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王国の守護精  作者: 久保 公里
第3章

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第3章-2

 間を置かずして、衛兵が何人かと侍女のサクラとミズキが飛び込んでくる。彼らは慌てたように部屋の中を見渡した。アサノハが寝間着のまま立っているのに気付くと、一礼した。


 「アサノハ様、何かございましたか?」


 「ロウバイさまも」


 「何事でございますか?」


 口々に質問を投げかけてくるのに、アサノハはにっこりと笑いかけた。


 「おはよう、皆。心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ。ばあやが虫に驚いて大きな声を上げただけなの。窓を開けたら逃げて行ったわ。本当に大きな虫だったの。私もびっくりしちゃった」


 おどけたように言うアサノハに、侍女の二人はほっとした様子を見せた。衛兵たちも緊張を解いたようだったが、それでもあたりを見渡しました。


 「なにもないのでしたら、よいのですが。一応お部屋を確認させていただきます」


 えっ、とアサノハは驚いた。うろたえているのを隠して、平静を装う。


 「大丈夫よ。もう虫はないないと思うわ」


 「ですが、我らもまたお役目でございますので。それに、虫がまだいてはいけませんからね。失礼いたします」


 と、衛兵たちはざっと部屋を改めていく。アサノハははらはらとしながら、彼らを見ているしかなかった。衛兵のひとりが寝台に向かうと、アサノハは思わず口を開けたが、それとは知らぬ衛兵は無遠慮に幕を開いた。一瞬、アサノハは目をぎゅっとつぶったが、誰何の声も聞こえてこない。恐る恐る目を開くと、寝台の上は乱れた寝具があるだけで、そこに人の気配はなかった。


 「さあさあ、そのへんでよいでしょう。淑女の寝室を見て回るなど、無礼にも程がありますよ」


 ロウバイが腰に手を当て、落ち着き払ってそう言う。アサノハは飛び上がるように驚いて、乳母を見やった。その視線に気づいた老女は軽くうなずいて、片目をつむってみせる。


 「虫に驚いて、皆に徒労をかけさせたことは謝りますよ。申し訳なかったわねえ。とっても大きな虫だったのよ。この年で初めて見たわ。どこから入ってきたのかしらねえ。嬢様がとっさに窓を開けてくださったから、逃げて行ってしまってほっとしましたよ。さあさあ、もう虫はいなくなってしまったんですからね、あなたたちもさっさと持ち場に戻りなさい。長いこと離れていると、怒られますよ」


 さあさあ、とロウバイは衛兵たちの背を押すようにして部屋の外に追い出す。衛兵たちも部屋の中に不審者を見なかったために、渋々ながらも出て行った。


 ぱたんと音を立てて扉が閉まり、なんだったんだ、と衛兵たちがぼやきながら遠ざかっていく。それを確かめてから、ロウバイは振り返って彼女の育て子を見やった。


 「嬢様?」


 アサノハはあたりをきょろきょろと見まわしていた。その表情は不安に彩られている。何かを探しているようだった。


 「アサノハ様?」


 名を呼ばれてようやく、アサノハは我に返ったようにロウバイを見やった。


 「どうなされました?」


 「いなくなってしまったの。さっきまで確かにいたのに。それともやっぱり夢だったのかしら……」


 アサノハは戸惑ったようにロウバイの服の袖を握った。ロウバイが驚いたように微笑む。すこし前までなら、アサノハは抱き付いて泣いていたところだ。だが、ここ数日の出来事が少女をほんの少しだけ大人にしていた。


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