『美しい世界⑤』
人は醜くも争いあう
それもまた──美しさなのだろうか?
それとも変わらない醜さか?
話をまとめてみた。
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魔力事件というのが世界に──もたらされた〝らしい〝
〝らしい〝というのは人類存続の激動の時代だった為、その頃の文献が曖昧だからだという。
まず始まりは──俺自身も、うろ覚えで記憶にある。
あの、父母が亡くなってしまった際にあった〝黒い渦〝が始まりだという。
黒い──何処までも見通せない”ただ分かりやすく、ブラックホールのようだ”とも言われてもいる。
しかし、ブラックホールは吸い込むものだが、あれは吐き出す類のものだったらしい。
何処からか”魔力”と、今は定義付けられている物を吐き出しており、その影響で”モンスター”と言われる存在を産み出しているとも云われている。
例の〝白銀の龍〝も、その際に〝初めて〝確認されたようだ──という文献もあるらしい。
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世界は大パニックに陥った。
それは簡単に想像も付くだろう。
世界に〝6つ〝発生したと言われる〝黒い渦〝は世界を跨るように発生しており、更にそこで追加のモンスターの確認。
始めの頃は──ただ、その存在は”異形の者”と云われていた。
コミュニケーションを取ろうと近付く者も居たが、その身もろとも喰われたという事件も多発したらしい。
そして、その形態は世界の生態系をゆっくりと着実に取り込んで模倣し始めたともいう。
人間に近い姿形も居るらしいが”彼ら”とのコミュニケーション、または希望的な接触は──魔力暴走といわれる事件が起きてから”100年”経った今も無いらしい。
それだけで人類はそこまで減るのか? そう問い掛けたが……この次が問題らしかった。
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現在、世界の全ての人類は〝魔力に適合〝しているという。
それならば”適合出来なかった者たち”はどうしたのかと聞くと、彼ら彼女らは〝子孫を産むことが出来なかった〝らしい。
結果、魔力暴走が起きてから緩やかに人類は衰退していき──そして”魔力を持つ者と持たざる者での争い”禁忌、禁断の実験の数々……それら淘汰の時代を過ぎ去り”今がある”との事だった。
国も大きく変わってしまったらしい。
”国”というと聞こえは良いが防衛する拠点もしくは、その地域、人類の存続範囲を〝国〝と呼び……機能させているらしい。
そしてここは、その内の1つ〝ヒノモト〝という場所になるとの事だった。
シエルは何を思ったのだろうか
ここはヒノモト
人類の存続した国
そして──淘汰の果ての奇跡の場所




