『学内対抗戦㉗』
物語はシュン視点へ──
≪side:シュン≫
(っ! ──攻めきれない!)
「バル! 目を覚ますんだ!」
「──ぅぁ? ぁ? ぁぁぁあ──!!」
小手先の攻撃は全て凌がれてしまい、自分の大きな一撃も弾き返されてしまう。
(──そうだ、俺はこいつに小さい頃に剣術には勝てた試しが余りなかったな)
大きくなっても、そんな所は変わらないのか……。
絶えず攻防を続けながらも、ふと意識の片隅で昔の思い出に浸っていると──。
「シュン様! 支援致します──!」
バルからの攻撃にて弾き洩らしがあり、その一撃が自分へ向かおうとしていたところ──ナビさんのサポートが入る。
「──!!」
ナビさんのバリアで弾き返されたバルが居て──。
「バル──!!」
足元が安定していないバルへと、もう一度このチャンスを活かして木剣を一閃させる。
「──がぁぁぁ!!」
「バル!! バル!」
「…………シュ──ン?」
「バル!?」
「──シュン様! 離れてください!」
「うぁぁあああああああ──!!!!」
バルの反応が一瞬だけ正気に戻ったように見えた刹那、ナビさんが一気に自分に近寄りバルとの距離を自分を引っ張って引き剝がす。
(何故!? 引き剥がす──)
自分の思考はそこで止まっていた、引き剝がされて離れて行く瞬間にはバルから人なのか? と思える雄たけびと無数の黒い腕? いや──糸? がこちらへと迫ってきた。
「シュン様──バルさんへともう一度接触出来ますか?」
「──大丈夫、やれる……いや、やるんだ!」
「分かりましたでは──今です!!」
バルとの距離を未だに離しながらも黒い糸はこちらを補足して無数に伸びて来ており、それをナビさんが時にはバリアを張り、腕に魔法を這わせては振り払っていた。
そのタイミングでこちらへと問い掛けがあり自分が応えると──それに頷いたナビさんは幾つのも黒い糸を周囲にバリアを展開し、それらを一気に開放して弾き返すのだった。
「バル! ──今、もう一度!!」
一気にバルへと駆けだす、自分を捉えようとする黒い糸はナビさんがバリアで弾き返している。
バルからの闇の斬撃も魔法で飛んでくるが、それは自分の木剣に光属性を纏わせて斬り弾いていく──後少し──!
(くっ……)
こんな時に父様の言葉を思い出す──。
(男として、ここは譲れない……そう思った時──)
「無理を通してでも──突き進むんだ!! バル──!」
「がぁぁぁぁぁぁあ──!!」
(どのみち剣の技量は自分が劣ってる──だから、受け止める……接触する為には!!)
無数に来る黒い糸を弾き、闇の斬撃も潜り抜け──バルへと接敵する。
「ぐはっ──」
バルへと接敵した瞬間──バルの強烈な木剣の一突きがこちらへ繰り出される。
自分はそれを避ける事も弾くこともせず──この身で全てを受け止める。
「ははっ──やったぞ……バル、やっと掴まえた」
「────!?」
「ナビさ──ん……」
何とかバルを抑え込んでナビさんを呼ぶ──自分の目には物凄い速度でこちらへと向かってくるナビさんが映っていた。
「シュン様!? 何ていう無茶を! ──ですが、これで……触れられます!」
「────!!」
「バル──!」
ナビさんに触れられたバルが激しい抵抗をする。
それを自分は持てうる力を全て注ぎ込んでバルを押さえ込む。
「シュン様──行きます!! ご覚悟を!」
「あぁ! 頼む──!」
その瞬間、バルと自分──そしてナビさんを包み込むように。
最初は淡い白銀の燐光が周囲に発現して──そして今は眩い白銀の奔流が渦巻いていた。
「…………」
「なんとか──なりました」
「もう大丈夫なのか?」
「いえ──」
周囲は未だに白銀の奔流が渦巻いており、ナビさんの魔力の流れも仄かに感じる。
もう終わりかと思ったが違うらしい──ナビさんは一呼吸おいて話を始めて来た。
「シュン様──これからシュン様をバルさんの心象世界へ意識を繋ぎます」
「待て? 心象世界だと……?」
「はい、そして──シュン様の光の属性の力も最大限に行使して、心のどこかで囚われているバルさんを……この黒い存在から解き放ってください」
「それが──バルを救う方法なんだな?」
ナビさんが大きく頷きつつ、未だに白銀の奔流を展開させて黒い糸や──バル自身を抑え込んでいるのを見て考える。
(シエルが言っていたな──バルに関して最後に、ここの場に立つ際に問い掛けた時に……俺に最後は委ねることになると思うって)
こういう事か──そう、思い出す自分が居た。
だが、今はこれがラストチャンスでそして──ナビさんの辛い感じ伝わってくる。
そして何よりも──これが【運命】にも思える。
(やるしかない──いや、やるんだ! 俺はもうバルから……逃げない!)
「頼む──ナビさ……ナビ!!」
「俺を──バルの下へと案内してくれ──!」
「任せてください──! シュン様、目を閉じてください!」
ナビさんの声に従い目を閉じる──その瞬間、意識が一気に引っ張られる感じと何処かへと運ばれていくような感じが自身に襲い掛かる。
「くっ──!」
(ここはバルの意識の中か? ──俺は……これは精神体か?)
少し──目を開けると眩しすぎる白銀の奔流が目の前から流れて来ており、その中を一気に突き進むように自分がどんどんと先へ先へと送り出されているようだった。
(ん……? ──あれは)
そして、いつ終わるか分からない白銀の奔流だったが──ある一箇所を始点に始まっているようで自分はそこへと運ばれているようで、それに近づいた瞬間……一気に光が溢れて──耐え切れない自分は目を閉じるのだった。
coming soon




