『学内対抗戦⑯』
ナビの可愛さはやはり──ヒノモト共通なのだろうか
シエル達の知らないところで情報は広がりを見せているのかも知れない
「リン、改めて大丈夫……?」
「うん、もう身体も楽というか──凄く軽いよ!」
控室に戻り、マリの心配の声にリンは普段以上に明るく答えていた。
ふと──リンと視線が合うと「えへへ……」と軽く頬を染めるのだった。
*
「これで残るは3回──けれども、最大1280名規模のエントリーから次は勝ち残った80名の中での戦闘になるか」
『確かに、そうなるなね』
シュンの呟きが耳に聞こえ、同意するように言葉を述べる。
「──すまん、正直余り余裕が無くなってきた。シエルは大丈夫か?」
『ナビも居るから大丈夫、それに先の試合も皆が居たから勝てたんだよ』
「ナビもシエル様に同意です──そして、シエル様含めて出来る限り皆さまのサポートも致します」
改めて、皆で先程の試合の振り返りを始めるのだった。
*
「すみませんー」
コンコンと控室のドアがノックされる音がして、ナビが扉を開けると──。
「軽食をお持ち致しました。量は好みになりますが、どう致しましょうか?」
そこには軽食を持って来てくれた運営スタッフさんが居り、よくよく見てみると昨日運んできてくれた方と同じ人だった。
(……おや?)
「あれー?昨日よりフルーツサンド……が多いような?」
リンも気付いたのか、トレーの上の軽食のレパートリーを見ていた。
「いえ、昨日はそちらの──その、ナビさんが物欲しそうに悩んでおられましたので……」
「────!」
どこか困ったような、でも優しさも感じられるような雰囲気で運営スタッフさんが答えたら──自分含め、皆でナビの方へ視線を向けてしまい、視線が集中したナビは表情がポッとピンク色に染まるのだった。
*
「美味しいです──私は幸せです」
結局のところ、ナビは運営スタッフさんが持って来てくれた多めのフルーツサンドを全て受け取っていた。
(それにしても──)
ふと、先程の運営スタッフさんの光景を思い出す。
「あの、差し出がましいとは思うのですが──」
「は、はい……?」
「ナビさ──ナビさん、少しだけ触れても良いでしょうか?」
「えっと……?」
構いませんよ?──とナビが言うや否や、運営スタッフさんはナビを少し興奮したように触れていたのだ。
『えっと──どうしたのですか?』
その運営スタッフさんの行動に疑問を覚えて質問してみると──。
「今、ナビちゃん──ナビさん人気が凄いのですよ!」
そう言いながら、昨日のナビが相手の2人を斬り伏せる場面や──その他、可愛いところを集めたような切り抜きされた動画を見せてくれた。
(おおう……、これってアレかな。旧世界でいうバズるっていうやつかな?)
「凄い──愛を感じますね」
動画を共有して貰い、同じく見ていたマリも自分と似たような感想を述べていた。
『えっと──そんなに一気に何事も人気が出るものなのか?』
「いや、先も言ったが多分──シエルの人気急上昇のHOT動画から結びついて爆発してるんだと思うぞ?」
「それに──シエルくんも、ナビちゃんも。カッコいいし、可愛いと思いますので……」
自分の率直な疑問にシュンは答えて──マリは顔を少し染めながら……
(「ジー──」)
(ははは……)
少しだけナビからの視線も感じた一幕があったのだ。
*
(あ──これ、美味しいな)
手元のハンバーガーを食べ終えて素直に美味しいと感じていた。
(昨日は気になってたけれども、ナビのフルーツサンドで半分こしちゃったからな──)
そう思いつつナビを見てみると、大変満足そうにフルーツサンドを食べ終えていた。
他の皆も軽食を食べ終えて、空気も弛緩して少しだけリラックスしていると──
「すみません、そろそろ準備をお願い致します」
コンコンとドアがノックされて、ドアに一番近くに居た自分が開けると運営スタッフが来ており──次の試合への準備の案内に来ていたのだった。
『後、3回──』
「そうだな、後3回だ──」
「勝ちましょう」
「勝とうね!」
ナビは深く頷き──皆で次の試合への士気を上げ、会場へと向かうのだった。
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