『闇市場─正義の行方─⑳』
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”キィィィ──ン”と涼やかにも神聖な音にも聞こえる音を呼応するように発しながら自分の目の前の剣は遂に完成していた。
『出来た──』
「これは──私とシエル様の白銀の魔法と……」
「私とシエルの精霊の加護の合わさったカタチ」
自分達の輪の中には自分とナビを合わせてもまだ大きいだろう白銀に輝く──薄っすらと透明状でもある剣が出来上がっていた。
フワフワと浮き上がっていて──今しがたも自分の周囲の空間に広がっている白銀の魔力と精霊たちがうねるように集って来ている。
「精霊と魔力の融合──霊魔とでも呼べば良いのでしょうか?」
「霊魔剣──」
『ナビ──時間が無い……』
ナビとレイには死角になっているであろう──背後ではハンネスが様相をおぞましいモノへと変わり果てており今にでもどす黒い魔法の収束を肌にも感じて、それが放たれるであろうことは読めていた。
『レイ──ありがとう』
「ううん──シエル……気を付けて」
『行ってくる』
「最後までお供致します──!」
レイにお礼を告げて──その霊魔剣の剣の柄を握る、そしてナビはその手に重ねるように一緒に柄を掴んでくる。
『ありがとうナビ──行こう。この物語に終止符を打とう』
「はい──! 私の全てをシエル様のサポートに回します!」
握られている触れ合ってる部分からナビの暖かさが魔力が伝わってくる。
そしてナビと寄り添いあい──剣を頭上に捧げる。
「──────!」
掲げた霊魔剣へと周囲の白銀の魔法と精霊が集まって来る。
そして軍、ギルド両部隊の人や──その場に居る者の視線も集まって来る。
その時だった──ハンネスから今までの中で最大規模の収束されたどす黒い魔法が放たれて来た。
*
(今なら何でも出来そうだ)
目の前に迫る──全てをどす黒く染める魔法を見ても冷静に見えている自分が居た。
「シエル様──!」
『うん、終わらせよう──そしてハンネスを解放するぞ!』
「はい──!」
ナビと共に掲げた霊魔剣を放たれたどす黒い魔法へと振り下ろす。
「aaaAAアアアァ──?!」
振り下ろされた自分の霊魔剣はスパンと綺麗にハンネスの放ったどす黒い魔法を両断して切り裂いていた。
そして分け隔たれたどす黒い魔法は白銀の魔法が侵蝕するように黒が白銀へと色を変えては綺麗に塵状に消滅させていた。
切り裂かれた先には驚きに顔を歪ませた──黒い存在に侵蝕されているハンネスが居た。
「ウガァァアアァァァaaaa────!!」
驚きの表情から一変、今度は怒りに歪ませた表情でハンネスは展開していた全てのどす黒い魔法の触手や腕を自分とナビへと殺到させてくる。
『ナビ──行こう!』
「シエル様の願いを──叶えましょう!」
殺到する触手や腕に霊魔剣をナビと一緒に一閃させる。
たったそれだけでどす黒い魔法が生み出す触手や腕は消し飛んでいく──そしてそのまま自分とナビはハンネスへと向けて銀色の翼を魔法で顕在化させてるように見える位に周囲の白銀の魔法と精霊を伴って羽ばたいて向かって行く。
「──────!!」
ハンネスは飛び迫ってくる自分達を全力で落とそうと声も無く──全霊のどす黒い魔法を放ってくるが片っ端からナビと共に霊魔剣にて振り払っていく。
「aaaaaああああアァァァ────!」
そして近づく自分達へとハンネスは巨大な赤黒い実剣を振りかざしてくる。
『ナビ──!』
「分かっています!」
ハンネスの振り下ろされる実剣へと自分達の霊魔剣にて迎え撃つ。
「────!?」
ハンネスの動揺なのか震えが巨大な赤黒い実剣から一瞬だけ伝わってきたが──すぐに伝わらなくなってくる。
それはそうだろう……霊魔剣と打ち合った箇所から赤黒さは剥がれ落ちていき──そして精霊の強制的な支配も失っていき実剣という姿が消えて行っていた。
「ああああアァァァ────!!」
実剣を手放しハンネスは巨大な腕を自分達へと打ち付けてくる。
『「はぁぁぁぁ──!!」』
それをぐるりと搔い潜りつつ霊魔剣にて切り刻んでいく。
「アAァァァaaaa────!」
そして痛みを感じるのかハンネスが大きな叫びをあげるが──外傷は一切見受けられない。
ただ、どんどんとどす黒い魔法が切り刻まれると同時に剥がれ落ちては消えて行っていた。
「あ──わた……しは──」
更に敵の振り回してくる腕や足を搔い潜りながら霊魔剣にて切り刻んでいく。
込めた願い──”救い”とどす黒い魔法の消滅を叶えるように霊魔剣は自分達に応えてくれる。
そして、ある程度どす黒い魔法が剥がれ落ちた際にハンネスの意識が主導権を取り戻したのか声が微かながらでも聞こえてくる。
『ナビ──! このまま!』
「分かりました──!」
そのままナビと共にどんどんと巨大なハンネスを切り刻んでいく。
そしてカタチを保てなくなったのか一瞬巨大なハンネスにヒビが入ったかと思うと”パリン”と大きな壊れる音が鳴り響き──ハンネスだった殻が粉々になって散っていっていた。
『────!』
散っていくハンネスの殻に合わせて内側に内包されていたハンネスと賭博エリアのマザーが空中に投げ出される──気付いた時には白銀の魔法と精霊がハンネス達を包み込んではそっと地表へと降ろしていた。
そしてもう1つ──そう自分の魔力的に……精霊的な視点から見えていたソレが遂に現実的なものとしてハンネスとは分離して自分の目の前へと姿を現していた。
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