『美しい世界②』
嘘も偽りも無い
それは”美しい”ということでしょう?
「────か?」
「き──え────か?」
(ん?)
「聞こえますか?」
『は、はい』
「おぉ……」
目の前に見える中年男性の背後に居るナースさん? が反応を返している。
俺に──いや、自分に問いかけていた”担当医”なのだろうか?
中年男性に見える人……は安心したような顔で何度も頷いていた。
「シエルさん。どの程度まで……ご自身のことを覚えていますか?」
(ん……?それは──)
思案して気付く──何も知らないと。
今にして思えば、あの現実(?)の世界での自分の──〝俺自身の名前〝さえも分からない。
(本当に夢? だったのだろうか?)
所々……記憶が入り乱れてしまっているのを自身で感じた。
「シエルさん……?」
”担当医”が少し悲しそう?
いや、切なそう……? にしながら再度──俺に確認をしてきた。
(正直に、話そう)
『自分の名前”シエル”以外──思い出せないようです』
その”シエル”という名前? さえ、ナビが居なければ分からなかったのだが……。
(あれ、そういえばナビ……? ナビ? 居るか?──聞こえているか?)
(「はい、居ます。聞こえています! 魔力”回路”に魔力”ネットワーク”──そしてシエル様を中心に私は居ますし、聞こえていますよ!」)
どこか自慢げに──さも嬉しそうな声で、こちらの投げかけより多い言葉で返答があった。
(はぁ……今はどんな状況なんだ、ナビ?)
(「えっと、すみません。今は──うまく説明出来ないです。それにシエル様、これから深刻な話になると思いますが……どうか、覚悟をしてください。そしてシエル様は耐えきれる心の強さになっていると思います。折を見て夢の話も──シエル様の疑問も順を追ってしっかり説明致します。なので……」)
「シエルさん?シエルさ……ん?」
”ふと”顔を下げてしまっていたようだ。
それが尚更心配させてしまったようで担当医? 及びナース? 達が自分を心配そうに見てくるのが分かった。
そしてシエルは深刻な話を告げられることになる
耐えきれる心をシエルは持っているのか
心が成長したのかは──これから分かる事




