『リンクス⑬』
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「久しぶりだな──その……なんだ、元気にしていたか?」
リンクス本部へと向かう最中、目深に被っていたフードを脱いだイアンが自分達へ向けて話しかけて来ていた。
『はい、無事に何とか元気にやっていますよ』
「そうか、それならよかった」
「お兄ちゃんの方はどうなの?」
「俺か──」
自分の答えにどこか安心した様な表情を浮かべていたイアンだったが妹のリンの質問にはどこか苦しそうな表情を浮かべるのだった。
「俺は──どうなのだろうな」
「あのシャドウ事件以降──お前たちを最後まで守り切れず……俺はあれからがむしゃらにやってきていたが──」
「今は平和なのだろうか? そして今回のリンクスの俺の役職だ──未だに相応しいものなのか悩んでいる」
「どうなんだろうな──?」
視線を少し落としてイアンは少し眉間を険しくして呟いていた。
『きっとイアンさんだから──そんなあなただからこそ良かったんじゃないかと思いますよ』
「ふっ──俺からしたらシエル……お前の方が適任だと思うのだけれどもな」
『自分には務まりませんよ』
「──そういうことにしておこう」
どこかキザッたい雰囲気で最後にイアンは言葉を締めていた。
「ナビ──本当に人が多い」
「ですね──結構、リンクス発足の情報が公開されてからの国民の熱は凄いものになっていますからね」
そんな中レイとナビは魔力車の窓からこっそりと外を盗み見ているのだった。
他の皆は自分とイアンの話の成り行きを見守っていて、一旦会話が終わったタイミングで各々緊張を緩めていた中──。
「見えてきました! とりあえず、中に入ります!」
運転しているイアンの部下の1人が目的地のリンクスの本部の到着の知らせをくれていた。
「悪いが降りる時は一旦──顔を隠して貰っても良いか?」
「どうしてお兄ちゃん?」
「そこからこっそりと見てみれば分かる」
「んー? どれどれ───」
そして、リンは車内の窓からコッソリと外を窺う。
その目には壁際まで本部内を見ようとしているメディアの姿を確認出来たのだろうか「うん、これは確かに隠した方が良さそうだね」と呟くのだった。
そして、とりあえずイアンに倣って皆──それぞれ渡して貰ったフードを目深に被ってリンクス本部内へと裏手の勝手口から入るのだった。
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