『闇市場─正義の行方─⑬』
そして邂逅の果てが始まる──
『ぐっ──!』
ハンネスの振り抜いて一閃した攻撃はどす黒い斬撃となって自分達へと迫って来ていた。
それに対して自分も木剣に魔力を這わせて迎え撃ったのだが──その攻撃は余りにも重くて何とか耐え凌ぐ。
『ナビ──! 皆は大丈夫か!』
「大丈夫です──! シエル様……お気を付け下さい。あれは何かが異常です!」
ナビの声を背後に聞きつつ木剣をしっかり構えなおす──そしてハンネスへと改めて向き直りつつ、今度は自分から攻撃を仕掛けに行く。
『その力は──どこから!』
「ほう──流石に分かるか」
『あなた1人の力だとは思えない──!』
一気にハンネスへと近づき斬り結び始めつつ、疑問を投げ掛けるがハンネスは余裕を感じさせつつ自身の攻撃を捌きつつ──冷静に自分を観察しているようだった。
「ぬるい──!」
『ッ──!』
自分もハンネスを観察しつつ斬り結んでいた中だった──意識が少しだけ外れた隙をハンネスに突かれて一撃が飛んでくる。
「白銀の──シエルといったか。期待外れだな……まぁ、いい暇潰しにはなったか」
『何を──』
「私の糧になれ!」
不意を突かれた一撃を何とか防いで弾き飛ばされた自分へとハンネスは先の比では無い、どす黒い斬撃を放ってくる。
「シエル様──!」
『ナビ──!?』
自分がそれへと再度迎え撃とうとしたところ──今度は背後から駆けつけて来たナビと共に迎え撃つ。
今度の一撃はあっさりと迎え撃てた感触が手の平からも伝わってきた。
*
「──む。その事象はなんだ?」
「シエル様──お気をつけ下さい。ハンネスは1人であって、1人では無さそうです」
『どういうことだ?』
「ははは──! これはこれは……分かるのかね?」
「シエル様──私たちは2人で完結していますが、ハンネスは無理やりにでも多くと……繋がっています」
『──あの剣もその産物か』
ナビの言葉に合わせてハンネスを視る視点を魔力的に観察してみる。
あの赤黒い血の様な実剣も──背後の繋がれたマザー、周囲からの黒い魔力の収束……。
『なるほど──ナビ、ごめん一緒に戦ってくれるか?』
「はい──喜んで! サポート致します」
『っ──! 皆もごめん! バリアを展開はしたが万が一は自衛を頼む!』
隣に並ぶナビに確認を取りつつ、背後の仲間へとバリアを展開し──皆の了承の声を聞きつつハンネスへと向き直る。
「ははは──お荷物をしょい込んで戦うと?」
「それに私たちは2人で完結しているか──面白い」
「もう少し──暇潰しは出来そうだな」
ハンネスはどこか歪んだ微笑みを見せつつ、それは楽しそうに語っていた。
「ついでだ──教えてあげよう。楽しませてくれているお礼だ」
「この剣は沢山の命を吸い上げて錬成して作ったのだ──この世にこれしかない至高の一品だな」
そして、さも嬉しそうに続けつつ実剣の事を語るハンネスが──。
「父様──! 何を言ってるか分かっているのですか!? 何故……何故、そのような──」
「あぁ──煩わしいな。少し──黙れ!」
バルの声が耳に入って来たハンネスは楽しそうな雰囲気から一転して暗いつまらない雰囲気へと変わり──その実剣の切っ先をバルへと向けて振り抜いて一閃させていた。
『ナビ──!』
「分かっています!」
その斬撃より早く回り込んでナビと共に斬り弾く。
「──あぁ、小賢しい」
『ハンネス──あなたは何をしているか……分かっているのですか!』
「────平和の為だ」
『「──えっ」』
「到底理解など出来ようはずがないだろう──あぁ、興が冷めた……もう良い消えろ」
バルへの一撃を防いで、ハンネスへと問いかけると今度は答えがあったが──その答えに自分もナビも一瞬時を止めてしまう。
皆も同じように一瞬だけ時を止めてしまう。
それを見たハンネスはまるでつまらないものを見る様な冷たい目になり──二度目の斬撃よりも更に濃く強いどす黒い斬撃をこちらへと放って来ていた。
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