第2章-4
「だって、止まらない……」
「私がそばにいます。ずっとお傍におります。そのために私は生まれて来たのですから」
大きな、守護精の大きな手がアサノハの頬を包み込む。こつんと、二人の額が触れ合った。
「本当に?」
「ええ。私はあなたと共に生き、あなたと共に逝くのです。あなたの側にいます。あなたを一人にしたりはしません。ずっと一緒にいます。あなたのために私はいるのですから」
たまらなくなって、アサノハは守護精の首に手を回して抱き付いた。
「本当に側にいてくれる? ずっとずっと一緒に。父様や母様のようにいなくなったりしない?」
「ずっと側におりますよ。そのために私は生まれたのですから」
守護精の手がやさしくアサノハの背を叩く。アサノハはさらに抱き付いた。
「アサノハ様」
驚いたように、少女の名を呼ぶ。すると、アサノハはふるふると首を振った。
「アーシャと呼んで」
「アサノハ様」
「ずっと側にいてくれるというのなら、父様や母様のようにアーシャと呼んで。お願い」
守護精は少し戸惑ったようだ。それでも、一瞬の沈黙ののち。
「アーシャ」
やわらかな声が、アサノハを呼ぶ。それは父とも母とも違う、彼だけのやさしい呼び方に聞こえた。それが悲しくもあり、うれしくもあり。アサノハはまた泣き出してしまった。
「アーシャ、泣かないでください。泣かせるために私はここにいるわけではないのですから。泣かないで、アーシャ」
「行っちゃいや、行っちゃいやよ。ずっと側にいて。私の側にいると約束して」
泣きじゃくりながら、アサノハは訴える。その背をやさしくなでながら、守護精はうなずいた。
「もちろんです、アーシャ。あなたは私の主なのですから」
泣き止まない幼い主をなだめながら、守護精は何度も何度も繰り返した。