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終わらない物語~白銀の始まり~(魔力事件……世界は終わりへと進むのか、又は歩み続けられるのか──ここから選択を始める僕の物語)  作者: 御伽ノRe:アル
≪ヒノモト≫高校編※【ギルドと恋とチョコレート戦争】

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『リンクス①』

そして──新しい物語のページが紡がれていく


──────


《side:シュン》

あれから──早くも2年余りが過ぎた。

学校の再開は少し手間取ったが無事に中学の方も終わる。

そして、気付いたらそのまま高校生と……なる。

感慨深いと思う──ふと隣の隣人、シエルの事を思う。

あいつは凄いやつだ。

本当にすごい。

バルの事、父様の事も含めて──そしてシャドウ事件に関してもシエルは解決してみせた。

自分だけの力じゃないと今でも言ってるけれども、自分はそうは思わない。

シエルが居なかったら、今頃このヒノモトは全く違う未来を歩んでいたのだと思う。


そう──高校だ。

明日から入学式になる。

きっと環境はまた大きく変わって行くのだと思う。

けれども、中学の頃とはだいぶ気持ちが違う。

ギルドと軍の環境も変わった。

今は反目しあうことも無くお互いに手を取り合いながら歩んでいる。

民衆の方も同じだ。

あのシャドウ事件を切っ掛けに軍とギルドの見方が明らかに大きく変わったと言える。

父様もその影響か未だにひっきりなしに各エリアを駆け巡ってもいるし、ガイウス元帥も本格的に先導して軍を指揮している。


そろそろ眠らないといけないな──。

……シエルは無事に起きれるのだろうか?

未だに身体の……体力のコンプレックスがあるのか時間があれば訓練施設の方に出向いては鍛えてるみたいだけれども──最近は少しずつ自分との差が縮まっているのも感じている。

いや、また考えてしまう前に寝ないとな──。


──────


《side:マリ、リン》

「えっと──レイちゃんは?」

「多分……シエルくんの所かも?」

「うーん、そこしか──ここ以外は無いものね」

自室にてリンとマリが話し合っていた。


「──仕方ないなぁ」

「こればかりは──どうしようも……」

「羨ましいなぁ……」

「そうですね──」

「えっ?」

「──!」

リンの素直な羨ましいの発言に同意をしていたマリに目ざとくリンは突っ込んでいたが──そこには顔を高揚させていたマリが居たのだった。


そう、レイの処遇に関してはシエルと一定以上未だに離れていると不安定になる面があるからと同室が許可されていた。

でも、2人は女の子の勘なのか──薄っすらとレイは既に克服していて、今はちょっぴりだけ欲を出してシエルと一緒に居るのではないかと薄々気付いてきてはいた。


「リンは明日の準備は大丈夫?」

「おっけー! モチのロンだよ!」

「それってシエルくんのたまに出る分からないワードの1つね……確か意味は──」

「もちろん! って意味だったよ!」

「なんで間に”の”を入れるかと聞いた事があったけれども──ていよくはぐらかされた気が……」

「そういうところあるよねー……マリは準備は大丈夫?」

「えーと──うん、大丈夫そうね」

2人はそんな羨ましい気持ちを少しだけ抑えつつ、明日の準備の確認をするのだった。


「早めに寝ちゃいましょうか」

「だね──これはきっとレイちゃんも戻ってこないだろうし……」

「────」

「あはは……」

どこかねたようなマリの様子にリンも多少、心模様が曇りながらもお休みを告げて──2人は明日に向けて眠りに着くのだった。


──────


《side:バル》

「高校か──」

一人部屋で天井を見つめつつ、バルは呟いていた。


(父様……)

今は中央エリアの中枢に位置する中央監獄にて父様は禁固刑に処されている。

連絡もお互いに送りあえないが──確かに生きているのだけは確かでそれが自分の心の支えになっているのもバル自身気付いてはいた。


「俺らしくないな──」

ふと苦笑いを零すが──自分というのに関してもだいぶ困惑してもいた。

まるでシュンと別れた幼少期からかすみがかかったような時を過ごしていて──心の成長がシエルに救われてから急速に時を巻かれた感覚だった。


(きっとシュンが俺の傍に居てくれたからだな──)

素直にお礼を伝えきれていない面はあると思える。

たまに素直に伝えるとシュンの驚く顔が可笑しくて──それが自分の密かな楽しみになっていたりもしていた。

父様が投獄とうごくされて、このヒノモトは目まぐるしく変わって行っている。

自分へと──息子の自分へと物凄いヘイトが向くと思われたが中央の発表により自身も被害者の1人として同情される目の方が圧倒的に多かった。

そして何よりも世間の反ギルド、反軍の風習は綺麗に無くなったように新しい風が吹き込んでいた。

それの恩恵か──自分の周囲も暖かかった。


(いや──)

でも一番の要因は──シエルの存在なのだろう。

魔力ネットワークの力は凄かった。

どこからか流出したのか──いや、あの場に居た誰かが伝えたかったのだろう。

父様との一戦や、それまでの過程や──何よりも学内対抗戦の時点で注目が集まっていた中で中央からのシャドウ事件での一番の功労者……ネットでは立役者として取り上げられていた。

同じく並び立つナビさんも同じだった。

精霊との新たな架け橋としてシエルとナビさんは広告塔みたいな存在にもなって──新しく中央から発表されたマザーへの対応に関しても民衆はすんなりと受け入れていっていた。


「俺は──大きく助けられたんだな」

ポッと言葉が零れる。

何かが欠けていたら今の現状の幸せはきっと掴み取れなかっただろう。

そしてシエルに対して大きな恩を改めて認識するのだった。


「いつか──この恩を返そう。だから今は──」

新たに気持ちを入れ替えて天井から目の前に視点を向ける。

最初戻った時は──何も無かった自分の部屋だったが、あれから2年が経ち私物が結構増えていた。

それが自分の心を戻して──いや成長していってるようで嬉しいものがあった。


(眠ろう──)

そして、バルはゆっくりとベッドに横になり眠りに就くのだった。

心の中で今の幸せと父様への少しだけの想いを乗せて──バルの1日は今日も過ぎ去っていく。


──────


《side:ナビ、レイ》

「シエル──」

「えっと、シエル様は訓練施設だと思います」

「うん、何となく分かる」

「精霊の加護の繋がりですね──」

ウンと再度、レイは頷いていた。

ナビは珍しくシエルと離れているのかといえばそうでもなく──シエルの成長具合に合わせてある程度は離れていてもお互いに感じる距離ならば、お互いの存在するバランスに関しては問題も無くなって来ていた。


(シエル様の力──いえ、私の力も増してきてる影響でしょうか?)

自分へと抱き着いてくるレイを撫でながら──ぼんやりとナビは思考していた。

レイに関しては心の問題に関してはクリアしているのは何となく、シエル様との繋がりで分かってはいたが──ナビ自身レイの事が可愛く思えていたので許していた。


(それに──)

自分の匂いや存在もシエルと似てるという理由でレイは時たまこうやってシエル様と離れてる時は自分へと繋がりを求めて来ていた。

(妹──とか居たらこんな感じなのでしょうか……)

ふと脳裏に妹が存在したらと──想像する。

意識が確かに目覚めて、こうやって時を歩む中で自分でも驚く位に”人間みたいに”思考や感情が近くなっていると思う。

そして、その予測はある日『多分──人間と精霊の違いってそんなに無いんじゃないかな』とシエル様が言った事で私の認識する世界が生まれ変わったように感じたのだった。


ズキン──と心が動く。

シエル様にそう言われた日から、確かに鼓動が早くなる時もある。

これは言われなくても想像は出来た──”恋”というやつなのかも知れないと。

精霊がそんなことは──とは今まで隠していたものが……いえ、マリさんやリンさんの様子を見ると隠しきれてなかったようですが。

確かに──その蓋を……私を縛っていた思考の呪縛を先のシエル様の言葉で壊されてしまってから──恐ろしいほどに胸の高鳴りを抑えられない自分が居たりするのだった。


「シエル──まだかな?」

頭を撫でている目の前の女の子──いえ、多少は成長したけれども……世間ではロリと言われるのでしょうか。

レイは寂しそうにやはりシエル様を求めているみたいだった。

ナビ自身はマリ、リンに次いで、レイの事も”許す”事にしていた。

何を──とはナビ自身も誰かしらに話はしたことが無いし、今後も話す予定は無かったが確かに”許した”のだった。


「そうですね──多分、そろそろ戻ってくるはずですよ?」

「うん」

「明日の準備の確認でもしましょう」

「うん」

そして、ナビとレイは明日の準備を確認する。

時たまシエルの私物の匂いを準備がてらいでいた2人が居たが──それを知る者はこの場所には居なかった。

そして秘密を共有する2人はシエルも知らないところで絆が──確かに深まっていっているのだった。


──────


《side:シエル》

『困ったな──』

訓練施設で自分は言葉を気付かない内に零していた。

周囲を確認したら未だに学園寮内の生徒なのだろう──何名か訓練をしながらもチラチラと自分を見る目もあるのは知っていた。

最初の頃はサインを求めてくる人も居たが──いつからかはそれが無くなったがリンからシエル様ファンクラブの存在を聞かされた時は戦慄せんりつが走ったのを覚えている。

どうやらファンクラブ内にて鉄のおきてが出来たようだった。

何とも言えない顔をしていて、ナビもそれを見つつ──シエル様は大変ですねと言っていたが……そんなナビにもファンクラブが出来ていたようで驚いて固まっていたのは今も懐かしい思い出になっている。


(ナビか──)

そんなナビは自分は女性比率が高い中で──ナビは老若男女問わず愛されていたようで凄い会員数になっていた気がする。

そして、今悩ませているのは──そのナビの事だった。


ある日を境にナビの感情の大きな変化? いや薄々は気付いていたのだけれども明確に”好き”という感情が伝わってくるようになって来ていた。

そんな自分もナビの事を──いや、今はそう。

とりあえず、自分は精神年齢は旧世界の事も含めるとそれなりになるとは把握しているけれども──身体に関しては健全な相応の年齢なわけであって。

未だに眠る時は──一緒のベッドな訳で……。

今はそんなナビと一緒にレイも居る訳で──。


(レイか──)

レイの事も最初は不安や恐怖から一緒に眠っていたのも、精霊の加護の繋がりから薄っすらとは伝わって来ていたけれども。

現在は単純に”好き”という感情だけが伝わって来ている。

引き離そうと考えた事はない──救う際に約束もしてたがえる気は一切無いとも誓える。


『けれども──』

ふと言葉を再度零してしまった。

そう──けれどもだ。

けれども、そんな2人に挟まれて眠る日々に……落ち着けるための最適な方法を考えた結果がこれだった。

今日もある程度、心も身体も落ち着くまで身体を動かす。


シュンやバルには「そんなに鍛えなくてもシエルはもう充分に仕上がって来てるぞ」と言われてるけれども──真の理由は未だに話せていない。

いつか話せる日が来ることを祈っているけれども……時たま2人は2人で──2人の世界が出来上がってる時があるから薄っすらと心配になっているのも伝えられてはいない。

(いや、伝えられるはずないじゃないか──)


とりあえず、一旦冷静になって来たみたいだった。

ふと時間も確認したら訓練施設の利用時間もキリの良いタイミングになっていた。


『入浴施設で汗を流したら帰るか──』

やろうと思えば魔法を行使して、複雑なイメージになるけれども身体を綺麗にすることは可能だと実験して知ってはいたが──やはりちゃんと洗えるならば洗いたいというのが常にある本音だった。


軽く手を振って来る人も居たので──邪険に出来ないと良心が訴えかけてきて、さり気なく振り返す。

嬉しそうにする人たちを横目にしつつ、自分は入浴施設へ──そして自分の部屋へと戻って……色々と乗り越えつつ明日の高校の入学式に向けて”目をつむる”のだった。

coming soon

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