『リンクス⑦』
────
コンコン────。
「ん、来たかの──入ってもよいぞ」
扉をノックすると奥からドルマンさんの声が聞こえてくる。
入室の許可が下りたのもあり、自分達はギルド長の室内へと入るのだった。
*
『お久しぶりです、ドルマンさん』
「シエルか──元気にしておったか? それに皆も同じくどうじゃ?」
「はい──無事に過ごさせて貰っています」
「私も!」
「そうかそうか──」
室内に入ると年季の入った調度品にてこしらえた部屋の中、ドルマンさんが元気そうに出迎えてくれていた。
ドルマンさんの問い掛けにマリとリンが応えて、他の皆も各々頷いたり返事を返していた。
『えっと──それで今回の呼び出しなのですが……』
「うむ──そうじゃな……でも、その前に」
「────」
その瞬間だった。
ドルマンさんが一拍置いたタイミングで、部屋の窓から赤い半透明の──まるで火の鳥みたいな精霊が入って来たのだった。
「わぁ! ──それがフェニックス?」
「──綺麗」
リンはいち早くその存在に目を付けて、隣のレイはポツリとフェニックスの放つ精霊の輝きを視てだろうか? 綺麗と表現していた。
「ドルマン──見回りは問題なく……あなた方は?」
『おぉ──フェニよ、ごくろう』
フェニとドルマンさんは呼び方を訳しつつ、労いの言葉を掛ける中──目の前に現れたフェニはこちらへと即座に反応を示して来たのだった。
*
「────ぁ……」
順次、自分達を確認していたようだったが一瞬だけ自分を見た時に動きが止まったような節があったが──ナビを見た際は確実に動きを止めて首を前に出すようにジッと見つめてフェニは止まっていた。
「────」
そのままフェニはナビを見ながら深く深く頭を下げるのだった。
(やっぱりナビは精霊の中では一目置かれる存在なんだな……)
フェニの目の前の行為を見つつ、そんなことを考えていると───。
「失礼──あなた方の素性は分かりました。初めまして……私はこの行政区エリアを担当するマザーのフェニックスになります」
『初めまして──フェニックスですか……』
「うむ、再び蘇る──今のヒノモトのこれからを指し示す意味合いも込めて、その名前になったのじゃ」
「まぁ、私は呼びづらいから略してフェニと呼んどるがの」
「実際──私の事をフェニという者は多いです……いえ、むしろそちらの方が定着しているような?」
首を傾げつつフェニはドルマンさんの問いに応えていた。
「それでおじいちゃん! ──私たちはどうして呼びだされたの?」
「おっと──そうじゃった。失礼、失礼……すまんな、最近どうも──歳なのかね?」
「いえ──ドルマン。歳では無く私の戻るタイミングが悪かったのだと──」
「そうじゃな──まぁ、でも……」
「おじいちゃん──?」
リンが痺れを切らしてか軌道修正の言葉を投げ掛けて、ドルマンさんは話を戻るように見られたが──ドルマンさんとフェニの相性は思った以上に良いのかまた話のループに入りそうになるところに再度リンがツッコミを入れていた。
「う、うむ。 そうじゃな──シエルよ。行政エリアを見て、その他今の現状を見て感じる事は無かったかね?」
『感じる事ですか?』
「うむ──」
『……強いて言えば──ギルドと軍の仲の改善でしょうか?』
自分の中では来る最中にも見受けられた印象が頭をよぎっており、素直にそれをドルマンさんへと伝える。
「そうじゃ──それなのだ。今ヒノモト全体でギルドと軍の改善が見受けられて……そしてその環境に適応した組織が必要と話が進められておった。──それが先日、中央の方でも可決されたのじゃ」
『えっと──?』
「薄々、勘付いているのではないか? 軍もギルドもその組織は国としても世界的に見ても必要だが──その中でヒノモトという中でオリジナルの組織の発足が決まったのじゃ」
『──なるほど』
少しずつ、いや──かなり話が読めて来たがドルマンさんの話の続きを待つ。
「その組織には軍、ギルドからの精鋭と未来への架け橋足り得る人物が選出されることになったのじゃ」
「そして同じく──高校からは社会への活動も許可されるようになる」
そのタイミングでドルマンさんはジッと自分を──皆を見つめてくる。
「議会ではその際に1つの話題も起きたのだよ──その組織に必要不可欠な存在」
「……そう世間ではシャドウ事件の功労者、又は若者には英雄と呼ばれてる存在は必要だろうと」
『英雄ですか──』
「魔力ネットワークを見ていれば分かるじゃろう? そして、白銀の姫じゃの」
そう言いながら──ドルマンさんはナビも見る。
「私の事ですよね──」
ナビはどこか何とも言えない表情をしつつも、頷いていた。
「そして、共に戦い──そして平和を築いた者たちじゃな」
「私たち──?」
ドルマンさんはそう言いながら皆を見つつ──リンが自分を指しながら呟いていた。
「うむ──そして呼び出しの件に戻るのじゃが……」
「皆への願い──いや、これは中央からも含めての希望という名の命令にも近いのじゃろうな」
ドルマンさんも何とも言えない表情をしつつ自分達を見てくる。
『いえ──このくらいはハンネスの件の際に覚悟は出来ております』
「私はシエル様が選んだ未来を共に生きれれば」
「──私はシエルと居れれば、それでいい」
「私は国を担う者として」
「私は──うーん? おじいちゃんの孫だから?」
「俺は父様の役に──いや、自分の未来の為になるなら」
「自分は──父様の犯した罪の贖罪……いやシエルに対しても恩を返せる機会があるなら」
『バル──? そんなことは……』
「いや俺がそうしたいんだ、じゃないと──自分自身が納得出来ない」
『分かったよ』
バルは他の皆とはまたより一層深い覚悟を決めて返事を返していた。
「殊勝な事じゃな──」
自分達の返事を聞きつつドルマンさんは心を打たれたように深く頷いていた。
「そうなると──この話は進めても良さそうじゃな」
「改めて、呼び出した目的じゃが皆──組織へと加入して貰いたいのじゃ」
「そう──ギルドと軍……そして、このヒノモトを繋ぐ組織”リンクス”へと」
そう言い切ったドルマンさんは改めて、自分達を見てくるのだった。
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