『学内対抗戦⑮』
魔力は使い過ぎると欠乏症状が表れる事がある
そして一気に使って不足すると──その症状は顕著になる
「リンっ──!」
マリの焦ったような声が地面へと降り立ったら聞こえてくる。
審判からの戦闘の終わりの合図はあり、相手方も各々会場から退出しているのが横目に見えた。
「魔力の欠乏症を起こしていますね」
シュンとナビ、自分もリンの下へと辿り着き──リンの様子を見て、ナビが症状を告げていた。
*
「無理し過ぎたんだな……」
シュンの申し訳ない声を聞きつつ、幾つか読み漁った魔法に関しての文献の記憶を洗い出す。
(魔力不足──魔力の欠乏……これだ!)
『マリ、ごめん! 少しだけスペースを借りるよ』
「えっ!? う、うん……」
リンの横に座り込んで声を掛けていたマリに横にずれて貰い──リンの傍らに座る。
『ナビ! 魔力の供給を試してみる──何かあればサポートを』
「はい!分かりました──」
「えっ? 魔力の供給って、シエルくん!?」
ナビが自分の隣に来て座り込みつつ、横にずれてくれたマリからは驚きの声が上がる。
「シエル? 魔力の供給って、凄い至難の業だぞ!?」
シュンも驚いた声を上げていたが、自分はその声を聞きつつ──リンの上着を少し捲り上げ、お腹に直接──手を触れる。
(すべすべしてて──柔らかいな)
(「ジー──」)
(いや! 今はまずはリンの魔力回路に合わせて──自分の魔力を調整しないと)
不意に隣のナビからジト目を向けられたような気がしたが、思考を切り替えてリンの魔力回路に──自分の回路を合わせるイメージをしていく。
「チーチーチー」
お腹に触れた手の甲にリンの守護精霊だろう──シマエナガに似た”ちょっぴり淡い緑色を発している”精霊が現れた。
『導いてくれるのか?』
「チーチー」
シマエナガに似たリンの精霊は囀りつつ、自分のイメージに介入してくるのを感じる──。
(これが──リンの魔力。暖かいな、そして……優しいな)
リンと”繋がった”ような感覚がして、イメージをするために閉じていた目をそっと開くと──先程まで手の甲に現れていたリンの守護精霊は役目を果たしたのを分かったかのように霞のように消えて行くのだった。
*
(よし、後はこのまま魔力をリンに流してあげたら──)
『────』
少しずつ、少しずつ──魔力をリンに注ぎ始める。
「ぅ……ん──ぅん? えっと……えっ?」
『リン、ごめん。もう少し、そのままで──』
「う……うん──」
リンの顔はみるみる赤く染まっていくが、同じくらい心地よいのか蕩ける様な表情になっていく。
(後少しだな──)
「ぅ──ん、──はぁはぁ」
ちょっと、リンの口から小さな怪しい声が聞こえてくる気がするけれども──
『──よし、このくらいかな』
完全にリンの体内魔力の欠乏反応が無くなったのを確認しつつ、体調も良くなったのをリンの様子からも見て取り──そっと、手を離す。
「ぁ──」
手を離した際に、少し名残惜しいような……甘えるような声がリンの口から漏れ出たけれども──
「シエル様!」
「シエルくん!」
「「もう、終わりです!!」」
リンとナビの両隣から講義の声が上がり──とりあえず、物寂しい顔を未だにしているリンの頭をひと撫でして立ち上がる。
「……あ──」
そして、最後に撫でられて嬉しそうな幸せそうな顔をしていたリンだったが──自分の置かれている状況を把握したのか、慌てて上着を下ろして立ち上がるのだった。
「シエル──もう俺は何も言わないぞ、ただシエルは……うん、色々と俺は毎回驚かされてるよ」
シュンの言葉を聞きつつ、自分も気恥ずかくなってきて──。
『とりあえず、控室に戻ろうか? リンも大丈夫だよね?』
「う、うん」
リンも気恥ずかしいのか未だに顔は赤かったが──声を掛けられて嬉しそうな表情を浮かべるのだった。
*
そして、皆で控室に戻るのだが──。
シエルが、そしてリンが──試合状況以外にも今の一部始終も動画に撮られており、それが投稿されて──それも人気急上昇になるのを知るのは後の事だった。
coming soon




