『闇市場─正義の行方─⑮』
戦闘は終わらない──。
『「はぁぁぁぁ──!!」』
ナビと共に力を合わせ放たれて来た魔法と自分達の斬撃とが拮抗する。
ギギギギギギ──と軋みを上げているのはハンネスとの魔法との拮抗音ではなく、自分達の握る木剣からだった。
(くっ──流石に持たないか!)
ピシッ! ……バリンッ! と自分の木剣が目の前で割れる。
『まだ──まだ!』
即座にブリッケンさんから貰った予備の木剣を手元に呼び出し再度──ハンネスの魔法へと迎え撃つ。
「シエル様──すみません!」
ナビの木剣も同じように割れては手元に呼び出し、ナビも応戦する。
そんな状態がいつまで続くかと思われたが──何本か木剣が砕かれていく中で不意にどす黒い魔法の終わりが訪れた。
*
『ナビ──無事か』
「は、はい──ですが……」
自分達の手持ちの木剣はほとんどが割れては今携えているものもボロボロになっていた。
何よりもナビの周囲を見る視線に合わせて周囲を見渡すと、自分達が弾いた以外の周囲の状況は凄惨な光景へとなっていた。
(木剣──ブリッケンさんのストックも心許ない……どうする)
冷静に自分の置かれた状況を把握しつつ目の前のハンネスへと視線を転じる。
「──小賢しい、ギリギリ耐え抜いたというところか」
「だが──次はもう無さそうだな」
そして、再度空間が震え始めて、ハンネスの方へと魔力の高まりを感じ始める。
『ナビ──皆を連れて逃げろ……』
「ダメです! それだけは……聞けません!」
自分の判断の意味が分かったのだろうか──ナビは自分の言葉を聞いてその表情を何とも言えない苦しいものに変え抗議の声を上げていた。
「バル──! 合わせを!」
「分かっている──!」
そんな時に自分の頭上を越える一閃の魔法がハンネスへと向かっていた。
『シュン──!』
「シエル──休んでろ! 場を何とか繋いで……みせる!」
「私たちも居ます!」
シュンの声の後にマリの声が届いたと思ったら──マリの魔法だろう白銀の微弱だけれども確かに白銀の魔法と風の魔法がハンネスへと向かっていた。
「シエル──ん、ナビも」
そして、膝を落としてしまった自分達へとレイが来て自分達の手を握り──周囲が暖かくなったと思ったら確かに弱弱しいが精霊も現れて来ていた。
*
「バル──!! 私の邪魔をするというのか!」
「父様──! もうお辞め下さい!! 何故──何故そこまで!」
自分の目の前ではバル、シュン、マリ、リンが共闘してハンネスへと向かっていた。
レイは自分達の回復を優先している。
そんな中バルはハンネスへと再度問いかけていた。
「力があってこその平和なのだ」
「何を仰っているんですか! そんな事で平和なんて──!」
「歴史を見て見ろ! 暴力が──力がこの世で一番全てを解決してきた! 私で無ければ今のヒノモトは無かった!」
「──ッ」
ハンネスへの魔力の収束の気配は断たれたようだが──その代わりに攻撃が4人へとシフトしていく。
「何故暴力なのですか!」
「それに色んな人を巻き込んで何をしたかったの!」
「あなたの力は──まがい物だ!」
マリ、リン、シュンもハンネスへと攻防を繰り広げつつ問い掛ける。
「なら、暴力以外で今の世界へと平和を築けたのか?」
「色んな人? ──何をいう馬鹿みたいに反ギルド、反軍といい大局を見れない愚か者ばかりではないか、そして世界へと仇を成す敵ばかりだ!」
「そして──まがい物ではない……これは授かった私だけの力だ!」
先程まで答えを得られなかった部分をハンネスは攻撃の手を緩めることはせずに──答えながらもその攻撃を更に激しくしていく。
「シュン──!」
「バル──!!」
4人も戦える方だろう──そう戦える方というだけで拮抗出来る訳ではない。
レイ及び集まって来る精霊達から回復して貰いつつ戦況を見ているしか出来なかったが、シュンへと向かった強烈な一撃をバルが防いで大きな隙が生まれていた。
「バル──この愚か者が……!」
「父様──!!」
何とか防ぎきったバルは明らかに体制を崩しており──そこへハンネスの展開していた黒い腕やらが殺到していた。
「バル────!!」
シュンがその惨劇に声を上げると同じタイミングだった。
「良く耐え抜いたな──!」
イアンの声がどこからか聞こえて来たのだった。
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