『美しい世界⑥』
美しいのは、包容りょ……ネタバレ?
いや、違う
包容力は、美しいのだろう
それは一言では語れない──美しさなのだ
(「はい…?」)
(ナビ、すまない。”魔力回路”と”魔力ネットワーク”について教えてくれないか?)
(「魔力回路は〝黒い渦〝の発生に際して世界に産まれた〝概念〝に近いと言われています。
魔力を持つ者は等しく各6属性〈光・闇・火・風・水・土〉系統に該当する──いずれかを扱いやすくする回路があると言われています。
魔力ネットワークについては〝旧世界〝から存在していたデジタルデータの相互間のやり取りを、今は〝魔力間〝でのやり取りに変化しています。
なので、回路の系統によっては扱いづらい者もおり……それを補う為の電話を繋げて〝フィットホン〝という物があります。
大掛かりな物や魔力量を大きく要求される物は未だに機械化して使われています。
しかし、個の魔力量や適性のある回路をお持ちの方の場合は〝別の話〝になります」)
(待て”別の話”とは?)
(「シエル様の場合は〝イレギュラー〝になります。私も──そうなります。感覚、及び視覚、それらを私と共有しており……これは奇跡に近い数値の可能性が実を結んで……結んで──はい、実現しております」)
ん? なんで少し照れくさそうに言っているんだ?
〝結んで〝の際に”わざわざ”言い直して嬉しそうに語るナビの声を聞きながら考える。
この世界は果たして終わりに向かっているのか──。
それか、本当に”新たな世界の始まり”なのか──。
父母……今も、まだ実感が薄い部分はあるが”両親が生きてきた”世界。
そして、俺自身が生きていたであろう世界。
〝どんな世界なのか〝と、俺は強く──そう、強く思いを抱いたのだった。
*
それからのリハビリは〝辛いもの〝としか表現出来なかった。
食べるのから始まり──衰えた筋肉を鍛えて歩けるようになり、そこから更に鍛えて──。
でも、どこか辛いが苦しくない自分が居た。
(”あれ”かも知れないな──”夢”で生きてきた実績があるからなのかな)
周りの視線は大層驚いていた──それは、分かる。
何せ、このシエルの身体は……やっと”12歳”なのだ。
小学生を卒業する辺りなのだから、そのような反応になるだろう。
驚く位なのは分かる──凄く分かる。
そして、やはり──それほどの事なのだ、辛いものは辛い。
リハビリはどこまでも辛いものだったが、俺は──自分は、それ以上に”この白い空間の外”を知りたいと常に願っていたのだった。
*
それから”白い部屋”についてだが。
後から聞いて分かったが紫外線、及び雑菌……普通に居るらしい。
だからこそ、外には容易には出られなかったようだった。
理由は簡単で〝ファンタジー〝風に言えば〝ヒール〝という概念に近いものはあるらしい。
だが、それはただ細胞の活性化を促すのみで、魔法の適正な使い方を間違えると簡単に重症になったりするとの事だった。
〝新世界〝──今はこの世界、巷では、そのように指してるらしいが、未だに”旧世界”からの〝処方箋〝の存在はあり、それらを専門に取り扱っている業者も普通に居るらしかった。
”ファンタジー”なのか”リアリティー”のあるものなのか──。
まだ、しっかりと〝外〝を分かっていない自分には結構判断に悩むものだった。
*
そんなことで悩めるのなら、今はまだ大丈夫だろうと苦笑しようとした際、次は意識が遠くなるのではなく、足が”もたついてしまい”倒れそうになった事は不名誉……では無かったと思う。
偶然にも近くに居た実習生のお姉さんに抱き抱えて貰えたのだから──これは”良いもの”だったのだ。
(”良いもの”だったのだ)
…………
(「何が……でしょうか?」)
(「胸……胸……胸──」)
(「それが……なんなのですか」)
(「なんなのですか──!!」)




