだった。
(あんな安堵と──守るぞ! みたいな覚悟をした表情を見せられたらね……)
(「シエル様は〝夢〝の中でも──そうでした。恨み言も言う時はありましたが、シエル様は決して見捨てず、ひた向きに……どんな問題にでも取り組んでおりました。シエル様は基本的に〝優しい〝と私は胸を張って……胸?」)
(「…………」)
ナビさんからの返事が──無くなった。
まるで、屍のようだ。
いや、そうじゃない。
Don't touch me──だ。
触れられない、触れちゃいけない。
それは──世界の法則だ。
これだけは共通なのだろう。
〝俺〝には分かる。
ここは──俺と言えるくらい分かる。
分からないと生きていけないのだから。
さて──えっと、どうしようとしていたのかな。
えっと──ナビさ………んは、駄目だ。
*
「シエルさん? 大丈夫ですか?」
声を掛けられ”またしても”顔を下げていたのだろう。
顔を上げたら少し心配顔の〝安定の中年男性〝のヒューズさんが──そこに居た。
この袋小路の思考の中で──もしや、ヒューズさんは女神……ではないな。
ふぅ……。
急に冷静になれたからだろうか。
(思考は良好)
(視界はクリア)
(思考のギアは──うん、OKだ)
『大丈夫です。やっと外に出れると思ったら、なんだか足がすくんでしまって……はは』
シニカルな表情をしようと笑ってはみたが──きっと似合わなかったのだろう。
自分の表情を見たヒューズさんは少しだけ微笑みを見せながら
「やはり──年相応な所はあるのですね。少し安心しました。では、こちらです」
そっと──普段は出歩けないエリアに案内をし始めてくれた。
そしてシエルは目覚めて初めての世界を
その肉眼に捉えることになる
世界はどんな風に──シエルを迎えてくれるのだろうか
世界とは──どんな風景なのだろうか




