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僕の愛しい婚約者

気がついたら

僕はヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥーム。ハイリヒトゥーム国の第一王子で時期王太子。今日は、同盟国であるエルドラドの姫君の釣書を受け取った。リンネアル・サント・エルドラド王女殿下。ブロンドの髪と碧瞳が綺麗な、中性的な美しさを持つ愛らしい姫君だ。


…釣書をみて、一目惚れしてしまった。いや、僕はハイリヒトゥームの第一王子であり、恋愛結婚なんて難しいし、政略結婚をしなければならないのだが。…好きになってしまった。どうしようか。とりあえず父と母に相談してみる。


すると父と母は思いの外喜び、もし王女殿下に選ばれたらすぐに教えると言ってくれた。…そんな両親の態度に、喜びを隠せない。上手くいけば、この美しい姫君と…。


そして、エルドラドへ挨拶へ向かう道の途中、後もう少しでエルドラドへ着くというところで、報せが入った。エルドラドの王女殿下が、僕を婚約者に選んだと。


ー…


「は、初めてお目にかかります。ヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥームと申します。ティラン・フロワ・エルドラド国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」


「堅苦しい挨拶はいい。これからも同盟国としてよろしく頼む」


「ありがたき幸せ!」


僕は今、エルドラドで憧れの国王陛下と対面している。ああ、姫君の話はいつ出るんだろう。会わせていただけるかな。国王陛下は姫君をすごく大切にされているとのことだし、会わせていただけなかったらどうしよう。


「ありがたき幸せなら、もう一つあるぞ。特大級のがな」


「え?」


「我が愚妹よ、いい加減恥ずかしがってないで玉座の後ろから出てこい」


「は、はい、ティラン兄様!」


ギチギチと音がしそうなほどガチガチに固まりつつもなんとか国王陛下の横に立つ姫君。ああ、本物の方が写真より可愛いな。


「は、はじめまして。リンネアル・サント・エルドラドです、えっと、よろしくお願いします!」


「こ、こちらこそはじめまして。僕はヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥーム。リンネアル・サント・エルドラド王女殿下におかれましては、ご機嫌麗しく」


お互いに緊張しつつも、なんとか挨拶を交わす。


「多分報せは受けただろうがな。お前は今日から我が愚妹の婚約者だ。くれぐれも丁重に扱えよ?」


「っ!は、はい、もちろんでございます!」


こんなに素敵な人を、蔑ろにするわけない。


「愚妹よ。ヴァイスに王城を案内してやれ」


「は、はい、ティラン兄様!」


こうして僕達は、二人きりになった。


「リンネアル王女殿下」


「は、はい!ヴァイスハイト様!」


…緊張する。断られたらどうしよう。


「お互いの仲を深めるために、愛称で呼びあいませんか?」


「い、いいと思います!」


よかった…!


「あと、敬語もやめましょう」


「う、うん。…ヴァイス様」


「ええ、…リンネ」


「…」


「…」


き、気まずいな。


「えっと…薔薇園に行ってみよっか」


「ああ。リンネは薔薇が好きかい?」


イメージは百合だったのだけど。


「とっても!可愛くて美しいもの!」


「そっか。僕の姫君は薔薇が好きなんだね」


覚えておこう。


「でもどちらかといえば百合の方が好きかな。白くて可愛くて綺麗」


「そうか。リンネは百合が好きなのか。覚えておくね」


ああ、やっぱり。イメージ通りだ。


「さ、着いたよ!」


「これは見事な薔薇園だね」


「香りもすごくいいよね!」


「そうだね。…リンネ、薔薇を一輪貰ってもいいかい?」


美しいリンネの髪に飾りたい。


「うん、いいよ!ちょっと待ってね、棘を切って貰わなくちゃ。庭師のお爺ちゃーん」


「はいはい、なんですかな姫さま。…おや、これは失礼致しました。ハイリヒトゥームに栄光あれ」


「ああ、いや、気にしないでくれ。今の僕はハイリヒトゥームの王子ではなく、リンネの婚約者兼恋人だ」


「であればなおのこと丁重におもてなししませんとな」


「はは。それもそうか。ごめんごめん、本当に気にしないでくれ」


人の良さそうな庭師だな。


「ねえ、お爺ちゃん、この薔薇一輪ちょうだい!」


「姫さまは本当に薔薇が好きですなぁ。…はい、どうぞ。棘も切りましたよ」


「ありがとう!はい、ヴァイス様!」


「おや、王子殿下への贈り物でしたか。若いですなあ。それでは老いぼれはここで失礼致します」


「お爺ちゃんありがとー!」


「ありがとうございます、庭師さん」


それにしても先程の態度。リンネは、日頃から庭師と仲良しみたいだ。


「…リンネは、使用人にも別け隔てなく接するんだね」


「あ、は、はしたなくてすみません…」


「そんなことない」


「え?」


「それはとても、大切なことだよ。王家は、国民の力あってこそ成り立つのだから」


「ヴァイス様…」


こんなに心の美しい姫君の婚約者になれるなんて、僕は幸せ者だな。


「…リンネは、国王陛下によく似ているね」


「え?ティラン兄様に?」


「国王陛下も、下々の民にとても良く接しているそうだよ。陛下の打ち立てた新しい施策も、国民達から多く支持されている。国王陛下は、僕の憧れなんだ」


さあ、リンネの髪に薔薇を飾ろう。


「リンネ…ちょっと失礼…。うん、やっぱり似合う」


「ヴァイス様…」


「ふふ、リンネ…これは内緒の話なんだけど」


「?はい」


「国王陛下はね。僕が婚約者に決まった際に、リンネを泣かせるようなことがあったら同盟国でも許さないって釘を刺してきたそうだよ」


「ティラン兄様が?」


目を丸くするリンネ。可愛いな。


「僕は国王陛下の気持ちがわかるな」


「え?」


「こんなに素直で可愛い人、他にいないもの」


言っちゃおうかな。


「実はね、僕、釣書を見たとき、リンネに一目惚れしちゃったんだ」


「…!」


「だから、リンネが僕を選んでくれて嬉しい」


「ヴァイス様…」


「僕の姫君。僕は君を一生をかけて愛することを誓います」


跪き、リンネの手を取って手の甲にキスを落とす。


「…!嬉しい!ヴァイス様、私も、一生をかけて貴方を愛することを誓います!」


「ふふ。両思いだね」


「はい、両思いです!」


幸せ過ぎて、天にも昇る心地だ。


ー…


月日は流れ、それでも僕達は手紙でのやり取りを続けていた。そして今日は、エルドラドへ挨拶に行く日。リンネに会える!


「失礼します」


謁見の間にはリンネが居た。はやくリンネの声が聞きたい!逸る気持ちを押さえてティラン義兄上に挨拶する。


「お久しぶりです。ヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥームです。ティラン・フロワ・エルドラド国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」


「堅苦しい挨拶はいい。これからも同盟国としてよろしく頼む」


「はい、よろしくお願い致します!」


「それよりも、お前の本命はこっちだろう?」


リンネの方を向くティラン義兄上。ばればれでしたか。


「リンネ。久しぶり。元気そうで何よりだよ」


「…っ!ヴァイス様!会いたかったです!」


リンネが僕に抱きついてくる。可愛いな。


「リンネ。ふふ、僕もだよ」


腕の中を覗き込めば、笑顔のリンネ。手紙だけのやり取りだったから、本物に会えて幸せだ。


「…っ!王女殿下!」


「…?なに、フォルス?」


ちょっと困った様子で言葉を選ぶ騎士風の男の子。代わりに、とばかりに貴族風の男の子が言う。


「リンネ様。婚前の男女が抱き合うのは、ちょっと…」


余計なことを。もっと抱きしめて居たかったのに。


「…っ!ご、ごめんなさい!」


「もっと抱きついてくれてもいいのに」


「もう、ヴァイス様!」


「見せつけておきたいからね」


リンネの周りの男の子たちに。


「…君たちとは、初めましてだよね。僕はヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥーム。ハイリヒトゥームの王子だよ。リンネの『婚約者』だ。リンネ同様、よろしくね」


「…王女殿下の護衛騎士、フォルス・トラディシオンです。僭越ながら、王女殿下の護衛のためご一緒させていただきます」


なるほど、この子がリンネの手紙にあった護衛騎士。…ちゃんと自分の身も弁えている様子だし、大丈夫かな。


「そうか。よろしく」


「はい」


「お初にお目にかかります。ノブル・ターブルロンドと申します。リンネ様のお話相手を務めさせていただいております」


「そう、リンネの。…これからもリンネをよろしくね」


この子も、ちゃんと自分の立場を分かっているようでなにより。問題は僕を睨んでくるあの子だけかな。…僕じゃなきゃ不敬罪で首落ちてるからね?


「初めまして。俺はレーグル・オロスコープ。…ヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥーム王子殿下におかれましては、ご機嫌麗しく」


なんだ、ちゃんと出来るじゃない。


「うん。よろしくね。ところで君はリンネの何かな?」


「…今はまだ友達です」


今はまだ、ね。戦線布告ととっていいのかな。


「そう。言っておくけど、僕も本気だから。譲らないよ」


「気が合いますね、俺もです」


にこにこし合いながら牽制しあう。ティラン義兄上は玉座で大笑いしている。分かってて僕たちを会わせましたね?


「もう!二人とも喧嘩しないでください!」


「はーい」


「ふふ。ごめんね、リンネ。わかったよ」


なるべく自然にリンネの頬へ手を寄せる。


「でも、婚約者が男に囲まれているんだもの。心配させて?」


「…!す、すみません!」


あら、困らせちゃった。


「ふふ。リンネはなにも悪くないよ」


「ヴァイス様…」


「ティラン義兄上は意地悪ですね」


「ん?何がだ?」


にまにましながら僕を見つめるティラン義兄上。リンネも苦労してるんだろうな。


「ティラン兄様!」


はははははと笑うティラン義兄上。そんなにリンネを取られるのが嫌ですか。


「ティラン義兄上はよほど僕にリンネを取られるのが面白くないのですね」


「可愛い妹だからな」


「だからといってさすがに男ばかりをリンネに近づけられると困ります」


「俺に言われてもなぁ。美しい花に虫が近寄るのは道理だろう?」


…。まあ、確かにそれはそうだけれど。


「もう!意地悪しかしないならティラン兄様なんて知らない!ヴァイス様、みんなも行こ!」


また玉座で高笑いをするティラン義兄上。敵わないな。


「では、失礼します。ティラン義兄上」


「…ああ、束の間の逢瀬だ。楽しめよ」


「もう!変な言い方しないでよ!」


「ははははは!」


…その後ティラン義兄上以外のみんなでお茶会をした。正直、リンネにはそろそろ同性のお友達を作ってほしいかな。賢い子ならこの三人への歯止めになるかもしれないし。

ライバルがたくさん

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