『美しい世界⑩』
望めば未来は明るく切り開けるはず
だが──望まない限り未来はやってこない
『えっと──お話は分かりました。でも自分には、まだ分からない事も多くて母や父の面影でさえも朧気なんです』
ヒューズさんが語り終え、自分も率直な意見を伝えところ。
「ふむ……」
ガイウスさんは頷き──そっと、持ち込んでいたバッグから手帳を取り出して見せてきた。
そこには古ぼけて来てはいるが”ハッキリ”と今も〝鮮やかに〝姿、表情が分かる写真があった。
『すまないね、シエルくん。私は歳だから、こういうものでしか上手く見せられなくてね。私もヒューズと同じく水系統の回路の者だから──情報を送ったりするのは苦手でね』
(……!)
そこに映りこんでいたのは、きっとこれが母と父なのだろう。
笑顔の2人が居て、真ん中に挟んで抱き込むように可愛らしい表情をしている……背の丈も標準的だろう〝黒髪〝の男の子──いや、自分が映り込んでいた。
『えっと……』
自分の髪色を見られていたと、直前まで思っていたのが裏目に出てしまい。
髪を摘まみ確認するような動きをしてしまっていた。
「ここで療養──いや、眠っている間に少しずつ〝変わって〝いったんだ」
ヒューズさんが、その疑問に答えるように話してくれた。
(ナビ? ナビは原因が分かるのかい?)
(「はい。その──秘密にして貰いたい一端がそれです。あの場では大量の生命と〝白銀の龍〝の放流しているエネルギー。
そして〝黒い渦の力〝さえ──あの場に存在していた〝全てを糧にして〝私は生まれました。
そして、その影響や力……それらはシエル様にも共有ならびに影響を与えています」)
そっか……。
いや、何となく予想はしていたのだ。
リハビリの時に実習生の方、そしてヒューズさんでさえも──その身体の回復の速度には驚いていたのだから。
それに〝ナビ〝の存在だ。
分からないはずもない。
そしてナビの言うように今はまだ話す時でも、ナビの事でさえも伝える時では無いのだろう。
(……ん?)
(何故だろうか、ナビの不安? 気持ちが分かる気がする)
(「……き、気のせいです」)
『ヒューズさん、ありがとうございます。改めて、助けてくださり──』
ヒューズさんにお礼を伝えつつ、ガイウスさんを見る
『ガイウスさん。今も〝まだ〝自分はどうして良いか分からないです。
ですが〝夢のような世界〝で自分は朧気にでも思った事があったんです。
〝後悔をしてはいけない、反省はしても良い〝と。
きっと歩き始めたら──僕達は止まれないから。
歩き続ける限りは──まだこの先もあるから。
後悔で歩みを止める訳にはいかないから。
反省をしては……次は更に良い結果に繋げて、繋げて──そうやって歩いて行くしかないと思うのです』
(〝僕か〝──精神が本当に肉体に引っ張られているのだろうか? こっちの呼び方の方が違和感が更に無いなんてな……)
どこか憑き物が落ちたような……そんな表情を垣間見せているガイウスさんを視野に入れつつ、自分もまた──その精神の在り処について考えるのだった。
精神とは肉体に宿るのか
肉体に精神が宿るのか
魂は何処にあるのか
ただ──すべては1つなのは確かな事
そして、それを享受していくしか無いのだろう




