『学内対抗戦⑧』
現実とは物語らしくはないのだ
物語とは現実らしくもないのだ
「さっきの戦いは危なかったねぇ」
「うん、そうだね。私も驚いたよ」
「すまない、本来だったら俺が動かないとダメだったのに、対処出来なかった」
リンとマリ、それにシュンも控室に戻り次第、先程の戦闘の感想を零した。
『魔法は”大きな力が全てでは無く、工夫も重要との事”と入学始めの講義で先生が言ってたけれども、その通りだね』
「それにシュン様はどの道、対応は難しかったと思います。シュン様には1人、相手が合わせて仕留めに動いていたので、その対応で魔法の行使も難しかったと思います」
「ナビちゃんは良く見てるねぇ!」
「あ、あぅ。リン様……、あの、ナビは──」
”よしよし”とリンがナビを撫でているのを横目に考える。
(魔法は工夫次第で小さくても脅威になる……)
大きな願いを行使しようとすると、同じく発現するまで、維持する時間も魔力量のコストも、それ相応に掛かるが、戦闘は一瞬なのだ。
(どこかの旧世界の漫画やアニメみたいに、魔法を唱えたりとかを、悠長に待ってくれたりはしないか……)
自分の考えを改めて見直しつつ、先程の戦闘を振り返ってみる。
(色々と反省点があるな──)
「シエル様──?」
ふと、気付いたらナビが心配そうに自分を覗き込んでいた。
『あっ、ごめん。大丈夫だよ、ナビ』
「すみません、心配させてしまいましたか?ナビは上手く動けたと思ったのですが……」
『いや、ナビは良かったよ。ただ実際の戦闘というのは一瞬一瞬の駆け引きが重要なんだなと考えていただけだよ』
「それは父様も同じような事を言っていたぞ。実際の戦闘はいかに強くても、一瞬の判断が命取りになるって」
「私もお爺ちゃんが同じようなこと言ってたかな。魔法を過信してはいけないって。魔法はあくまでも創造や発想が重要で、それを考えて結びつける自身が一番大切だって」
「私も誰かとは言えませんが似たような事は言われました。大切なのは駆け引きと戦況を把握する力だと」
皆が、それぞれ大切な人に言われたであろう言葉を振り返る。
本日、残るは夕方の試合が最後となっており、その時まで先程の試合の反省と、改めて魔法と実戦に関して皆で話し合うのだった。
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