『学内対抗戦㉛』
願いを叶えていたのは魔法──?
『これは──』
手を伸ばして──ソッと掌をレイの額へと触れる。
そして、レイへと繋がるように魔力を這わせて行き──レイの心を探ろうとするのだが。
『見当たらない……? いや、そんなことは──!』
自分の持てる魔力をイメージを強く持ってレイの心を探そうとする。
『ここまで来たんだぞ──! どこだ、どこにある──!』
「────」
レイの心を探そうと必死になるが見つからない──そんな時にレイの頭上に小さな水色の人型の半透明の精霊が現れる。
『──! 教えてくれ! レイの心はどこに──』
……あるんだ!──そう、問いかけようとする前に。
「────」
目の前のレイの守護精霊はゆっくりと俯くように首を横に振るのだった。
*
(何故──横に振る?)
(認めない──彼女は自分に助けを求めたんだ!)
(まだだ──まだ彼女はここに居る!)
『俺は──認めない!』
『まだ──まだ! まだだ! ────お願いだ! 彼女を彼女を助けたいんだ!!』
自分の許容量以上の魔力を発現しようとすると──ナビから強い魔力の循環を感じた。
それを頼りにもっと──もっとと彼女を助けたいイメージと魔力を大きく、大きく発現していく。
──その時は不意に訪れた。
自分とレイの周囲は既に白銀の魔力が迸っていた。
そして、それが世界に作用したかのように思えた瞬間だった。
「助けたいの──?」
「助けたい?」
「彼女を?」
「助けたい──助けたい?」
自分とレイの周囲に不可思議な──いや、近いものは見たことがある。
半透明のそれぞれの属性色に呼応した丸い朧げな──精霊? が出現し始めていた。
*
(ナビ──これは!?)
(「分かりません! ですが、きっと精霊──まだ形を持っていない精霊だと思います!」)
ナビと話してる間にも──レイと自分を通して発現されている魔力に呼応してか、範囲を広げて精霊が出現し始めていた。
その範囲を見渡していて──シュン達の方まで広がっているらしく、シュンと目が合うと不意にシュンが脇腹を押さえて驚きと不思議そうな顔をしていた。
良く見たらバルの方にも精霊の光が集ってるように見える。
「あなた──?」
「きみ──?」
「助けたい?」
「願った?」
そして、周囲から声が聞こえる。
それは人に似せるように作られた声にも感じて──必死にこちらにも問いかけているようにも感じた。
『自分は──俺は助けたい! 頼む! レイの心を──導いてくれ!』
「わかった」
「私たちの”命”を使って」
「願いを叶える」
「助ける」
既に周囲は白銀の魔力と──幾つもの属性色の丸い朧げな精霊達で溢れかえっていた。
そして、それらが収束するようにレイへと向かって行き──。
「来て」
「助ける」
「叶える」
「命を作る──」
『────!』
頭上のレイの守護精霊が自分をジッと見て来ており──視線が合うと大きく頷く。
『なんとか──なるのか? 導いてくれるか?』
「────」
なんとかなる──に頷き。
導いてくれるか? ──に大きくレイの守護精霊は頷く。
そして、まるで潜り込むような仕草を見せて頭上からレイの身体へと消えて行く。
(────諦めない、助ける!)
自分もそっと目を閉じて意識をレイへの意識へと繋いでいく。
そして、目を開いた時には目の前にレイの守護精霊が居て遥か下へと指を指していた。
周囲は暗闇に染まっていたのだろうか──今は白銀の奔流が下へと向かって流れていき、闇の浸食を先程の精霊たちが食い止めては真っすぐと下へと繋がる奔流の道を必死に守っていた。
「早く」
「急いで」
「願いを」
「叶えたいなら──」
精霊の声も聞こえてくる。
そして、レイの守護精霊は自分の傍らへと来て下を再び指を指して頷くのだった。
『ありがとう──行ってくる』
「頑張って」
「頑張る」
「祈る」
「願いを──」
精霊たちの声を耳に聴きながらレイの守護精霊とどんどんと深層へと──その終着点へと進み始めるのだった。
coming soon




