『望まない限り始まらない物語』
この物語の終着点は何処になるのかは”まだ誰にも分らない”
だが、常に選択は目の前にあり、その結果”終着点が生まれている”
何かが始まるかもしれない。
何も始まらないかもしれない。
そんな、まだ〝始まる前〝の物語。
*
〈某都内のオフィスにて〉
『──あぁ、くそっ!』
見た目、齢20代後半だろうか?
口から、怨嗟の言葉を吐き出している男が居た。
『何も上手くいかない』
机の上には、まだ終わる事を知らない書類の城が、これ見よがしに築かれている。
(どこで人生を間違えたのだろうか)
男はそう思いながら、顔を上げ意識を手放すように目を閉じた。
(やれることはやったはずだ……)
そう、1人っきりの事務所で男は誰にも聞こえる事は無いだろう独り言を呟く。
『いや、本当にやれていたのか?』
そして、また自問自答を癖のように始める。
『はぁ……どうして毎回、こうやって悩むのかね』
自分の思考回路に疑問を思い浮かべながらも、甘い考えと、自分にとって都合の良い感情にて思考を混ぜ合わせては、自身の感情を落ち着かせていく。
『あぁ……でも、やっぱりダメだ──』
だが、やはり効果は薄く。
また1人、終わりの見えない苦悩の連鎖に囚われ始めていた。
(どうして、こうなったのだろうか?)
(本当は──どうなりたかったのだろうか?)
思考を手放しそうな頭の中、男は〝また過去を振り返る”ことをし始めた。
そして、男は思考の海へと落ちていく