『闇市場─正義の行方─⑩』
そして、シエル達の進撃が始まる
「──爆弾持ちには気をつけろ!」
先行するイアンの声が周囲に響き渡る。
今や自分たちはイアンの部隊を追随する形になっている。
後方は合流した軍やギルドの部隊が展開していた。
(凄い機動力だな──)
目の前の先陣を切っているイアンは風魔法を行使し低空飛行で飛びながら──シャドウの攻撃を潜り抜けつつ、すれ違いざまに一閃してシャドウを屠っていく。
「──ッ!」
そして斬撃には光の魔法を纏わせており──爆弾持ちの場合は爆発が起きるのと同時に闇魔法の重力操作だろうか……内側へとエネルギーを向かわせて最小限に被害を留めていた。
「流石──イアンさんだ!」
「だな──っと!」
「撃ち漏れをしっかり──片づけないとな!」
そして、その動きについていくようにイアンの部隊メンバーがイアンの後方からサポートをしていた。
*
「クッ──ここまでか」
「これは──流石に不味いですねぇ」
「どうします?」
「後少しですが──」
そのイアンの進撃もコロッセオまで後少しの部分で止まっていた。
明らかにコロッセオへの侵入を防ぐようにシャドウ──そして闇市場の者だろう怪しい者達が展開していた。
「皆様──大規模魔法が……来ます!」
不意にナビが周囲の仲間へと危険を知らせる。
その瞬間目の前の空間に揺らぎが生じるのと同時に黒い魔法と合わさった黒炎球が発現していき──周囲の魔力を吸収した黒炎球は肥大していき……こちらへと放たれて来た。
「シエル──お前はまだ力を温存していろ」
『えっ──』
その黒炎球を切り裂こうと木剣に白銀の魔法を纏わせ始めていたら、イアンから声を掛けられる。
「言っただろう──道は俺たちが切り開くと」
「────」
そして皆の前に立ったイアンはだらりと双剣を握ったまま両手を下げる。
そして、一気に集中状態に入ったのか双剣に光と闇の魔法が濃く──鋭く練られていくのがピリつく肌に感じ始める。
「シエル──お前らいいか」
「俺があれを斬り開きつつ──道を作る」
「後ろを振り向かずに一気に──コロッセオまで駆け抜けろ!」
自分たちが返事を返す時間は迫ってくる黒炎球は待ってくれはしなかった。
そして、伝える事は伝えたと背中で語るようにイアンはその黒炎球へと向かって行った。
「例え──大規模だろうと──大きかろうと──俺を止められは……しない!」
迫りくる黒炎球へとイアンは双剣を同時に振り下ろす。
闇魔法で一気に内側へと──そして内側から光魔法で一気に相手の魔法を外へと弾き飛ばす。
イアンの振り切った後の黒炎球は内側から大きく──外側へとその力を強制的に逸らされていた。
そして縦方向にパックリと割れた黒炎球は外側へと威力を暴発させていった。
「すまねぇ──が道を作らせて貰う!」
「──ハァァ!!」
そして、振り下ろしざまにまた魔力を練り上げたイアンは今度は一気に振り下ろした双剣を振り上げる。
「なっ──」
「──クハッ」
イアンが振り上げた斬撃に沿って強力な風撃が起きていた。
もろにその風撃のルートに居た相手は吹っ飛んでいた。
「シエル──お前ら……今だ! 行け!」
「「『はい!』」」
イアンの言葉に自分たちは返事をしつつ──イアンの背中を越え…振り返る事は決してしないように、一気にコロッセオへと向けてイアンの作ってくれた道を駆け抜けて行ったのだった。
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