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俺の可愛いお姫様③

孤独な国王は

今日はリンネの婚約者を決めてやろうと思い朝早くからリンネの部屋に行く。しかし侍女に、まだリンネは寝ていると言われた。仕方がないのでリンネのベッドでリンネが起きるのを待つ。


「…おう。起きたか」


「おはよう、ティラン兄様!」


朝から元気だな。よかった。


「おはよう、我が愚妹よ」


「どうして腕枕してくれてるの?」


「せっかく来てやったのに、朝早くからだからってお前がいつまで経っても起きないから、特別に添い寝してやろうと思ってな」


「わあい、嬉しい!ティラン兄様大好き!」


俺にじゃれつくように抱きつくリンネ。好きにさせてやる。


「ティラン兄様、三つ編みいじっていい?」


「いいけど、あとで編み直せよ」


俺の長い三つ編みを解いて楽しそうに髪をいじるリンネ。


「ティラン兄様ポニーテール似合うね!」


「ふうん。俺の髪いじるの好きなの?」


「うん!好きだよ!」


「あっそ」


そんなに気に入ったなら好きにさせてやろう。


「じゃあ三つ編みするね!」


「おう」


「ティラン兄様の髪さらさらきらきらで綺麗!」


「今更かよ」


思わず笑う。本当に可愛いこと。


「それで、何か用事?」


「ん。お前の婚約者を決めてやろうと思って。どれがいい?」


「えっ!?婚約者?」


不安そうなリンネ。大丈夫、お前を守るためだから。


「そんな顔するなよ。なにもお前を王城から追い出すためじゃない。ちゃんと年頃になって結婚するまでは置いておいてやるよ」


気が変わらなければな、と付け足す。リンネは暴君の俺に家族を奪われて王城で閉じ込められている可哀想なお姫様なのだから。


「でも私、ティラン兄様と離れたくないよ」


「…!ばか、いつだって里帰りできるだろ。それに、当分先のことだよ」


余りにも可愛いことを言われ、照れ隠しにリンネの頬をむにむにと摘んだり伸ばしたりする。


「とりあえず、ほら、釣書。みんなこぞってお前を欲しがってるぞ」


なんたってエルドラドの王女だからな、と言う。でも、実際にはリンネ自身の可憐さに惹かれる貴公子が多い。


「まあ、お前に対して色無しなんて要らないなんて生意気なことを言う奴も中にはいたが、そいつらは全員潰しておいた」


まあ、さすがに殺すわけにもいかないから爵位的な意味でだけど。


「ティラン兄様、色無しって?」


「うん?ああ、教えてなかったか。王族なのに、髪が白銀でもなくて、瞳がアメジストでもない子のことだよ」


「ああ、そうなんだ…」


「…安心しろ、ちゃんと俺がこの目で見て選んでやった奴らばかりだ。変なのは混じってない」


ついでに変なのは潰してきたしな、と言う。少しは安心したか?


「そ、そっかー。じゃあ見てみるね」


リンネが選ぶのを待つ。


「ティラン兄様、この人がいいな」


リンネが選んだのはヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥーム。ハイリヒトゥーム国の第一王子で次期王太子と目される男。性格は穏やか。ハイリヒトゥームはエルドラドの同盟国で、エルドラドほどではないが広い領土と高度な文化を持つ。エルドラドと違い精霊の力を借りずに魔法を使う魔法学の先駆者でもある。ハイリヒトゥームはエルドラドと違い一夫一妻制だ。悪くない。…まあ、言って俺はハーレムを作る気はないけれども。


「ふうん。ハイリヒトゥームね。いい選択したな」


リンネの頭を軽く撫でる。さすがは俺の妹。賢いな。


「じゃあ、早速明日顔合わせするか」


「え!?明日!?」


「ん。明日ちょうどハイリヒトゥームから俺に会いにくるんだよ。その王子」


「なんで?」


「そりゃあお前、同盟国だからだよ。立場はこっちのが上だから、その王子が挨拶に来るのは当然だろ?」


リンネが驚いている。こういうところは年相応だな。


「じゃあ、楽しみにしてるね!いい人紹介してくれてありがとう、ティラン兄様!」


「はいはい、どういたしまして」


ハイリヒトゥームにはリンネを泣かせるようなことがあったら同盟国でも許さないって釘を刺しておかないとな。


ー…


今日はヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥーム第一王子とリンネの初顔合わせ。緊張しきりなリンネが可愛い。


「は、初めてお目にかかります。ヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥームと申します。ティラン・フロワ・エルドラド国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく」


「堅苦しい挨拶はいい。これからも同盟国としてよろしく頼む」


「ありがたき幸せ!」


幼い割に、しっかりしている。…こいつが将来、リンネの夫になるのか。


「ありがたき幸せなら、もう一つあるぞ。特大級のがな」


「え?」


「我が愚妹よ、いい加減恥ずかしがってないで玉座の後ろから出てこい」


「は、はい、ティラン兄様!」


ギチギチと音がしそうなほどガチガチに固まりつつもなんとか俺の横に立つリンネ。学問に関しては優秀過ぎるが、やっぱりこういう場では年相応だな。


「は、はじめまして。リンネアル・サント・エルドラドです、えっと、よろしくお願いします!」


「こ、こちらこそはじめまして。僕はヴァイスハイト・ファイン・ハイリヒトゥーム。リンネアル・サント・エルドラド王女殿下におかれましては、ご機嫌麗しく」


お互いに緊張しつつも、なんとか挨拶を交わす二人。…いい夫婦になってくれればいいんだが。


「多分報せは受けただろうがな。お前は今日から我が愚妹の婚約者だ。くれぐれも丁重に扱えよ?」


「っ!は、はい、もちろんでございます!」


「愚妹よ。ヴァイスに王城を案内してやれ」


「は、はい、ティラン兄様!」


二人きりの時間を作ってやる。まあ、後ろに侍女は控えているが。…さて、ヴァイスハイト。見極めさせてもらおう。


ー…


「よかったな、我が愚妹よ」


「え?」


「“庭師のお爺ちゃん”から聞いた。早速ヴァイスの奴といい仲になったんだろう?お前やるな」


まあ、俺の妹を気に入らない奴の方が珍しいとは思うが。


「い、いや、そんな…」


「さすがは我が妹だ。将来有望だな?」


「あ、あはは」


可愛いリンネ。大切にしてくれる相手が見つかってよかった。


「それで?魔法学の方はどうだ?」


「えっとねー、今使い魔を使えるようになったところ!」


見せてあげるね、といって使い魔を呼び寄せるリンネ。リンネの使い魔は…怪猫シャパリュ。シャパリュ!?


「お前…シャパリュと契約したのか!?」


「うん!」


「やられた…お前、実は結構ちゃっかりしてるな」


「えへへー」


シャパリュは契約者が死なない限り他の人とは契約しない。また、契約者のことは死んでも守ろうとする。…俺が近々契約するつもりだったんだが。まあ、リンネを守るためなら悪くはないか。


「でも、あんまり調子に乗るなよ。シャパリュは下手をするとお前の魔力を喰い尽くす。特にお前はアメジストの瞳を持ってないんだから…」


「はーい!」


リンネは適当に返事をしてシャパリュを可愛がる。


「まったく…やっぱりまだまだ子供だな」


呆れつつもシャパリュをブラッシングしてやるリンネを見守る。


「あれ?」


突然リンネがぱたりとその場に倒れこむ。


「…おい、我が愚妹よ。変な冗談は止めろ」


リンネを抱き起こす。まずい。魔力が枯渇している。


「…おい、おい!リンネ!くそ、マジか!こんなに魔力が…!リンネ、今すぐこの化け猫を還すか殺せ!お前の命令なら聞き入れる!」


「にゃー…」


心配そうにシャパリュが顔を舐める。シャパリュが悪いわけじゃないが、頼むから還ってくれ。


「シャパリュ、小さくなあれ」


「…!そうか、小さくすれば魔力の減りは少なくなる!」


…ああもう!


「…仕方ない。リンネ、緊急事態だから俺の魔力を少し分けてやる。有り難く思えよ」


リンネの胸の辺りに手を翳すと、魔力を注ぎ込む。


「ありがとう、ティラン兄様!」


「まったく…次はないぞ」


「はあーい!シャパリュ、これからは緊急事態以外はこのサイズでいてね」


「おい、こら。まさかずっと呼び出したままにする気か?」


「うん!」


「…はあ。次はないからな!」


シャパリュに手を翳す。魔力を俺の限界まで注ぎ込む。


「…これでしばらく大丈夫だ。お前はアメジストの瞳を持たないんだから、あんまり調子に乗るなよ」


「?シャパリュになにしたの?」


「さあね。お前にとって悪いことじゃないさ」


「…ふうん?ティラン兄様ありがとう!」


「どういたしまして」


ぽんぽんとリンネの頭を撫でる。これからもたまにシャパリュに必要な魔力を調整してやらないとな。


ー…


「おい、我が愚妹」


「ティラン兄様!どうかしましたか?」


…うん、小さいシャパリュは魔力をそんなに使っていない。まだ補充しなくても大丈夫そうだな。


「いや、ただ単に確認に来ただけだ」


「?なんの?」


「なんでもない。…なんだ?その手紙」


「あ、ヴァイス様からもらったの!」


「見せてみろ」


「え?あ!」


リンネから強引に手紙を奪い取る。どれどれ。


「うわなんだこれ砂糖吐きそう」


あの王子リンネに傾倒してるな。まあ当然か。こんなに可愛いもんな。


「へー、マジでベタ惚れじゃん。よかったな」


「う、うん」


「で?」


「え?」


「お前から愛するティラン兄様への感謝の手紙は?」


「すぐ書きます!」


ははははは!と笑う。まさか本気にするとは。可愛い奴。


「はい、ティラン兄様!」


「おー。…愛するティラン兄様?お前あざといなぁ…へぇ、殊勝なことだな…ふーん、あの化け猫を庇うわけね…へえー、ヴァイス様の次に愛してるってか。なーるほど?」


リンネの手紙を魔法で加工して、俺が死ぬまで劣化、破損しないようにする。宝物にしよう。


「ティラン兄様、だーいすき!」


「ほーん。まあいいや。これで見逃してやるよ。おやすみ、我が愚妹」


「おやすみなさい、ティラン兄様。…あの」


「うん?」


「もうリンネって呼んでくれないの?」


「…」


帰ろうとしていた俺は、振り返ってリンネに歩み寄る。


「ティラン兄様?」


もういいや。暴君の兄に家族を奪われて王城で閉じ込められてる可哀想なお姫様とか。そんな設定なくても、俺が守ってあげればいい。


「おやすみ、俺の可愛いリンネ」


そういうとリンネの額にキスをして、なにもなかったかのように帰る。…百合姫の称号、ね。貴族どももうるさいし、そろそろ考えないとな。

ついに妹に陥落する

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