第5章-8
「クオン、といったか、そなたも何故アサノハを選んだかわからないのだろう」
ムラクモはアサノハの隣の次代に矛先を向けた。クオンはだが、首を振った。
「私はアーシャを守りたかったのです。ただずっと側にいたかった。それゆえ、アーシャを主としたのです」
それを聞いて、ムラクモは呆れたように次代を見、それから自身の守護精を見やった。
「守護精は皆、そうなのか。お前も私を守りたいと思っていたのか」
一瞬、イザヨイは目を丸くして固まったが、すぐに笑い出した。
「それはありませんねえ。あなたに対してどのようなことを思ったとしても、守りたいと思ったことはありませんね。あなたは十分自分を守れる人ですから」
「それは褒められていると思っていいのか」
「はい、むろんです」
にっこりと微笑んでイザヨイは彼の主を見た。そのまなざしはどこまでもやさしく、暖かいものだった。ふと、アサノハはそのまなざしを見たことがあることに気づく。それはクオンが彼女を見るときに見せるまなざしと同じものだった。
だが、二人に間にはアサノハとクオンの間にはない何か確かなものが感じられた。それは長い時をかけて気づきあげられた信頼、とでもいうものか。出会ってまだ1日すら経っていないアサノハとクオンにはまだはぐくまれていないなにか。それをアサノハは羨ましく感じるとともに、自分とクオンの間にもできるといいな、と思う。
そんな彼女を見つめていたムラクモが、なにやらまなざしでイザヨイに合図をした。イザヨイは心得たようにうなずいて、クオンに向かって微笑んでみせた。
「さて、クオン、我らが主方はお話があるようです。私たちはしばらく席を外しましょう。私もあなたに話があります」
「お待ちください、私はアーシャのそばを離れるわけには……」
クオンの抵抗をものともせず、イザヨイが微笑みを浮かべたまま彼の腕を取った瞬間、二人はふっとかき消えた。かすかな痕跡が漂うものの、跡形もなく消えてしまい、アサノハは呆然とした。
「あれらのことは気にせずともよい。あれらは基本的に同じもの故」
「同じもの……」
アサノハにはそうは思えなかった。確かに同じ色の髪と瞳を持ち、雰囲気もまた似通っているが同じものと言われるほど、似てはいないような気がした。
その思いに気づいたのか、ムラクモが続ける。
「あれらはもとはと言えば、一本の剣の精霊だからな。そもそもが同じものだ。だが、クオンは生れ出たばかり、ひよっこもひよっこ、何も知らない無垢なるものでもある。イザヨイが全てを知っているのとは対照的にな。クオンはそなたの側でそなたと共に成長していく。やがて、私が逝き、イザヨイもまたこの次元を離れるときまではな」




