お友達ができました!
新しいお友達
ご機嫌よう。リンネアル・サント・エルドラドです。昨日は百合姫の称号を授与されました。家庭教師の先生の授業も終わり、ティラン兄様とティータイムです。
「リンネ。いい子にしてたか?」
「ご機嫌よう、ティラン兄様!いい子にしてたよ!」
ティラン兄様は私の返事に満足そうににこにこ微笑みます。
「…ところでリンネ。寂しかったりしないか?」
「ううん。全然。ティラン兄様がいるもの。どうしたの?」
「貴族どもが百合姫様にも同世代のお友達が必要でしょうとうるさくてな…。前々から打診されてはいたんだが、お前が百合姫になった途端これだ。」
ふう、と面倒臭そうに髪をかきあげるティラン兄様。なんかごめんなさい。
「そっかー。別に私は大丈夫なんだけど…」
むしろ『お友達』に変に利用されたくないし。
「でも、ティラン兄様が断るのが面倒なら頑張るよ!」
それでなくても忙しいティラン兄様だもの。私が邪魔になっちゃダメだよね。しかも昨日の称号授与式で判明したんだけど、ティラン兄様、『聖王』って呼ばれてるらしいし。そこまで民から愛されるってなかなか無いもんね。そんなティラン兄様に面倒ばかり掛けるのはちょっと…。
「そうか。…じゃあ、辺境伯の息子と仲良くしてやってくれるか?」
辺境伯?公爵とかじゃなくて?
「いいけど…なんで辺境伯なの?あ、嫌とかじゃないよ?」
「ん。わかってる。公爵どもは我れ先にとごり押ししてきたから却下した。反対に、ターブルロンド辺境伯は特に何にも言わなかったし、あそこの息子は非常に優秀だと聞いたからな。本当は令嬢ならちょうどよかったんだが…まあ、リンネにはもう仲のいい婚約者もいるから安心だし、仕方がないから妥協した」
「妥協って言っちゃダメだよ」
「本人には言ってない」
「それでもダメ!」
全くもう、ティラン兄様ったら。
「じゃあ、早速来月から私の宮に招待しようか」
「おう」
「ティラン兄様。忙しくても無理しないでね」
「ん。わかってる」
ー…
今日はいよいよ私の『初めての同世代のお友達』を私の宮に招待する日です。
「そんなに緊張しなくても、相手は辺境伯だぞ?」
「つまりは侯爵でしょ!緊張するよー!」
「リンネはお姫様だろう。しかも百合姫だぞ?」
それはわかっているけれども!
「ほら、来たぞ。俺はもう行くからな」
ティラン兄様が離れていくと同時にターブルロンド辺境伯のご令息が来る。こういう時は身分が上の者から声をかけるものだから。
「は、はじめまして。リンネアル・サント・エルドラドです。よろしくね」
「お初にお目にかかります。ノブル・ターブルロンドです。リンネアル・サント・エルドラド王女殿下におかれましては、ご機嫌麗しく」
ストロベリーブロンドの髪と紅い瞳。可愛らしい顔立ちもあってまるで漫画に出てくるヒロインみたい。可愛らしいから、一瞬男の子だってわからなかった。でも辺境伯の跡継ぎさんなんだよね。
「とりあえず、えっと…お茶にしましょう!」
会っていきなりお友達とかなんか気まずい。逃げの一手です!
「ふふ。はい、喜んで」
わー、ノブル君は余裕があるな。大人だなぁ。かっこいい。
「…?姫君?どうしました?」
「あ、いや、余裕があって大人だなぁって思って」
「そんなことありませんよ。私だって緊張しています。ほら」
ノブル君は私の手を自然に取って、自分の胸に当てます。ドキドキしています。
「本当だね。よかったぁ。私だけが緊張してるのかと思ってた」
「ふふ、姫君は可愛らしい方ですね」
「そういうノブル君はかっこいいね!」
私がそういうと、何故かノブル君は目を点にします。
「私が…かっこいい、ですか?」
「うん!とっても!」
「可愛い…ではなく?」
「うん!」
私がそういうと、ノブル君は何故か俯き両肩を震わせます。な、なに!?なんで泣きそうになってるの!?
「ノブル君!?どうしたの!?」
「すみません、姫君…。私は、こんな容姿なので男なのに可愛いとしか言われたことがなくて…う、嬉しいです、姫君。初めて、かっこいいなんて言われました。ありがとうございます」
あー、それは確かに男の子には切実だよね。
「そうなんだね。でもノブル君は本当にかっこいいよ」
「姫君…」
「リンネでいいよ」
「リンネ様…本当にありがとうございます。」
ー…
お茶ついでによくよく聞くと、ノブル君は男の子なのにあまりに可愛らしい容姿のせいで家にいる時以外あまり男の子扱いして貰えず、さらにはちょっとアレな男の人からそういう目で見られたりと色々と苦労してきたらしい。そりゃあ男の子扱いされたら泣くわ。いくら見た目が可愛らしいからってそれはない。
「ノブル君…本当に苦労してきたんだね…ビスケット一枚あげるよ」
「ありがとうございます、リンネ様…不恰好な姿をお見せして申し訳ありません」
「いやいや、男の子だって泣きたい時はあるよ」
特にノブル君…苦労してるみたいだし…。
「これからは、姫君の良きお話相手として尽くさせていただきます。改めてよろしくお願い致します」
「こちらこそお友達としてよろしくね」
「…お友達?ただのお話相手ではなく?」
「ん?それってお友達でしょう?」
ノブル君はまた目が点になります。
「…ふふ。リンネ様は不思議な方ですね」
「えっ…そう?」
「はい、とても」
どういう意味の不思議だろう…電波的な意味じゃありませんように!
「そういえば、辺境伯ってやっぱり忙しいの?」
「はい。父はいつも国境付近の警備や領内の様々な仕事で大忙しです。まあ、実際に動くのは兵士や領民ですが」
「でもみんなを管轄するのって大変でしょう?」
「はい、私はまだ幼いので手伝わせては貰えませんが…見ているだけでも、大変な仕事です」
「そっかー。私の兄様も大変そうなんだよね」
「国王陛下ともなれば父とは比べ物にならない程お忙しいでしょうね」
「でも私とのお茶の時間や晩餐は取ってくれるの。ノブル君のお父さんは?」
私が聞くと、ノブル君はちょっと困ったような笑顔を浮かべます。
「父は…仕事人間なので」
「そうなんだ」
「私にも、母にもあまり興味はありませんよ」
「え?そんなことないよ!」
「…ふふ」
私がそんなことないと否定してもノブル君は困ったように笑うだけ。
「だったら、試してみる?」
「え?」
「よし、そうしよう!」
「?」
よくわかっていない顔のノブル君。そんなノブル君と一緒に辺境伯領に行ってこようと思います!
女の子みたいな男の子




