『学内対抗戦①』
そして、選択の結果が動き始める
選択の先は選択が待っている
物語とは選択の連続なのだ
正解等は無い、けれども、それ故に可能性はいつも開かれている
(回想)
ーーー
≪side:シュン≫
遂に明日が来る。
やるべきことはやったはず。
そして、こうなるとは越して来た頃は考えもしていなかった。
シエルは未だに不思議なやつだ。
そして、凄く頼りになる。
シエルはきっと、もっと強いのだろう。
今日も一緒に模擬戦闘をした際は、もうシエルの動きが追えない時があった。
3日後、バルは決勝まで来るだろうか。
レイさんのこともある。
しっかりしないと。
そして、今度は逃げない。
お父様も言っていた、男として逃げずに立ち向かう時が来るのだろうと思う。
今は1人じゃない。
俺は俺の出来る事をやり通すんだ。
ーーー
≪side:マリ≫
不思議な気持ち。
今の私の状況はきっと、誰しも予想していなかった事だろう。
私の身分の事もそうだ。
皆は受け止めてくれた。
そして、私はきっと、恋をした。
恋とは何かとは、まだ分からないけれども。
最近、どんどんシエルくんを目で追うことが多くなっている気がする。
でも、今はそういう状況じゃないのも知ってる。
バルさん、レイさんを助けないといけない。
そして、きっと背後にはハンネス大将が居て、不穏な気配というか、危険な予感がする。
私のこういった予感は外れた事がない。
万が一は”母親”を頼らなければいけないかも知れない。
きっと、大きな事件が起きれば”中央”が動くだろう、その時は私の出来る事で助けたいとも思う。
そして、そう思ったのはシエルくんを頼ろうと、彼に勇気を貰ったからだ。
リンもきっと、似た気持ちを持ってるだろう。
ナビちゃんは、見ていて分かる。
少しだけ私情も入ってしまっているけれども、私は助けたいという気持ちは変わらない。
明日から本当に運命の日が始まるのだろう。
私の出来る事は全てを出し切ろう、皆を助けるために。
ーーー
≪side:リン≫
怖い。
気付いたら、もう明日になってしまった。
私って、お気楽な方だと思ってたけれども。
自分で思っていた以上に繊細だったみたいだ。
ただ、怖くなるとシエルくんの顔が思い浮かんでくる。
そしたら、心が暖かくなって、勇気が湧いてくるんだ。
そういえば、あのお爺ちゃんとシエルくんが初めて会った時、私が発言しちゃったから。
あの後、シエルくんはお爺ちゃんと、ガイウスさんに一生懸命説明していたっけ。
ふふっ、実はちょっぴりだけ、言っちゃおうかなって思って言っちゃったんだ。
シエルくん自身は気付いてないけれども、結構目立つし、注目の的だし、モテモテさんなんだ。
・・・レイちゃん。
ナビちゃんは大丈夫と言ってたけれども、不安だ。
けれども、タイミング的に勝ち続けて、相まみえる時にしか最大のチャンスは来ないみたい。
確かに、普段から言われて気付いたけれども、何名か怪しい人が随伴している。
お互いに当たれる時は決勝まで勝ち残った時にか来ないのだろう。
レイちゃんを思うと、心が苦しくなる。
そして、バルを思うと、私は人と争うのはきっと苦手なのだろう。
空を飛ぶのも苦手なのも、結構、臆病だからかも知れない。
お爺ちゃんは無理をするなと言ったけれども、けれども私は無理をしたい。
きっと、ここで逃げ出しちゃったら一生後悔すると思うから。
それに1人じゃない。
皆が、そしてシエルくんも居る。
マリのシエルくんの見る目が最近、違うのを気付いてしまった自分が居た。
きっと私も同じ目をしてるんだろうな。
・・・シエルくんは意外と、そういう”女たらし”さんなのかな?
・・・うーん。
ううん、きっと違うかな。
でも、惚れたら負けとは言うけれども、私はそうなると負けちゃったんだろうな。
・・緊張と怖さも取れて来た。
眠らないとね、明日が来る。
頑張らないと。
ーーー
≪バル、レイ≫
「・・・──」
言葉にならない言葉を呟きながら、父親から貰った”ペンダント”を握るバルが居る。
「───」
ただ、身体を抱きしめて。
震えを止めようとしている、レイがそこに居る。
そして、室内には声を発しない、怪しい者たちも居た。
その目は全員、虚ろであった。
ーーー
≪side:ナビ≫
最近、”心”が複雑と思います。
いえ、思う。
私と言う、存在が個が独立していってるのを感じています。
ううん、感じている。
現実化をしているのは、消えるのが怖いから。
最近は睡眠をしている。
眠れるようになっている。
夢を見るようにもなった。
そして、やきもちも焼くようになっている。
けれども、私はマリさんとリンさんの事は仕方ないなと思うのです。
シエル様は結構、女たらしさんみたいです。
離れるようになって、自我も心もどんどん芽生えて行くようになって、シエル様を見る私も少しずつ変わっていってるのが自身でも分かるのです。
うん、分かるのです。
シエル様が私の木剣を見て、違うのに違和感を感じていたのは薄っすらと伝わってきたのを覚えているけれども、それも、私という個が確立してきている影響なのでしょう。
食べるのも最近、ううん、食べるというのが出来るようになってから、好きなのは気付いてる。
そして、シエル様を想う気持ちも、どんどん大きく明確になって来ている。
最初はサポートをしたいと思ってからの気持ちだったかも、今思うと分からない。
これが好きという気持ちなのかな。
好きなのだろう。
シエル様と一緒に居たい、触れ合いたい、助けたい。
シエル様は明日に向けて、色々と考えてるのも伝わってくる。
シュンさん、リンさんの事も思うに、私は助けたいとは思うけれども、それ以上にシエル様が救いたいと願うなら、私は叶えたいと思うのです。
とりあえず、明日からなのですね。
もう少しだけ、今は休める時でしょう。
バルさん、レイさんの位置から、怪しい気配が濃くなっているのが感じる。
きっと、長くは持たないでしょう。
シエル様もきっと感じてるはず。
そっと、手を伸ばして手を握ってみると、握り返してくれる。
・・・私は、やっぱりシエル様が好きなんだ。
この方の為なら、明日も今も、これからも一緒に歩んでいきたいと思うのと同時に、眠りが私を誘ってくるのでした。
ーーー
(バルの方向から、不穏な気配がするな・・)
最初は細い糸だったけれども、最近はその細い糸に混じる、嫌な気配も濃くなっていると思う。
不意にナビから手を握られたので、握り返してあげると、ナビは安心したのか、寝息を立て始めた。
(最近、いや・・少しずつ、少しずつ本当に”人”みたいになってきている)
きっと、言われなければ分からないだろう。
精霊として常に現実化している。
周囲を見てると、基本的には精神の保護も含めて、同化しているのが常識らしい。
けれども、最近になって気付いて来た。
ナビは”消える”のが怖いのだろうと。
そして、今消えそうになっている”レイ”に関しては、薄っすらと助けたいと願っているのは伝わって来ている。
どこか、そんな儚い部分が自分の存在と重ねていたりしているのだろうか?
シュンと、リンはお休みの前まで別れるまで、微かに手が震えていたのに気付いてしまった。
(怖いのだろうな・・)
背後にはハンネス大将は居るのだろう。
ガイウスさんには先程、明日からの事をお願いするメッセージは送らせて貰った。
ドルマンさんからは”リンを頼む、そして、レイの事も”っと、念押しが来ていた。
(ん・・・)
ガイウスさんから返事だ。
”くれぐれも気を付けなさい、そしてリンさんの事を頼むぞ”っと、こちらもか。
どちらにも”出来る限り頑張ります”っと、折り返しをしておく。
眠らないとな。
明日からか、早いものだ。
身体もあれから、出来る限り鍛えてきた。
ナビからも戦術データや、魔法に関しての知識とかのデータも拾ったり、一緒に集めてフィードバックして、身体にも馴染ませている。
隣のナビを見てみる。
安心しきった顔で、寝息を可愛く立てている。
(いつも、ありがとう)
そうやって、髪を撫でると幸せそうに笑顔を浮かべる。
ん・・・。
少しだけ眠気が来たようだ。
自分も眠るようにしよう。
そして、自分の意識は明日に向けて落ちて行ったのだった。
coming soon




