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17、アーディが裏返ったァッッ!

     アーシュ視点


「ひっ、く、暗くて全然前が見えないけど大丈夫なの?」

「きゅっ」

 ブフーッ!


 返事をする声の感じからすると、大丈夫っぽい……のかな?


 ていうか、スライムの鳴き声を聞くのは初めてだし、馬の嘶きもよくわからない。


 アーディは大丈夫かな……。

 妖魔憑きが悪化してないといいけど。


 カズヤさんたちと別れてからずっと混乱しっぱなしで、始終こんなことを考えてしまう。


 一時間以上経った今でもまだ、様々な思いや感情、思考が頭を駆け巡っている状態だ。


――今日はいろいろあり過ぎた。


 あたしとアーディには、両親がいない。

 あたしが一二歳だった五年前に農業を営んでいた父を、三年前に仕立て屋で働いていた母を、同じ流行病で失ったからだ。


 以来、あたしは幼い頃から持っていた【裁縫Lv.1】を生かして、一四歳の時に母が勤めていたのと同じ仕立て屋で働きはじめ、当時七歳だったアーディを養ってきた。


 生活は決して楽ではないものの、一年前にはレベルアップを果たして、重要な仕事もまかされるようになった。

 そして、いつかは独立して自分の店を構えることを、現実的な夢として抱くことができるところまできた。


――そんな時、アーディが妖魔憑きになった。


 最初は風邪をひいたのかと思った。

 しばらくして、身体に闇のような漆黒の斑点が浮き出るようになり、それが徐々に全身へひろがっていった。


 それでもまだ妖魔憑きだとは信じられなかった。


 やがて顔にまで斑点が見えるようになるに至って、妖精薬でなければ治すことのできない病だと認めざるをえなくなった。

 けれども、妖精薬を買う金などない。


 どうしよう…………。


 困り果てていた時、あたしは以前、街で聞いた噂を思い出した。


 ある冒険者パーティーが、スライムの森で妖精を数匹捕らえたが、狂乱状態の魔物の集団に襲われ、逃がしてしまったという話だった。

 その際、ひとりの旅人が死んだともいわれている。


 あたしの決断は早かった。

 可能性は無きに等しいが、今の自分には他にアーディを助ける方法を思いつけない。


 あたしは倉庫の奥にある、若い頃の父が使っていたという剣を持ちだした。


 クルーシュ王国西部にある商都・ティールタへ行く行商人の馬車に乗せてもらい、その途中、スライムの森近くで降ろしてもらった。


 無我夢中で森を彷徨い、妖精を捜した。

 そして、いくらも経たないうちにゴブリンに襲われ、そこをカズヤさんと妖精たちに助けられた。

 カズヤさんに妖魔憑きを治せるといわれ、それを信じて現在、スライムが操る馬に乗って、自宅にいるアーディの元へ向かっている。



――とにかくいろいろありすぎて、まだ頭が追いつかない。


 わかるのはカズヤというひとが、妹の妖魔憑きを治せるかもしれないということ。


 現在、それを信じてルドルフという名の馬に乗り、スライムに手綱をまかせて、妹の許へ駆けつけているということ。


 このふたつだけだ。


 否、信じたというのは正確ではない。

 なんとなく希望の光がかすかに見えたような気がする、という程度のものだ。


 あたしはそれに縋ったに過ぎない。

 また、そうしたのには、カズヤさんとリーシャという女の子の誠意、それになんといっても妖精たちから向けられた無償の愛ゆえだった。


 妖精たち、いや、妖精さんたちはあたしをゴブリンから守ろうとしてくれた。

 あたしはそんな優しい妖精さんたちを、薬にするために捕らえた。


 なのに、妖精さんたちはそれに怒るどころか、なおもあたしを助けようとしてくれた。

 ポカリがなんとかとかいって、カズヤさんを叱りつけさえした。


 そして、あたしの迷いを吹き払ってくれた、七葉という妖精さんの言葉――。


 思い出すだけで涙が零れ落ちそうになる。

 同時に、心がポカポカと暖かくなっていく――。


 妖精さんとはなんと優しく、なんて愛らしい生き物なのだろう。

 いくら妹を助けるためとはいえ、そんな妖精さんを殺そうとしていたなんて、今となっては自分でも信じられないくらいだった。


――妖精さん……。


 あたしが彼らを信じた理由は他にもあった。


 会話の途中、妖精さんの放ったあの言葉………………。


――なんだったっけ……たしかバランスの良いとか、ヤモトマとかいってたような……。


 どういう意味かはよくわからない。

 けれども、なにか人間には計りがたい、深遠な意味が隠されているような気がする。


 まるで自分たちの未来を指し示しているような、神秘的ななにかが……。


 あたしはその深淵な感覚にも突き動かされたのだった。


     *


 月明かりの下、すでに森を抜けていた。


「あっ!」


 自宅のあるトルド村の近くまで来たことに気づいた。


「きゅっ?」

「うん、もうすぐそこまで来てるわ。あ、止めて!」


 ぷるるんちゃんが手綱を引き、お馬さんが止まった。

 一〇〇メートルほど先にトルド村がある。


 さらにその先には、ラージギル侯爵領の中心地にして、クルーシュ王国東部最大の都市・バルドワールの城壁が見える。


 村には中と外界を隔てる城壁などない。

 そのかわり、戦争や魔物の大量発生といった緊急事態の際は、バルドワール内へ逃げこめるようになっていた。


「お馬さんはここで待ってて。アーディを連れてすぐに戻ってくるから」

「ブフー」


 あたしはお馬さんから降りた。


「きゅー」

「ええ、こんな時間にアーディを連れだすところを見られたら変に思われちゃうから、誰にも気づかれないようにしないとね」


 とはいえ現在の時間帯なら、足音を忍ばせれば大丈夫だろう。

 あたしは両手に貼りついたままのぷるるんちゃんとともに、トルド村へ駆けて行った。

 村の中では音を立てないよう気をつけて歩いた。


 程なく自宅についた。

 灯りのない真っ暗な家の中。

 奥の部屋に入ると、アーディの少し苦しげな、せわしない寝息が聞こえてきた。


――よかった。まだ生きてる……けど、苦しそうだわ。


 あたしは考えないようにしていたが、心のどこかで最悪の事態を想像していた。

 まだ妖魔憑きになってから三日とはいえ、いつ症状が悪化して死ぬか、魔物に変化していてもおかしくないのだ。


 でも、まだ全然安心できない。

 アーディの傍へそっと近づいた。


「アーディ、起きて」

「んん……お姉ちゃん?」

「そうよ。アーディ、今から行かなきゃいけないところがあるの。一緒に来て」

「今から? 眠いししんどいですー」


「大丈夫。私がおんぶしていくから、アーディは寝てていいのよ」

「寝てていいです? んーわかったです」

「それじゃ、私の背中に乗って」

「着替えなくていいです?」

「それは後でいいから」

「ん……」


 アーディが素直にあたしの背中に覆いかぶさった。

 両手で妹の両足を抱えこんだ。


「私の肩に手をまわして」

「きゅー」

「え?」


 いきなりぷるるんが泣いたので、あたしは戸惑った。


「なに、今の可愛い声? お姉ちゃんです?」

「今のはぷるるんちゃんよ」

「ぷるるんちゃん?」

「アーディを助けてくれる精霊さんよ」

「精霊さん? どこにいるです?」

「今は暗くて見えないけど、アーディの傍にいるわ。ぷるるんちゃん、どうしたの?」

「きゅー」


 ぷるるんちゃんは身体をあたしの両腕に沿って、うにゅうにゅと這わせてきた。

 アーディの背中や腕に絡みつき、紐でくくりつけたような状態になった。


「アーディが落っこちないようにしてくれたのね? ありがとう、ぷるるんちゃん」

「ぷるるんちゃん、ありがとです」

「きゅっ」


「アーディ、村のひとたちに気づかれちゃまずいから静かにしててね」

「うん、わかったです」


 あたしは立ち上がり、そっと部屋を出た。

 朝方、家を出た時よりアーディの声に張りがなく、さらにゆっくりした喋り方になっている。

 病状が進行しているのだ。


 もっと急がないと!


 幸い、誰にも見られることなく、ルドルフちゃんの元へ辿り着いた。


「このお馬さんに乗って、アーディの病気を治してくれるお医者さんのところへ行くのよ」

「お姉ちゃん、お馬さんに乗れたです?」

「ぷるるんちゃんが全部やってくれるからね」

「ぷるるんちゃん、すごーいです!」

「きゅっ」


「ブフー」


 ルドルフが早く乗れとばかりにしゃがんだ。

 あたしはルドルフちゃんにまたがった。


「アーディ、すごく揺れるけど、しばらくは我慢してね」

「うん、お馬さんに乗るのは初めてだから嬉しいです」

「ならいいけど。それじゃぷるるんちゃん、ルドルフちゃん、行ってちょうだい」

「きゅっ」

「ヒヒーン」


 ルドルフちゃんは勢いよく駆けだした。



     *****


     カズヤ視点


「ヒヒーンッ」


 ルドルフが俺の前で止まった。


「アーディを連れてきたわよ」


 アーシュがぷるるんの助けを借りてルドルフから降りた。

 背中に担がれている幼い少女は、目を閉じている。


 眠っているようだ。


「こっちへきてくれ。ルドルフ、ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ」

「ブフー」


 俺は洞窟のテント内へアーシュを案内し、敷いてあった布団の上にアーディを寝かせた。


 当然のことだが、アーディはアーシュとよく似た、とても愛らしい少女だった。

 将来は間違いなく アーシュのように大勢の男の心をざわめかせる美少女に育つだろう。


 これは絶対に助けねば!


 早速【診察】した。


     *

名前:アーディ・ディティヤ

種族:人間

主属性:光

従属性:地

技能:裁縫Lv.1

*妖魔憑き(【治療Lv.3】で完治)

     *


 うん、問題なさそうだ。

 あ、この娘も裁縫ができるのか。

 これはありがたい。


「【治療Lv.3】」


 俺は横たわったアーディに手をかざした。

 エネルギーが俺の手からアーディへと流れていくのを感じる。


「ああ……アーディの顔が……」


 アーディの顔の三分の一ほどを覆っていた闇のような黒班が、どんどん薄れ消えていく。

 その光景に、アーシュが驚きの声をあげた。


 やがて、エネルギーの流れが止まった。

 もう一度【診察】した。


     *

名前:アーディ・ディティヤ

種族:人間

主属性:闇

従属性:地 水

技能:裁縫Lv.1 飼育Lv.1

     *


「治ったぞ」

「ホント!?」

「ああ。ただし、前にもいったとおり主属性が闇になってるし、どういうわけか従属性も地属性だけだったのに、水属性まで加わってて、おまけに【飼育Lv.1】とかいう技能も使えるようになってる」


「【飼育Lv.1】?」

「たしか、動物や虫、もしかしたら魔物も上手く飼育できる技能だったはずだ。あとで『魔術大全』かなにかで調べてみるよ」


 リーシャの時もそうだったけど、治療術で妖魔憑きを治すと、副作用で新たな技能を習得することがあるみたいだなあ。


「信じられない……妖魔憑きがこんな簡単に……」


 呆然と呟くアーシュ。


「んん……あれ、お姉ちゃん、どうしたんです?」


 アーディが目を覚ました。


「アーディ、身体はなんともない?」

「身体? うん、なんとも……あれ?」

「なに!? どこか痛いところでもあるの?」

「ううん、なんだかすごく身体が楽になった感じ……おじさん、誰です?」


 アーディは俺を見た。


「お、おじっ!?……俺はカズヤ・ユキミヤ。君の妖魔憑きを治した治療術師だ」

「えっ、妖魔憑きを治してくれたんですー?」

「ああ、起き上がって身体を見てごらん。黒くなってたところが綺麗になってるよ」

「嘘ですー?……」


 アーディは上半身を起こし、服をはだけて自身の腹部を見た。

 さらに腕や足も確かめた。


「あ、ホントです! お姉ちゃん、妖魔憑きが治ったですー!」

「アーディ!」


 アーシュは妹をギュッと抱きしめた。


「お、お姉ちゃん!?」

「よかった! 本当によかった……」


 アーシュはぽろぽろと涙を流した。


「うん……ありがとです、お姉ちゃん……おじさんもありがとです……」


 アーディも涙を流しながら、姉を抱きしめかえした。


「カズヤさん、よかったですね」


 リーシャも貰い泣きしている。


「うん」


 俺は泣きはしないものの、人助けができたことに感動していた。

 これだけでもこの世界にきた甲斐があった。

 そう思えるくらいだった。


 俺をここへ送り出した女性は、チートのような能力を授けるといっていた。

 それは期待していたのとは違っており、若干、がっかりしたりもした。

 けど、今は心からあの女性に感謝していた。


 リーシャとアーディ、そしてアーシュを苦しめていた妖魔憑きは、この世界の誰にも治せない。

 唯一、俺だけがこの病気を治す能力を持っているのだ。


 そのおかげでリーシャを救い、アーディを助け、アーシュに喜びの涙を流させている。

 本当に何物にもかえがたい、最高のチート能力を授けてもらった。


 俺は心からあの女性に感謝した。


「カズヤさん、リーシャさん、ぷるるんちゃんとルドルフちゃん、丸猫さんや蜘蛛さんたちも、本当にありがとう。感謝してもしきれないわ」


「そんなのは気にしなくていいよ。俺の治療術は努力して得たものじゃなくて授かったものだし。それと、さん付けもやめてくれ、呼び捨てでいいよ。

それより、今後のことを考えよう。今いったように闇属性になってしまったから、もうアーディは村へ帰れないし、街へも行けなくなったんだからね」


「え? お姉ちゃん、私、もうお家に帰れないですー?」

「うん……」


 アーシュが哀しげな表情を浮かべた。

 そこへ、


「アーディちゃん、哀しむことはないでち」


 妖精さんが割って入った。


「え!? え!? もしかして、妖精さんです?」

「そうでち。あたしたちは妖精でち」

「アーディちゃんは今日からここで、あたしたちと一緒に暮らすでち」

「あたしたちがお姉ちゃんになるでち」

「リーシャちゃんもお姉ちゃんになるでち」

「カズヤはお父さんでち」

「ぷるるんちゃんとまるるちゃん、ルドルフちゃん、クモスケちゃんとカブトンちゃんも兄弟姉妹でち」

「きゅっ」

「にゃー」


「え、ぷるるんちゃん? 丸猫さん?」

「きゅー」


 ぷるるんがうにゅうにゅ、とアーディに近づいていった。

 アーディは手を伸ばして、ぷるるんを抱きあげた。


「きゅっ、きゅー」

「ぷるるんちゃん、可愛いです」

「にゅー」


 まるるが不満げに鳴いた。

 自分よりぷるるんに関心が向けられたことが、気に入らない様子だった。


「あ、丸猫さんもすごく丸くて可愛いですー」


 アーディが慌てて不満げなまるるをモフッた。


「ププッ、可愛さではぷるるんの勝ちみたいだな」

「にゅっ、シャーッ!」

「ひっ、ただの冗談だから威嚇するのはやめろ!」


「スライムさんもたくさんいるでち」

「スライムさんはあたしたちを守ってくれてるでち」

「ゴブリンさんも仲間になったでち」

「ゴブリンって、あの時の? 大丈夫なの?」


 アーシュが困惑する。


「ああ、詳しいことは後で説明するけど、裏切ったりすることは絶対にないよ」

「いざとなったらゴブ〇レごっこをやるでち」

「だから大丈夫でち」

「ゴブリンさんもあたしたちを守ってくれるでち」

「皆、友達でち」

「だから寂しくないでち」

「毎日すごく楽しいでち」

「明日から毎日遊びまくるでち!」


 妖精さんたちがアーディに群がり、膝や肩の上に乗った。

 皆が微笑みかけ、アーディも嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「お姉ちゃん! お姉ちゃんも妖精さんやぷるるんちゃんたちと一緒に住むんです?」

「私は……」

「そうだな。アーシュもここで一緒に暮らしてくれてかまわない、というかそうしてくれるとありがたいくらいなんだけど、そうすると村で変に思われるんじゃないか?」

「ええ。アーディが寝こんでることも知られてるし、間違いなく妖魔憑きを疑われてると思う」


「急にいなくなったら妖魔憑きで死んだか、魔物になったと思われるだろうな」

「それに街で仕事もしてるから、急にアーディがいなくなった上に仕事も辞めたら、なんて思われるか……」

「どんな仕事をしてるんだ?」

「仕立て屋で働いてるの」

「ああ、そういや【裁縫Lv.2】を持ってたっけ。うーん……じゃあ、まずはアーディが村から出て行った理由を考えないといけないな。たとえば、病気の療養で親戚に引き取られたとか」

「……母がキシーラ公国の出身だから、それでなんとかごまかせるかも」


「で、結局、どうなるんでちか?」

「つまり、アーシュもここで暮らすというのは無理でも、時々訪ねてくるくらいはできるってことでいいのかな」

「ええ。けどその場合、ルドルフちゃんを借りることになるけど」

「ああ、それは……いや、ルドルフを他人に見られるのはまずいか」

「なにか問題でもあるの?」

「いや、まあそれについてはまた後で考えることにして、とりあえず今はアーディが助かったことを喜ぼう。面倒なことは明日話しあえばいい」

「そうね。皆、本当にありがとう」

「ありがとーです!」


 姉妹が頭を下げた。


「アーディをよろしくね。私もできるだけここへ来るようにするから」

「ああ、こちらこそよろしく」

「よろしくお願いします、アーシュさん、アーディちゃん」

「よろしくです」

「「「「「「「「「「よろでち!」」」」」」」」」」

「きゅっ」

「にゃー」

「ヒヒーンッ」


 いつの間にやら洞窟の傍にきていたルドルフも嘶いた。


 わしゃ!

 クィィ!


「きゃっ、蜘蛛さんとカブトムシさんです!?」


 アーディは俺の頭と肩に乗って挨拶した二匹に、怯える様子を見せた。


「ああ、この子たちがクモスケとカブトンだ。大切な仲間で俺たちを守ってくれてるんだ。アーディのことも守ってくれるから、仲良くしてあげてくれ」

「ふーん、よろしくです、クモスケちゃん、カブトンちゃん」


 アーディが素直に頭を下げた。


 わしゃわしゃわしゃっ!

 クィィィィィィ!


 あまり怖がられなかったことが嬉しかったのか、二匹の蠢きが普段の三倍激しくなった。

 それを見て、アーディの顔がわずかに引きつったが、すぐ笑顔になった。

 アーディはこの年齢でもう気遣いができるらしい。


 善い娘だ。


「やったでち!」

「家族がふたり増えたでち!」

「宴を開くでち!」

「呑めや歌えやでち!」

「そうしたいとこだけど、もう夜も遅いから、ジュースを飲むくらいにしておこうか」


 ということで、俺たちは洞窟の外に出た。

 周囲を【灯火】で照らし、テーブルと椅子を置いた。


【収納】してある柑橘系のジュースをコップに注いで、皆に渡した。

 ルドルフとクモスケは水、カブトンは砂糖水だ。


「それでは、アーシュちゃんとアーディちゃんが家族になってくれたことを祝して……乾杯でち!」

「「「「「「「「「でち!」」」」」」」」」

「「「「乾杯((です))!」」」」

「きゅっ」

「にゃー」

「ヒヒーンッ」

 わしゃ!

 クィィッ!


「よく冷えてて美味しい」

「凄く美味しいです」

「冷えた状態で【収納】してあるからね。洞窟暮らしだけど今のところ食事には不自由してないから、その点では安心してくれていいよ」

「明日はカレーを食べさせてあげるといいでち」

「カレー?」

「凄く美味しい料理です」

「インド人は天才なんでち」

「インド人?」

「インド人を右にでち」

「……よくわからないけど楽しみにしてるわ」

「楽しみにするです」



 その夜、アーディが眠気に負けて床につくまで、話が絶えることはなかった。

評価をしてくださった方、ありがとうございます。

やばいくらい読まれていない中、本当に励みになります。


あまり物語と関係のない話を載せるのはよくないかなと思うのですが、感謝の言葉をお伝えするためには、ここに書くしかないので……。


読んでくださっているすべての皆さん、本当にありがとうございます。

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