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海の国、コンフェッシオン

海の国

ご機嫌よう。リンネアル・サント・エルドラドです。今日はコンフェッシオンの闇の沼地を浄化しに行きます!


コンフェッシオンは別名海の国ともいわれる、美しい海とそこに住む生き物が売りの国です。世界的なブランドを誇る魚介類は、ほとんどコンフェッシオンが産地だったりします。しかしこの六年、闇の沼地が美しい海沿いの街、パラディース・アウフ・エールデンに突如現れたため、パラディース・アウフ・エールデンは閉鎖され、パラディース・アウフ・エールデン以外の地区は問題なく暮らしているといいますが、パラディース・アウフ・エールデンの近隣の地区はいつも魔獣に怯えて過ごしていると聞きます。


今回もみんなと協力して、パラディース・アウフ・エールデンを救いコンフェッシオンに安心を取り戻してみせます!頑張ります!


「リンネ。今日はコンフェッシオンに行くんだろう。これで土産を買ってくるといい」


ティラン兄様が大金貨という小さな領地くらいは買える貴重な金貨をくれます。


「え?いいの、ティラン兄様?」


「ああ、好きに使え」


「ありがとう。じゃあ、行ってきます!」


「いってこい。待ってるぞ」


転移魔法で、コンフェッシオン国王陛下の元へ行きます。


「…聖女様、ですか」


コンフェッシオン国王陛下は今までの国々の国王様とは違い、落ち着き払っています。


「大国エルドラドの百合姫様が我々を無償で助けてくださるとか?そんな虫のいい話が本当にあるのでしょうか?まさか闇の沼地の浄化と引き換えに我がコンフェッシオンを属国化しようとか?」


コンフェッシオン国王陛下と同様、臣下の皆さんも冷ややかな対応です。


「聖女様。もしそういうことであればお帰り願いたい」


「ちょっと!リンネを馬鹿にしてるの!?リンネはそんなことしない!みんなのために心を砕いて闇の沼地を浄化して…!」


「はい、わかりました」


「リンネ!?」


「この闇の沼地の浄化に対して、何の対価も要求しないと一筆認めます」


「…!」


王族が一筆認める。これはすごく重い意味を持つことです。


「…。では、こちらに」


臣下の方が紙とペンをくれます。


「…書きました」


「確かに、受け取りました」


「しかしまあ、なんと大胆な。交渉次第では本当に我々を属国にもできたでしょうに」


「そんなことのために聖女になったわけではないので」


私の言葉に、コンフェッシオン国王陛下は握手で応えます。


「ヴァイスハイト王太子殿下。素晴らしい婚約者をお持ちですな」


「我が愛する自慢の婚約者ですから」


二人も固い握手をします。


「失礼ですが、他の皆様は…?」


みんなを紹介します。


「こちらは我がエルドラドのターブルロンド辺境伯令息の、ノブルです」


「コンフェッシオン国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」


「これはご丁寧に。よろしくお願いします」


「こちらは我がエルドラドのファータ男爵令嬢の、ミレアです」


「コンフェッシオン国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」


「ご機嫌よう。お嬢さん、どうもありがとう」


「こちらは我がエルドラドの宮廷魔術師のレーグルです」


「…さっきのこと、俺はまだ許してないから。リンネに謝るまで絶対許さない」


王族が謝るっていうのはよっぽどのことでもない限り難しいよ、レーグル。


「…左様で」


「こちらは私の護衛騎士のフォルスです」


「ほう。つまり聖女様は我々などの協力は求めないと」


「…さっきから失礼じゃないですかね」


「二人とも喧嘩腰にならないの。では、行ってきます」


私達はパラディース・アウフ・エールデンへ転移魔法で移動します。…すると、そこは六年前まで栄えていたとは思えないほど朽ち果てていました。魔獣はいつもと同じで物陰に隠れています。そしていつもと同じで私達を獲物だと思ったのかじりじりと迫ってきます。


「じゃあ、みんなお願い!」


「はい、王女殿下!」


「俺正直あいつらのためになにかするとか死ぬほど嫌なんだけど」


「俺もです。王女殿下に対してあの様な態度…」


「まあ、気持ちはわかるよ」


「だが、リンネ様への不信を解くためにこそ私達が頑張らないといけないんだ」


「…ふん。リンネのためだからね!」


みんなと声をかけあい、魔力を私に回してもらいます。私はシュパリュへ魔力を回しつつ、シャパリュに命令をします。


「怪猫シャパリュ。妖精の王。…すべての妖精の力を束ね、魔獣どもを殺しなさい。…屠れ」


シャパリュは私の命令に、ちょっと不満そうににゃおーんと返します。シャパリュもさっきのやり取りが面白くなかったようです。しかし、ちゃんとパラディース・アウフ・エールデン全体に響くようににゃおーんと大声を出します。すると、水属性の妖精しかいないはずのパラディース・アウフ・エールデンは、闇の沼地から出た瘴気を癒すように暖かな光で満たされます。シャパリュが光属性の妖精を呼んでくれました!


「…やっぱり、シャパリュも納得いってないよね」


「わかる。俺あの国王殴らなかったの相当我慢したし」


「…レーグル、さすがにそれは」


「おや、珍しく僕も同じ気持ちだよ」


「もう、ヴァイス王太子殿下、レーグルさんを焚きつけちゃダメです!」


「いや、流石に俺も自重するから」


「…すみません、俺実はあの一瞬、剣に手が伸びました。どうにか堪えましたけど」


いやいや、みんな不敬が過ぎるよ。


みんなが不穏な話で盛り上がる中、シャパリュはそのまま、四方八方に駆けていきます。そして、パラディース・アウフ・エールデン全体から魔獣たちの悲鳴、絶叫が聞こえ、シャパリュとフォルスのおかげで魔獣が粗方片付いた頃には、妖精達の光は眩いほどのものになります。そして…。


「…闇の沼地が消えたな」


「よっしこれでこの嫌な国から離れられる!」


朽ち果てていた街並みもすっかり綺麗になっています!


「みんなそんなに嫌がらなくても、国王陛下も必死なんだよ。この国、自然に恵まれている分他国からの侵略に何度も晒されてるし」


「何言ってるのさリンネ。君が頑張ってるのに水を差したのはあっちだよ」


「そうですわ!王女殿下はもっと怒ってください!でもフォルスさんとレーグルさんはちょっと落ち着いてください!」


「ありがとう。でも、みんなが怒ってくれるから私は別に気にしてないよ」


「…王女殿下」


「まあ、リンネがいいならいいけどさ…」


「リンネ、我慢はしなくていいからね」


「私も愚痴を聞くくらいならできますよ。なにせ私はリンネ様のお話相手ですから」


みんなにわかったわかったと首を縦に振る。


「さて、ルリジオンの教皇様に報告に行かなきゃね。…今回は、コンフェッシオン国王陛下への報告は教皇様に任せようか」


「あら、ヴァイス王太子殿下!わかってますわね!」


「でも、せっかくティラン兄様が大金貨をくれたし少し遊んでいきたいな…」


「俺は、王女殿下がそうしたいならそれでいいです」


「リンネ様とかの有名な海の国を楽しめるなら、私は文句はありません」


「じゃあ、コンフェッシオン国王陛下は無視して、パラディース・アウフ・エールデンの民のところにいっちゃおうか」


歩いてすぐの、パラディース・アウフ・エールデンの隣の領へ行きます。そこには野次馬が集まっていました。


「…聖女様!」


私達を見た途端、おそらくパラディース・アウフ・エールデンの民と思われる方々はすぐに私の元へ跪きます。


「聖女様!今の光、闇の沼地の浄化ですよね!」


「ありがとうございます、聖女様!」


「聖女様!パラディース・アウフ・エールデンをお救いくださりありがとうございました!」


「聖女様万歳!」


「万歳!」


「コンフェッシオン万歳!」


「万歳!」


「パラディース・アウフ・エールデン万歳!」


「万歳!」


みんな大盛り上がりです。


「聖女様…本当に、本当にありがとうございます!」


みんなが涙を流して喜びます。…役に立てて良かった。


「いえ、みんなが手伝ってくれたからです」


「皆様も、本当にありがとうございます」


みんなはパラディース・アウフ・エールデンの民に優しく微笑みます。


「そうだ、もしよろしければ、ぜひ我がパラディース・アウフ・エールデンの海の生き物と戯れてみませんか?」


「えっと…いいんでしょうか?」


「聖女様がよろしければ、是非!」


みんなが熱い視線を送ってくれます。


「…じゃあ、お願いします。でも、闇の沼地の浄化の対価としては受け取れないので、これを」


「これは…エルドラドの大金貨!?」


みんな大金貨に大注目です。


「うわぁ、初めて見た…」


「い、いいんでしょうか、助けていただいたのにこんな…」


「いいんです。お願いします」


みんなは、困った様な顔で大金貨を受け取ります。


「では、せめて、最上級のおもてなしをさせていただきます!」


「ありがとう!」


「リンネ、楽しみだね」


「ヴァイス様。はい!」


「ふふ、私も楽しみです」


「王様がアレなだけで、パラディース・アウフ・エールデンのみんなはいい人だね。あーあ、なんかあの王様に怒ってたのが馬鹿みたい」


「そうですね。俺もそう思います」


「闇の沼地、浄化できて本当によかったですわ」


「本当にね」


「皆様、仲がよろしいのですね」


「ふふ、はい!」


「さて、ではまずは海に潜ってみましょうか」


「あ、ごめんなさい、私達着替えがなくて…」


「大丈夫ですよ。風魔法で空気を纏い、海の中に潜りましょう」


「…!なるほど、それなら濡れないね」


「ええ、我々の観光ツアーでも人気のサービスなんですよ」


そうして一人の観光ガイドさんが風魔法をかけてくれます。


「では、パラディース・アウフ・エールデン、水中観光ツアー出発です!」


ガイドさんに続いてみんなで海に入ります。


「ああ、皆さまはやはり、運がいいですね!早速ウミガメが来てくれましたよ」


「ウミガメ…?あ、本当!」


「ウミガメ…って、この子?」


「はい、可愛らしいでしょう。気性も大人しく、また人懐こいのです。少し風魔法から手を出して、撫でてあげて下さい。手は濡れてしまいますが、貴重な体験ができますよ。餌やりも出来ます」


みんなで、恐る恐る手を伸ばしてみる。…可愛い!


「へえ、本当に人懐こいね」


「リンネ様、可愛らしいですね」


「うん、とっても!」


「王女殿下、私、餌やりをしてみたいですわ!」


「あ、いいね。僕もやってみたいな」


「王女殿下、どうなさいますか?」


「私もやってみる!」


「では、こちらをどうぞ」


…餌をあげてみます。わあ、食べてる!


「可愛いね!」


「本当!」


「なんか手がくすぐったいな」


「ね、でも癒されるー」


「海藻食べるんですね」


「クラゲなんかも捕食しますよ」


「え!?うそ!こんなに可愛いのに!?」


「そうなんです。意外ですよね」


「へー」


「あ、食べ終わったら行っちゃった」


「では続いて、こちらへどうぞ」


わあ、色とりどりの魚が珊瑚と一緒にいます!


「わあ!珊瑚だ!」


「見事な珊瑚だ。これはお土産の珊瑚の加工品が楽しみだね」


「そうですね、みんなでお揃いの加工品を買いましょう!」


「ブローチにしようか」


「いいですね!」


「さあ、こちらでも餌やりができますよ」


「!王女殿下、是非やりましょう!」


「もちろん!」


餌やりをします。すると可愛らしい小魚が集まってきます。


「まあ、ふふ。くすぐったいです」


「ミレアさん、大人気ですね」


「まあ!王女殿下こそ!」


「リンネー、みてみて!俺もモテモテだよ」


「餌のおかげでね」


「王太子殿だってそうでしょ」


「俺みたいな無骨者にも寄ってくるもんなんですね」


「私にも寄ってくるなんて、愛らしいな」


「では、そろそろ陸に上がりましょう」


水中観光ツアーも終わり、陸に上がります。


「本日は本当にありがとうございました!」


「こちらこそ勉強になりました。ありがとうございました」


そうして私達は、幸せな気分なまま、お揃いのお土産を買ってルリジオンの教皇様の元へ転移魔法で移動します。


「教皇猊下!コンフェッシオンの闇の沼地、浄化出来ました!」


「さすがは百合姫様。ありがとうございました。コンフェッシオンの王は一筋縄ではいかなかったでしょう?彼には私の方から話をしておきますね。では、今週いっぱい休んでいただいて、来週にはフュムネの闇の沼地を浄化してください。…忙しくて、申し訳ない。これも全ては世界中の民のため。よろしくお願い致します」


「はい!頑張ります!」


そうして報告も終えた私達は、転移魔法でエルドラドに戻りました。


「…戻ったか」


「ティラン兄様!コンフェッシオンの国王陛下がね!…あ、そうだ、ティラン兄様にもお土産あるよ!」


「ああ、はいはい。詳しくはティータイムにな。…俺はこれからリンネとティータイムだから、お前たちは好きにしろ」


そんなこんなで、今日もなんとか終わりました。コンフェッシオン国王陛下のような人もいるんだなぁ。気をつけよう。

現実でも水中観光ツアー出来ればいいのに

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