『リンクス⑭』
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「ふっ──お疲れ様なご様子だね」
「疲れてる暇は無いだろう? 忙しいのはこれからなのだからな」
裏手の勝手口からリンクス本部に入ってホールまで出た自分達を見て声を掛けてくる人が居た。
『お久しぶりです──フィンさん、シンさん』
「やぁ──本当に久しぶりだね」
「久しぶりでも無いだろう? 良く視界にはお互いに入ってたじゃないか」
「こうやって会話してこそだと僕は思うよ?」
「はっ──そうかよ」
実は仲が良いんじゃないのか? と個人的には思っているフィンとシンが真っ先に自分へと挨拶をしてくれていた。
2人と落ち着いて話すのはシャドウ事件以降の所はあるから──フィンの感覚が正しいのだろうと思うのだった。
*
「ナビ様──! こうやってご挨拶出来て私は幸せの極みです!」
「えっと──え……と?」
「あっ──すみません。私としたことが──ふむ……これから宜しく頼む!」
「──? は、はい」
フィンとシンとも挨拶してる中でナビの方も──物凄い勢いでナビに向かって行ったボンに挨拶をされていた。
そんなボンは──こう……色々と全開にしながらもナビへと挨拶をしていたのだった。
周囲を見てみれば、幾人か──例のシャドウ事件の際に共に居たメンバーも垣間見えていた。
「おい──お前ら、着いて早々すまないが着替えて来てくれないか?」
「式典用の礼装は既に用意してあります!」
「男性はあっちで──女性はそちらですね!」
イアンと元部下のメンバーも一緒にホールに顔を出して来た際に自分達へと告げてくる。
「確かに──皆着飾ってるなぁ……って思ったよ、お兄ちゃん」
「綺麗ですね──白? いえ白銀に近いような?」
「シエルの色──」
確かにリンとマリの指摘のように周りの皆の服装を見てみたら白銀色をベースに仕立てた厳かな制服になっていた。
レイもどこか嬉しそうに制服を観察していたのだった。
「ほら──時間が無いですよ!」
いつも3人居るイアンの元部下のメンバーの1人が男性用の室内から顔を出してくる。
「男性の方は人数少ないので手伝いますよ!」
「女性の方は──」
「はっ──はい! わ、わた……私が手伝いましゅ!」
盛大に噛んだ人の声がして振り返ると歳の頃は自分より少し上くらいだろうか? 女性の方が居た。
「セーレよ、毎回言ってるが──そう緊張するでない!」
「は、はい! ボン様!」
「うむ。 ナビ様の着付けもあるだろう──しっかりと頼むぞ!」
「分かりました! ま、任せてくだひゃい!」
そんな噛んだ女性にボンが声を掛けていた。
「えっと──そちらの方は……」
「これはナビ様──! 私の専属の秘書……いえ、今はここリンクスの受付嬢になります」
「は、はい! ボン様の秘書を務めさせて頂いておりました! 今はリンクスの受付嬢に拝命させて頂きましたセーレと言います! 以後、お見知りおきをお、お願いしまひゅ!」
「少し──照れ屋な所がありますが、仕事は私も認められるほどキッチリとしているので安心してください」
ボンは綺麗に頭を下げて──そう締めくくっていた。
セーレもそんなボンを見て慌てて頭を下げていた。
(確かに──)
ボンの話があったように──多少? 照れ屋? な所は見受けられるようだけれども。
所作や服装の1つ1つ手に取っても──慎ましさと細やかさが垣間見えていた。
「えっと──時間が無い……ですよ?」
男性用の室内から顔を覗かせていた──先程声を掛けてくれていたイアンの元部下の方が改めて……控えめに声を掛けて来たのを切っ掛けに自分達は式典用の礼装へと着替えに向かうのだった。
ナビ達の方もセーレさんが付き添いながら女性用の更衣室へと向かって行くのだった。
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