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終わらない物語~白銀の始まり~(魔力事件……世界は終わりへと進むのか、又は歩み続けられるのか──ここから選択を始める僕の物語)  作者: 御伽ノRe:アル
≪ヒノモト≫中学編※その出会いは偶然?「もしくは必然?」

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『闇市場─正義の行方─㉘』

そして、1つの節目が終わっていく──

「特別席の方は──こっちじゃったな」

ドルマンさんの先導で自分達は移動をしていた。

道中では既に議場の方に参加者は集っているのか、廊下では誰にも会うことは無く静かな物だった。


「おぉ──ここじゃな。ここを利用するのも久方ぶりじゃな」

そう言って、目の前の大きめの白い扉をドルマンさんは静かに開けて中へと消えて行った。

自分達もそれに習って中へと入っていく。


(凄いな──)

目の前は大きな議場になっていて、自分達の入った場所はバルコニー席の1つだった。

(これがあるから──分かりづらいということか)

そして他のバルコニー席とは違うのは薄い暗幕が掛けられており、これを通して中が見えづらいという仕様だった。


(他の方も様々だな──)

他の方も素顔を見せている者や、仮面で顔を隠している者も居た。


カンカン──! 自分達も中に入り、ドルマンさんとガイウスさんが並んで目の前に立った時に議会場にてガベルの打ち鳴らす音が鳴り響いていた。


    *


「静粛に──! これより議会の幕を開けます」

進行役の方なのだろうか議場の中央にて声を上げていた。

それに伴って議場のざわつきも消えていっていた。


「では第3代女王──お言葉を……」

そして目の前ではノーラさんが中央に進み出て──今回のあらましを説明していく。


「そして、それらに伴い各エリアのマザーの融通性を持たせるためにクオリアの獲得に関しての規制の緩和。名付けの方針を取っていきます」

ノーラさんの説明と今後の方針について説明をしている中だった。


「女王よ──それは頂けませんな?」

いくつかあるバルコニー席の一角から声を上がる。


「ふむ──ギィー殿ですね。発言を許可致します」

進行役の者がその一角に位置し立っている者を見て発現の許可を出していた。

ギィーと言われた者は如何いかにもな、胡散臭い髭面ひげづらをしており偉そうにしていた。


「マザーのクオリアの獲得──そう自主性を持たせるのは危険なのだよ? 言われなくとも分かる事だろう?」

そして静かになった議場にギィーの言葉が響いていく。


『あの方は──?』

小声で疑問を口にすると隣に居たマリが答えを教えてくれる。

「民衆派の2大勢力の内の1つ──そのトップに居るギィーですね」

アコギな商売と後ろ暗い関係も示唆しさされています──補足するようにマリは重ねて教えてくれていた。


(なるほどね──)

目の前のギィーはまだ話をその最中でも続けており──。


「これは各エリアのマザーに関してだけではない。前回の議会でも上がった例の精霊に関しても言える。危険な者や存在は全て管理下に置いて厳重に閉じ込めておくべきなのだ。その方が安心だろう?」

暗に言われなくても分かる──それはきっとナビと自分の事を指しているのだろう。

目の前のドルマンさんとガイウスさんがムッ! と熱がこもるのが伝わってきた。

但し、他の議席やバルコニーからはギィーの一派だろうか──賛同の声を上げる者も一定数居た。


    *


「ギィーよ、まるでそれが民衆派の総意みたいな発言はよして頂きたい」

そんな中、静かな──だけれども力強い声が喧騒の中でも綺麗に響いて来た。


「なんだと──?」

「発現の許可──宜しいでしょうか?」

「はい──許可致しますリッチ殿」

反応するギィーの言葉を差し置いて、その男は進行役に確認を取り許可を得て話を始める。


「マザーの自主性は必須の事、如何に協調性を作っていき──共に時代を築いて行くかが今後のキーになるでしょう」

その男──リッチは先程のギィーとは真逆の意見を言う。


『リッチか──』

「……ボンさんのお父様みたいですね」

『えっ──?』

自分の小声を拾って隣でナビが補足してくれていた。


(ボンのお父様──なのか)

脳裏には学内対抗戦の際のボンとの一戦を思い出す。

(確かに生真面目な印象と──だけれども目の前の方は……)

ボンより更に成長したという所か──非常に冷徹さも見えるが義理人情も厚く見える不思議な人が……リッチさんがそこには居た。


「彼は──先程言った民衆派の2大勢力の内の残りの1つの勢力のトップですね」

マリも重ねて補足してくれていた。


(なるほど──)

そして、リッチさんは未だに話を続けており、それは自分達の話へも普及していき──擁護する声になっていた。

それを聞いてガイウスさん、ドルマンさんの熱も下がっていっているようだった。


    *


「リッチ──貴様との会話はいつもいつも当てにならん」

ギィーはどこか苛立ちを見せながらも声を上げる。


「おい──! 議決を求める!」

そしてギィーは大きく声を上げて進行役へと議決を求めていた。


「静粛に──! 静粛に──!」

議会は大きく割れそうになっていたが、進行役の声で改めて静けさを取り戻していく。

「今回はまだ──話が続きます。女王……発言を」

進行役の声に応じてノーラさんは再度、話を始める。


「先程の話の延長線になるのでしょう」

「今回の最大の功労者のシエル、及びナビについての処遇と恩賞になります」

そしてノーラさんは少し前に話した自分達への自由に関して話す。

その話は先程の比では無いほどに議会が荒れていた。


「おい! 狂ったか! 彼らは危険だ! ──今すぐにでも上の……中央監獄で管理するべきだ!」

一番大きな声でギィーが反対の意見を述べていた。

それに合わせて彼らの一派も同意の声を寄せていた。


なげかわしいな──」

「なんだと? 何と言ったリッチ──?」

「議決を私も求める。進行役よ採決を──求む」

リッチさんはギィーの声を視線を一瞥いちべつするだけに留めて発現を再開していた。


    *


「静粛に──! 先程の2点に関しまして採決を取らせて頂きます」

「各位──採決権のある方には先程採決内容を送らさせて頂きました」

「では採決の方をお願い致します」

ドルマンさんとガイウスさんの方には届いているのだろう。

ガイウスさんの方は魔力ネットワークが苦手と言っていた通り、久しぶりに見るフィットホンを操作しているようだった。


「──皆さま、ありがとうございます」

「全て出揃い──採決の結果になりますが……」

「2つの案ともに可決を大幅に占め──2つの案ともに議決されます!」

進行役の声が結果を静かに見守っていた議場内に響く。


「おかしい! おかしいだろ! ──はかったな!!」

そんな中、ギィーが議場内にて吠えていた。


「見苦しいですよ、ギィー? 結果が全てです。あなたでも分かるでしょう?」

「リッチ──貴様! ……まぁ、いい。 覚えておけよ──」

「えぇ──覚えておきましょう」

「っ──!」

「静粛に──! 静粛に──!」

カンカン──! と進行役のガベルの打ち鳴らす音と声が響き渡る。

民衆派の両派閥の動きもそれに伴い落ち着きを取り戻していく。


    *


議会を改めて見ていると──。

先程の大きな動きを見せていた民衆派。

議場に空席も目立つが──先の事件にて大きく勢力が削がれた反女王派。

そして女王の──ノーラさんの周囲に居る女王派の形態が見えて来ていた。

そして視点を目の前に戻すと安心したように胸を撫で下ろすガイウスさんとドルマンさんの2人が居た。


「──では今後の復興の話についてになります……」

静けさを取り戻した議場内には次の話として今後の復興についての話になっていた。


「ふむ、重要な所は聞けたの」

「そうだな──後は大丈夫だろう」

そして話が本格的に復興についての話題になったのを見届けて、ドルマンさんとガイウスさんは確認しあうように言葉を交わしていた。


「皆、お疲れ様じゃな──帰ろうではないか」

「今出たら人と会う確率は少なく丁度良いだろう──学園にまずは戻ろうではないか」

「そうじゃな、それが良いじゃろう」

「大丈夫かな?」

ガイウスさんの問い掛けに皆で頷いて答える。

それを満足そうにガイウスさん、ドルマンさんは見て議会から一足早く自分達は出るのだった。


    *


「シエル様、ナビ様──こちらを!」

皆で中枢の建物から離れ──中央エリアのホームの魔力車へと乗り込む時だった。


急ぎ足で来たのか──今度はしっかりと目に追える形で白い狩衣の方がこちらへと向かって来ており自分とナビにそっと何かを手渡して来た。


(これは──)

「えっと──こちらは?」

自分が聞くよりも先にナビの方が質問を投げ掛けていた。


「女王様より──お二人の身分を保障するものだと伺っております」

そして白い狩衣の方は頭を深く下げる。


ナビと共に手渡された物を見ると──それは白銀色の書状になっており文面には自分とナビの身分の保障とその保証人は皇室が受け持つと記されていた。


「これはおいそれと見せたらいけないものじゃな──」

「だがこれ以上に効力を発揮する物はこのヒノモトではないだろう」

自分とナビの背後から、ドルマンさんとガイウスさんが覗き込んで来ていた。


「シエルよ──早めにしまうがよい」

「そうだな──だがこれで本当に自由になったというべきだろう」

ドルマンさんのアドバイスに習い、ナビと共に自分達の銀行の金庫へと書状をしまい込む。

そしてガイウスさんは感慨深げに言葉を吐き出しているのだった。


『女王様へ感謝の言葉をお願い致します』

「私からも──」

「畏まりました。伝えておきます──では私はこれで」

そして白い狩衣の方はサッと移動を開始したのか目の前から消えていく。


「シエル様──帰りましょう」

『そうだな、帰ろう』

ドルマンさんとガイウスさんは振り返った時には既に魔力車の方へと歩き出していて──自分もナビから言葉を投げ掛けられて共に魔力車へと乗り込みに向かうのだった。


    *


そして、今回の事件は──世間ではシャドウという言葉が定着した流れもあり黒き者……シャドウ事件として取り扱われることになった。


賭博エリアは一番大きな被害を出していたが、他エリアでも被害は大きかった。

各エリアの復興に奔走する人は多かったが──シャドウ化した存在への供養くようとむらいに奔走ほんそうする人も多かった。


ハンネスの影響が大きかったのだろうか──良くも悪くもギルド、軍どちらとも大きく力が削がれたのと──同じく両者同士の反発勢力が消えたのも大きかったのだろう……両者は新たな歩み寄りも展開していった。


そんな中、良い事ばかりではなく不穏な火種も確かに存在は幾つかはあったが──その中でも復興に合わせての賭博エリアの管理勢力の争いは見過ごせない火種にもなって来ていた。


そうした背景の中でも──シエル達の中学時代はあっという間に確かに過ぎ去っていくのだった。

coming soon

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