美容の国、アドヴェント
美容の国
ご機嫌よう。リンネアル・サント・エルドラドです。今日はアドヴェントの闇の沼地を浄化しに行きます！
アドヴェントは別名美容の国ともいわれる、美容に特化した国です。世界的に有名なエステティシャンは、ほとんどアドヴェント出身だったりします。しかしこの十七年、闇の沼地が首都シェーンに突如現れたため、シェーンは閉鎖され、美容の国として成り立たなくなっている状況のようです。
今回もみんなと協力して、シェーンを救いアドヴェントに平和と美容を取り戻してみせます！頑張ります！
「リンネ。今回は美容の国に行くんだろう？」
「うん。ティラン兄様」
「あんまり可愛くなりすぎると余計に虫が寄ってくる。ほどほどにしておけよ？」
「ふふ、ありがとう。じゃあ、行ってきます！」
「いってこい。気をつけてな」
転移魔法で、アドヴェント国王陛下の元へ行きます。
「…聖女様！」
私達を見た途端、アドヴェント国王陛下はすぐに私の元へ駆け寄ります。そして私の手を取り、両手で握りしめます。
「大国エルドラドの百合姫様！我々を救いに来てくださり、感謝の言葉すら足りません！こんなに有り難いことはない！本当にありがとうございます！」
アドヴェント国王陛下に続いて、臣下の皆さん達が跪きます。
「聖女様！どうかアドヴェントをお救いください！」
「はい、必ず！」
「なんと頼もしい…！ヴァイス王太子殿下も来てくださったのですね、ありがとうございます！」
「いえいえ、お気になさらないでください」
二人は固い握手をします。
「失礼ですが、他の皆様は…？」
みんなを紹介します。
「こちらは我がエルドラドのターブルロンド辺境伯令息の、ノブルです」
「アドヴェント国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「これはご丁寧に。我がアドヴェントを助けに来てくださってなんとお礼を申し上げていいか…」
「こちらは我がエルドラドのファータ男爵令嬢の、ミレアです」
「アドヴェント国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「ご機嫌よう。お嬢さん、我がアドヴェントを助けに来てくださってありがとう」
「こちらは我がエルドラドの宮廷魔術師のレーグルです」
「アドヴェント国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「宮廷魔術師殿が！？あ、ありがとうございます…っ！」
「こちらは私の護衛騎士のフォルスです」
「おお、あの魔獣どもから聖女様をお守りくださるのですね。これは素晴らしい」
「いえ、俺は魔獣を斬るしか能がないので」
「では、聖女様、どうかお気をつけて」
「ありがとうございます！」
私達はシェーンへ転移魔法で移動します。…すると、そこは十七年前まで栄えていたとは思えないほど朽ち果てていました。魔獣はいつもと同じで物陰に隠れています。…が、いつもと同じで私達を獲物だと思ったのかじりじりと迫ってきます。
「じゃあ、始めるよ！」
「魔力に関しては心配ないからね！」
「私達の魔力を存分に使ってください」
「リンネ、僕がついてるから大丈夫だからね」
「フォルスさんもいますからね」
「そこ、プレッシャーかけないでくださいって言ってるじゃないですか！」
みんなと声をかけあい、魔力を私に回してもらいます。私はシュパリュへ魔力を回しつつ、シャパリュに命令をします。
「怪猫シャパリュ。妖精の王。…すべての妖精の力を束ね、魔獣どもを殺しなさい。…屠れ」
シャパリュは私の命令に、間髪いれずににゃおーんと返します。そして、今度はシェーン全体に響くようににゃおーんと大声を出します。すると、妖精の生息しないはずのシェーンは、闇の沼地から出た瘴気を癒すように暖かな光で満たされます。…シャパリュの妖精召喚です！
「…妖精の王とは、素晴らしい力だな」
「リンネ様の使い魔ですから」
「リンネはすごい子だからね」
「おや、珍しく同じ意見だね」
「私もそう思います！」
「俺もですよっと！」
迫り来る魔獣を斬り殺しつつ雑談に混じるフォルス。…うん、大丈夫そう。
シャパリュはそのまま、四方八方に駆けていきます。そして、シェーン全体から魔獣たちの悲鳴、絶叫が聞こえ、シャパリュとフォルスのおかげで魔獣が粗方片付いた頃には、妖精達の光は眩いほどのものになります。そして…。
「…闇の沼地が消えたな」
「今回のお仕事も終了ですね。皆様お疲れ様でした」
朽ち果てていた街並みもすっかり綺麗になっています！
「いやぁ、みんな本当にありがとう。助かったよー」
「何言ってるのさリンネ。君が頑張ってシャパリュに魔力供給したからこうして闇の沼地を浄化出来たんだよ」
「そうですわ！王女殿下はもっと胸を張っていいんです！」
「ありがとう。みんなの魔力供給と、フォルスが頑張ってくれたおかげだよ」
「ありがとうございます、王女殿下」
「まあ、リンネのためだからね」
「ふふ、私も、王女殿下のためならこのくらい余裕ですわ」
「私の魔力がお役に立てたなら嬉しいです」
「さて、ルリジオンの教皇様に報告に行かなきゃね。…でもその前に、先にアドヴェント国王陛下のところに行っちゃう？」
「あら、ヴァイス王太子殿下！ノリが良いですわね！私、実は楽しみにしてましたの！」
「今度は美容の国だし、ミレアとリンネは期待できるんじゃない？」
「俺は、王女殿下が楽しめるならそれでいいです」
「リンネ様が羽目を外せるなら私は文句はありません」
「じゃあ、アドヴェント国王陛下のところに行っちゃおうか」
転移魔法で、アドヴェント国王陛下の元へ行きます。
「…聖女様！」
私達を見た途端、アドヴェント国王陛下はすぐに私の元へ跪きます。
「アドヴェント国王陛下、どうか立ってください！」
「いえ、いいえ！シェーンの闇の沼地が消えたと報告がありました！」
ラーイ国王陛下に続いて、臣下の皆さんも跪きます。
「聖女様！シェーンを、アドヴェントをお救いくださりありがとうございました！」
「聖女様万歳！」
「万歳！」
「アドヴェント万歳！」
「万歳！」
「シェーン万歳！」
「万歳！」
みんな大盛り上がりです。大分見慣れてきました。
「聖女様…本当に、本当にありがとうございます！」
アドヴェント国王陛下は跪いたまま私の手を両手で握りしめ、涙を流して喜びます。…役に立てて良かった。
「いえ、みんなが手伝ってくれたからです」
「皆様も、本当にありがとうございます」
アドヴェント国王陛下は、みんなと固い握手を交わします。
「そうだ、もしよろしければ、ぜひ我がアドヴェントのエステティシャンの技を味わっていっていただけませんか？」
「えっと…いいんでしょうか？」
「聖女様がよろしければ、是非！」
エステティシャンの皆さん達も熱い視線を送ってくれます。
「…じゃあ、お願いします」
「はい！お前たち、よろしく頼む！」
アドヴェント国王陛下に命じられたエステティシャンさん達は、私達を自分の施術室に連れて行ってくれます。
「まずはこちらをお飲みください」
渡されたのは不気味な緑の液体。
「デトックスティーです」
ですよねー。
「デトックスティー？」
「味は最悪だけど最高に体にいい飲み物」
「え、まずいの？」
「まあ…体のためだから、ほら」
「えー」
レーグルが駄々をこねる中、みんなは覚悟して飲み干します。
「…あー、確かに体に良さそうな味がする」
「わかります。なんかこう…ね」
「青汁の方がマシですね」
「こら、そういうこと言わないの」
「ほら、レーグル、私と一緒にせーので飲もう？」
「うー。わかったよ」
レーグルと一緒にデトックスティーを飲み干します。あー、独特の味が…。
「うわ…こんな味なんだ…」
「そうなのよ…」
「それでは、そろそろ施術に入りましょう」
「施術？」
「エステよ」
「ああ。…ちょっと、楽しみかも」
「今回の施術は主にマッサージを行います。今回は短期間での施術のため、それ相応に強い効果が出るコースを行います。好転反応も当然あるかと思いますが、それらはすべて老廃物を出しきるためのものですのでご了承くださいませ」
「つまり？」
「好転反応という面倒なものも起きるけど体にはいいから頑張れ」
「そういうこと！？」
「では始めます」
すりすり、と優しく手慣れた手つきで、エステティシャンさん達がみんなの身体をマッサージします。
途端に、圧倒的な気持ち良さに頭を支配されます。
すりすり、と温かな手でマッサージされる毎に、力が抜けます。
「あー…」
気持ちがいい。思わず間抜けな声が出るくらいには。いつも身体を支配していた筋肉の緊張が、すぐさま柔らかくほぐれていきます。
「あったかい…」
もはや気分は天国です。もう眠ってしまいそうです。ちらっと横を見ると、レーグルはもう寝てます。ヴァイス様は眠たくなってきた私をみて微笑んでいます。
「眠ってていいよ。リンネは僕が守るから」
「…はい、ヴァイス様」
お言葉に甘えて眠ります。あー、いい気持ち。
そうして私達は、寝落ちしたのでした。
ー…
「皆様、お疲れ様でした。マッサージの施術は終わりましたよ」
「え！？もう！？」
「思ったよりも早くてびっくりです」
「でも、体は軽くなった」
「すごいです！こんなに楽になるなんて！」
「我がハイリヒトゥームにもこの技術は欲しいな」
「私も毎日でも受けたいです！」
「そう言っていただけてなによりです。この後は、薬草風呂に入っていただき、サウナを活用していただき、もう一度薬草風呂に入っていただき施術は終了となります」
「えっ、お風呂入っていいの？」
「はい。心行くまでご堪能くださいませ」
「やっほー！」
「もう、レーグルさんったら」
そうして私達は、薬草風呂に入って、サウナに入り、もう一度薬草風呂に入ってすっかりリフレッシュしました。
「我がアドヴェントの美容はいかがでしょうか？」
「最高でした！」
「とっても気持ちよかったです！」
「もう本当に最高！」
「なんなら毎日でも来たいくらいです」
「こんなに気持ちいい施術、ぜひ我が領にも取り入れたいです」
「勉強になります。ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました。闇の沼地を浄化していただけた、ささやかなお礼ですのでどうかお気になさらないでください」
「そんな、ささやかだなんて！本当に最高でした！闇の沼地の件は私の使命ですし…本当に、こんなによくしてもらってなんとお礼を申し上げていいか…」
「…それでは、またいつか我がアドヴェントの施術を受けに来てください。それが我々のなによりの幸せですので」
「…はい、いつか必ずまた来ますね！」
「ええ、ぜひ」
「それでは」
「さようなら」
そうして私達は、幸せな気分なまま、ルリジオンの教皇様の元へ転移魔法で移動します。
「教皇猊下！アドヴェントの闇の沼地、浄化出来ました！」
「さすがは百合姫様。ありがとうございました。では、今週いっぱい休んでいただいて、来週にはコンフェッシオンの闇の沼地を浄化してください。…忙しくて、申し訳ない。これも全ては世界中の民のため。よろしくお願い致します」
「はい！頑張ります！」
「ところで聖女様。他の皆さんも、随分とお顔の色が優れていますね」
「そうですか？ありがとうございます！実は、アドヴェントで施術をしてもらって」
「ああ、なるほど。納得です。よかったですね、聖女様」
「はい！」
そうして報告も終えた私達は、転移魔法でエルドラドに戻りました。
「…戻ったか」
「ティラン兄様！マッサージ、すごく気持ちよかったの！」
「ああ、はいはい。詳しくはティータイムにな。…俺はこれからリンネとティータイムだから、お前たちは好きにしろ。リンネ」
「うん！」
「綺麗だ」
「…！ティラン兄様、ありがとう！」
そんなこんなで、今日もなんとかなりました！…なんか最近、もう軽く旅行気分だよ。楽しいな。
マッサージ受けてみたい
