『美しい世界③』
色は沢山あると分からない
だから不幸にしろ一色に染め上げたら
それは──とてもシンプルで綺麗だと
君は笑ってくれるだろうか
(────頭が”ショート”しそうだ)
聞いたことを理解しようとした時、重ねて記憶が戻ってくるというコンボだ。
”かいつまむ”と、こうらしい──。
*
俺──いや、シエルこと自分は国? を移動中だったところ、そこを襲われたらしい。
〝何に?〝──それは俺も思った。
その正体は〝ファンタジー〝に付き物の”モンスター”との事だった。
モンスター? と思った時には……記憶が急激に思い出され──。
大きな”何かが”自分達を襲っている光景が鮮明に浮かび上がってきた。
そして視界が真っ赤に染まる光景と──”母?父?”なのだろうか。
実感が湧かないが……〝何か〝をして自分を守ってくれた事を思い出した。
(あの”白い光”──移動中のあれは……他の皆は──搭乗してた人達は全員、皆……喰われた?)
”白い結界”が自分を守り、モンスターがそれをしつこく攻撃している中で救助隊……いや、軍と言っていたかが駆けつけたが、救助に間に合ったのは自分だけで──ここまで連れて退避するので精一杯だったとのことだ。
”白い結界”は退避し、安全の確保が確認できた直後に役目を果たしたかのように消えてしまったとのことだ。
それから──ここへ運ばれ【一年経過】してるとのこと。
*
父と母は学院の教授? だった……らしい。
その恩恵もあり学院に付随する、この施設で保護をしてくれていたらしい。
(いや、流石に重い……重すぎる)
まるで自分のことのように感じないが、思い起こされる記憶が否応なく──それが”自分=シエル”の事だと突き付けてくる。
(確かに……これは”なまはか”な精神だと受け止めきれないだろう。それに聞きながら思う──この肉体は”幼いのでは?” それに結界……白い? 消えた?)
(「はい──それが私です。シエル様との契約……シエル様に願われて生み出された存在です。あの時は私もシエル様を守るのに必死でした」)
(契約……? 夢? の中のおとぎ話だと──そういうのには何か”供物”──”トリガー”が必要なんじゃ?)
(「はい──シエル様のお父様、お母様が”魔力術式”と”魔力回路”を最大限に行使し、魔力ネットワークに紐づけ……必要な魔力は──あの場では複数……いいえ”大量の魔力”が溢れていました。そして出会ったら最期と言われている禁制のモンスターの存在が居ました」)
(…………)
分かりたくないのに、分かってしまう。
いや、理解をしてしまった。
(…………何名だ)
(「数百は──あの場では命の輝き、そして例のモンスター”白銀の龍”と言われています。最高峰のモンスターの生命の奔流──そして、この世界に生じているモンスターを何処からか発生させているという〝黒い渦〝もあり──私には全てを理解、または解析するのには──あの時では不可能でした。現状では理解、及び解析も可能だと思いますが、シエル様はそのような回答をお望みではないことは理解出来ています」)
「シエルさん……?大丈夫ですか?」
〝また〝だ──顔を、俯かせてしまっていたらしい。
だが、上手く笑えるはずもなく。
俺は……ぎこちない顔をしながら『大丈夫です』と伝えるので精一杯だった。
*
後に分かったことだが──ここは父母が教鞭を奮っていた学院らしい。
そして付随する病院? に近い機関であり──担当医だと思っていた人物は父母が懇意にしていた”ヒューズさん”という歴とした教員であり……ナースだと思っていた女性陣は実習生だった。
”担当医”──”ナース”とナビが言ったのは、自分に分かりやすく説明する為だったらしい。
明日から少しずつ──まずは固形食を食べれるように、そして次は動けるようにリハビリを──と実習生のお姉さんから話を聞きつつ、緩やかに時間は過ぎていったのだった。
シエルは一歩一歩を歩み始める
その歩みは果たして──何処に向かうかは
まだ誰にも分からない
けれども確かにシエルは大きな大切な……一歩を歩み出したのだった




