表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/113

45、土色の新種ドラゴン、クゥちゃん

「ええ〜っ!? 弟なのー?」


「性別は……」


「あー、変えられないんだ。じゃあ、弟でもいいよん。でもリボンつけて可愛くしたいな」


(いや、確認を忘れただけだが……)


 シルルは、赤ん坊ドラゴンをひょいと抱き上げていた。赤ん坊ドラゴンは、シルルに頭をすりつけている。すると、シルルは、嬉しそうな顔で、ヤツの頭を撫でてやっていた。


 これは、どう見ても、シルルを母親だと思い込んでいるな。まぁ、ドラゴンは、子供のうちは人化はできないし、放っておくか。ドラゴンが大人になる前に、シルルの寿命は尽きる。



「クゥちゃん、お腹空いてるよね? 何を食べるのかな」


「昨日狩った肉を食わせればいいよ。生肉しか食べないと思うよ」


「わかった! じゃあ、カールがたくさん狩った魔物を出して」


「あぁ、なんなら、トカゲを食わせても大丈夫だ」


「ダメよ! この子に親を食べろなんて言えないもん」


「魔物の世界では、親を食う種は少なくないよ」


「嫌っ! クゥちゃんはそんな酷いことしないもん」


 シルルは、キュッと赤ん坊ドラゴンを抱きしめた。ふむ、圧死しなければいいがな。シルルは、意地になると力加減がわからなくなるようだ。


 クッ、クゥ〜、クェッ


 赤ん坊ドラゴンは、シルルの腕の中で、もがいているようだ。ふっ、まぁよい。いいしつけになる。シルルには逆らえないと、本能に刻み込まれるだろう。


 クッ、クッ!


「ん? クゥちゃん、お腹減ったって言ってるの?」


「自分で歩きたいんじゃないの?」


 一応、助けておいてやるか。赤ん坊ドラゴンを圧死させたら、またシルルは騒ぐだろうからな。


 俺が、そう言うと、シルルは赤ん坊ドラゴンを地面に降ろした。すると、ヤツはすぐにシルルから距離を取った。やはり、怖れたらしいな、ふっふっ、面白い。



「カール、早く出してよん」


「あぁ、わかった」


 俺は、魔法袋から、昨日狩った魔物の一体を取り出した。トカゲが好んで食べる鳥型の魔物だ。そして、凍らせていた頭部をヒート魔法で解凍した。


「じゃあ、食べやすいようにしなきゃね」


 シルルは、肩にさげた布袋からナイフを取り出し、魔物の腹をスーッと裂いた。血が苦手なんじゃないのか? シルルは平気なかおをしている。


 血の臭いに、赤ん坊ドラゴンは鼻をヒクヒクさせ始めた。だが、シルルを怖れているため、近寄ってこない。


 シルルは、食べやすくさばいた肉の塊を、赤ん坊ドラゴンの方へと放り投げた。


「クゥちゃん、食べなさい。こっちに来ちゃダメだよ。血がついちゃうからね」


 赤ん坊ドラゴンは、恐る恐る肉の塊に近づくと、その臭いを嗅いでいる。そして、シルルの顔と俺の顔を見た。ふむ、どうすればいいかわからないようだな。


『シルルが食べていいって言ってるよ』


 俺は念話を使った。すると、赤ん坊ドラゴンはビクッとして俺の顔を見た。


『これは念話だよ。シルルは使えないんだ。食べなさい』


 クゥ〜〜、クゥ、クゥッ!


 赤ん坊ドラゴンは、まだ生えていない翼を広げるように手をバタバタさせた。ふむ、喜んでいるようだな。


 そして、目の前の肉にかぶりついた。赤ん坊ドラゴンの体長ほどの大きな肉だが、ものすごい勢いですぐに食べ切った。腹がポッコリと膨らんでいる。


 細く未成熟な尾では、まだバランスが保てないようだ。立ち上がって何かしようとしているが、すぐに転がる。よく、ここまで食うな……おまえ、バカだろ。


「キャハハ、クゥちゃんのお腹、パンパンだよん」


「シルルが与えすぎなんだよ。あれでは歩けないよ」


「大丈夫、私が抱っこするもん」


 シルルは、ガバッと赤ん坊ドラゴンを抱き上げた。ヤツは焦ってもがいたが、すぐに諦めたようだ。おそらく、落とさないようにとシルルが力を入れたのだろう。


「シルル、その子、腹パンパンだから、あまり強く抱きしめてると、食べた物を吐くかもしれないよ」


「えっ? 強くしてないよ?」


「でも、苦しそうだけど」


「それは食べ過ぎて苦しいんだよん。食いしん坊なんだからー」


(シルルにそっくりだな)


 だが、シルルは、赤ん坊ドラゴンの腹を押さえないようにと、抱き方を変えたようだ。すると、安心したのかすぐに眠りに落ちたようだ。食ったらすぐに寝るのか。


(シルルにそっくりだな)




「どうだい? 卵は孵化したのか?」


 しばらく、洞穴から出て行っていた赤い髪の勇者が戻ってきた。手には野イチゴのような物を持っている。


「うん、クゥちゃんだよん。餌を食べさせたら寝ちゃったけど」


「へぇ、ドラゴンにしては小さいな。それに、そんな土色のドラゴンはあまり見たことがないが。緑色から色素が抜けたのか」


「さぁ、どうでしょう。適当にいじったから、新種になったんじゃないかと思うけど」


「ん? カール、新種というよりは変異種だろ。新たな種を創造するのは、神のチカラだよ」


 俺はあいまいな笑顔を浮かべた。言葉には気をつけねばならないな。


「シルルちゃん、赤ん坊だけど、そのドラゴンは、すでにシルルちゃんを越える戦闘力があるようだよ。抱いていて大丈夫かい?」


「ん? クゥちゃんは、そんな悪いことしないから大丈夫だもん。それに、寝ちゃったし」


「じゃあ、そろそろ出発しよう。なんだか遅くなったし」


「あ、野イチゴを摘んできたんだ。シルルちゃん、後でデザートに食べよう」


「えー、野イチゴは、すっぱいよん」


 シルルは野イチゴには興味を示さなかった。赤い髪の勇者が、地味に落ち込んでいるのがわかったが、あえて俺はスルーした。はげましてやる必要も義理もないからな。


「カール、残りの肉、魔法袋にしまっておいてよん」


「えー、解凍したのをまた凍らせるの? これは放置でいいよ。小動物が食べるよ」


「シルルちゃん、再冷凍した肉は臭くなるから、ドラゴンは食べないと思うよ」


「そう、じゃあ、おいておく。もったいないけど……」


 シルルは、自分が食べると言いだしそうな目で、残りの肉を見ていたが、小さなため息をついて、洞穴の出入り口へと歩き始めた。





 俺達は、森の中を北に向かって進んでいた。すると、高い木の近くに白い石碑が見えた。あれは、光の柱の……。


「そこの旅人、止まれ!」


 突然、十数人の人間が現れた。みな、同じ服を着ている。鎧ではないが、どこかの兵か? いや、あのマークはシードルの印だ。教会の関係者か。


「カール、まずい。教会の検問だ。あの旗は、勇者狩りだ。教会に集まらない勇者を捕まえているらしい」


 赤い髪の勇者が示した旗は、俺は見たことのない旗だった。だが、この人間達はそれなりに戦闘力が高そうだ。


「どうしよう? カール」


「シルル、気にしなくていいよ。堂々としていればいい。僕は、勇者じゃないし、アークさんは僕達の護衛任務中だから」


「カール、奴らに石碑を使われたら、いい逃れできないぞ」


「白い石碑?」


「あぁ、あれは神シードル様が作られた神具だ。各地に設置されている」


「何に使う物なの?」


「いろいろなことだ。石碑を通して、神シードル様はこの世界のことを見守ってくださっているんだよ」


(なんだと? 諜報道具か?)


「魔王軍が制圧したのに、神までがこの世界に直接関わっているの?」


「そのあたりはよくわからない。だが……」



 そんな話をしていると、人間達が声の聞こえる範囲まで近づいてきた。赤い髪の勇者は、話をやめた。


「おい、おまえ達はどこへ向かっている?」


 人間が、赤い髪の勇者に問いかけた。


「俺達は、神都に向かっている。これは何の検問だ?」


 赤い髪の勇者がそう言うと、彼らはヒソヒソと話し、別の人間が口を開いた。


「神都には、何をしに行くのですか。アナタは、その髪色そしてその戦闘力、赤の家系の勇者ですよね。そして同行者パーティが……うん? 妙ですね」


 その男の目が、シルルの抱く赤ん坊ドラゴンに釘付けになった。そして、俺の頭を見て首を傾げている。


「そちらの少年が、勇者ですかね? 戦闘力も子供にしては異常に高い。でも、紫の家系……? それに、トカゲなんかを連れて……」


「この子は、トカゲじゃないもん! 私の弟だもん!」


 シルルが、なぜか反論している。そのときに、彼女の尻尾が動いた。ふむ、トカゲだと言われて怒ったのか?


「弟? 獣人か。大人かと思ったら幼い顔立ちだな。どちらも白い尾か……。なぜ、神都に向かっている?」


 その男は、俺に目を向けた。こんな近距離でサーチ魔法か。俺の胸元に目を止め、首を傾げている。このペンダントが、偽物だとバレたか。


 蹴散らしても構わぬが、シルルは、人間を殺すと嫌がるか。この数だと、けっこうな血が流れる。いや、雷魔法を使って感電死させるという手もあるな。


 チラッと、赤い髪の勇者を見ると、諦めた顔をしている。シルルは、赤ん坊ドラゴンを抱きしめて、男達を睨んでいる。このままでは、ラチがあかない。



「僕達が神都へ何をしに行くかなんて、おじさん達には関係ないだろ。邪魔しないでくれる?」


「そうはいかない、検問の意味がないからな」


「誰を探しているの? 魔王? それとも勇者?」


「魔王は魔王城に居るだろう。この旗がわからないなら、おまえには用はない。赤い髪の男に聞きたいことがある」


「彼は、町長がつけてくれた僕達の護衛なんだけど。護衛任務中に連れて行くの? そのせいで僕達が、命を落とすことになったら、おじさん達を呪うよ!」


「えっ……呪術士なのか」


 俺は返事の代わりに、闇を出した。すると、男達は慌て始めた。


「す、すまなかった。勇者が獣人なんかと旅をするわけがない。通ってくれ。呪いはかけないでくれ。呪われると職を失う」


 男達は、慌てて俺達から離れて行った。


(なぜ、そんなことで職を失う?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ