『リンクス⑯』
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「なんだかむず痒いね──」
「私もです」
「え? マリは意外と慣れてると思っていたんだけれども?」
「皇室の出と言っても私の存在は基本的に秘匿されてるから──」
「あ──確かに!」
魔力車の中でのマリとリンのやり取りを見ながら、魔力車の窓から外を見る。
「ワァァー!」
「あ──あれイアン様だ!」
「ナビちゃんは居ないのかな?」
「シエル様はー?」
外からは中は見えないようで──それでも声が自分にも聞こえてくる。
式典会場まではリンクスの本部から直線状にある為、これ幸いにと公道でのセレモニーを兼ねて魔力車を用いて進んでいるけれども──その計画はバッチリと功を成したようで公道の人だかりからは割れんばかりの声が届いていた。
(とりあえず、自分もやらないとか──)
先頭を進むイアンを見て思う。
本部から出発する直前に出来るだけアピールはするようにとの事だったのを思い返す。
『致し方ない──』
「私もサポー……いえ、頑張ります」
ナビはいつもの癖でサポートと言いそうになりながらも自分の立場もある程度客観的に見れたのだろう──表情を引き締めて気合を入れていた。
魔力車の天井が開閉すると民衆の目が自分達へ降り注ぐのが分かった。
「「シエルくんー!」」
「「「ナビちゃーん!」」」
他にもシュンやバル──レイやマリ、リンも呼ばれていたが自分を置いてもそれ以上にナビの声が大きい印象だった。
ナビは最近と言うよりもどんどんと増してファンサービスが上手くなってきているのかクルリと1回転しつつ翻りながら皆へと手を振り撒いていた。
それに触発されるようにナビを呼ぶ声も大きくなっていくのだった。
自分の方も声が聞こえる方へと振り向いては軽く手を振っていく。
そうやって──ゆっくりと進みながら確かに式典会場へと自分達を乗せた魔力車はイアンを先頭に進んで行くのだった。
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