『闇市場─正義の行方─㉔』
──
「待て──落ち着けこのバリアの色が分からぬ訳では無かろう」
「む──だが我らは中央に彼らを護送せねばならぬではないか……」
狩衣の集団は未だに言い争っているようだった。
そこへマリが近づいていくのが視界に捉えた。
「落ち着きなさい──」
「──!」
マリの口調は普段とは違うものになっており、マリの姿と声を聞いた彼らは一様に会話を止めて膝をついて首を垂れていた。
「マリ様──中央からの通達になります」
「中央へと首謀者ハンネス、また該当エリアのマザー及びそこのシエル、契約精霊のナビを召喚させるように通達されました」
「シエル……くんを?」
「おい──待ちたまえシエルは私の管理責任下にあるはずでは?」
狩衣の者たちの話にマリは驚きから口調がいつものようになり、横からはガイウスさんが話に加わっていた。
「こちらが証明証書になります──」
そして自分の前にも可視化された証書が掲示される。
「これは──何という……中央は軍の意向さえも無下にして判断したということか」
「特殊な事情故──になります。何卒ご了承頂きたい」
スッと目の前の白い狩衣の集団は話は終わりかというように立ち上がる。
「では──改めてこのバリアを解除して頂きたい」
「身柄の安全は中央までは保証しよう」
「シエルくん……ごめんなさい」
「シエルよ……すまぬ、逆らわぬ方が得策だと伝えよう」
『────わかりました。ナビ……』
「はい──わかりました」
マリとガイウスさんの説得の声も聞いてバリアの解除をする。
それに合わせて白い狩衣の集団は周囲へと警戒を怠ることは一切せず、自分とナビ、ハンネス……そしてこの賭博エリアのマザーを丁寧に拘束する。
「シエル──!」
レイが自分へと手を伸ばそうとするが──。
「今は我慢するのじゃ──、逆らっても邪魔をしても行けぬ!」
ドルマンさんがその手に気付き、自分の手元へと手繰り寄せる。
『レイ──ありがとう、大丈夫だから』
「シエル──約束!」
『あぁ、約束だ!』
「────!」
まだ何かを訴えたいような視線を残しつつレイは視線だけはずっと自分から外さずにこちらを見ていたがドルマンさんから自分との距離を引き離されて行っていた。
「全ての対象の拘束が完了した」
「最後に確認を──確認クリア」
「では安全を優先して中央へと戻るぞ!」
そして自分とナビ──ハンネス、マザーを拘束して白い狩衣の集団はこちらまで来るために使ったであろう魔力車まで自分達を連れて行き、中央までへと引き返すのだった。
*
(────ギルド、軍の動きも見える……)
(「何名かは両部隊共に残して──ガイウス様、ドルマン様共にこちらへと向かうようですね」)
ナビと共に魔力層とネットワークを駆使して周囲の状況を漁る。
ザザザザ──と、しかし漁る中でノイズみたいな物も聞こえてくる。
(ナビ──ナビと話してる時にも混じるこの音はなんだ?)
(「多分ですが──この拘束されている物の干渉だと思います」)
ナビと共に自分達を拘束している白銀色? 自分達とはどこか違う……くすんでいるような色合いをしている拘束具を見る。
(これの干渉か──だが……どこか脆さを感じるな)
(「多分それは私達の力の方がクリアで強いからだと思います」)
ナビの返事と共に改めて拘束具を見ると確かに……反してハンネスとマザーに対しては強力な作用を発揮しているのか両者とも大人しく拘束されているような状態だった。
(微量にも魔力を外へと吸収しては放っているのか──これではまるで……)
(「はい、私達も厳重に見られてると思った方が良いかと思います」)
(だよな──ナビ気を付けて行こう)
(「はい! とりあえず今は情報をもう少しかき集めてみます」)
(宜しく頼む。自分の方も探ってみる)
ナビの返事に応えつつチラッと横目で自分達を見張っている狩衣の者を確認する。
律儀にしっかりと自分達の動きを監視しているようだった。
そして自分とナビはなるべく体勢を変えないように静かに周囲の情報や現状の情報整理を行い始めるのだった。
coming soon




