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105、魔王城の奪還

 うわぁー!


「さらに内側を封じます。皆さん、奥へ!」


「いくらやっても無駄だ。光の兵器の前では魔王の封印など、紙切れ同然だ。せいぜい騒げ。もうおまえらに残された時間はわずかだ。わっはっはっは」


 彼らが持ち込んだらしき兵器から、ビーム砲が発射された。光属性の魔導砲だな。シードルの光魔法を使っているようだ。俺が不覚にも、旧勇者の街でやられた兵器だ。


 ビビーービビビビ

 ジーーーージジジ


 ミシッ、バリン!


 アイツら、遊んでいるのか? 宝物庫前にいる勇者達は、シェルターに逃げ込んだ者達を追い詰めて、楽しんでいるようにみえる。


 宝物庫の扉は、破られていた。だが、シェルターは、何層ものバリアが展開できるようになっている。ただ、それを起動するには魔力が必要だ。


 配下達は、何度もこれを繰り返しているようだ。バリアを張っては、光の兵器によって砕かれる。すると慌てて次のバリアを別の者が起動させる。


 奴らは、その時間をわざと待っているようだ。いずれ、魔力が枯渇する。そのときが、皆が絶望する瞬間だ。アイツらは、それが見たいのか。


 もしくは、勇者達の目を通じて、シードルがこれを見ているのかもしれない。魔物に仕込んだ監視用の魔道具を、勇者に仕込んでいても不思議ではない。



「皆さん、さらに奥へ!」


 破られたバリアを再び起動しようと、城勤めの者達が必死になっていた。それをニヤニヤと、勇者達は笑いながら眺めている。そしてバリアが完成すると、兵器からビーム砲が放たれた。


 俺は、バリアの外側に、闇の結界を張った。


 ビビーービビビビ

 ジーーーージジジ


 シューン


「なんだ? 今回のバリアの術者は魔力が高いのか?」


 シェルターのバリアを破れなかったのに、奴らには何の危機感もない。その盲信的な自信は、やはり洗脳か。


 勇者なら、臨機応変に戦略を変えるはずだ。だが、また同じく兵器でビーム砲を放った。


 ビビーービビビビ

 ジーーーージジジ


 シューン


「どういうことだ? 光のエネルギーの威力が落ちたか?」


「遊びすぎだんじゃないのか、もう飽きたぞ」


「光の剣で叩き切るしかないな」


 勇者達は、やれやれという表情で剣を抜いた。


 ガチン!

 ガキッ!


「あ? バリアの手前に何かあるんじゃないか?」


「光の兵器で突っ込むか?」


 奴らは、ようやく気づいたようだな。そして、シェルターの中にいる配下達も、奴らの変化に気づいたようだ。


 俺は、ついてきたマルルの直臣達につけた紐をたぐった。ふむ、二人がシェルターのバリアの中にいる。あとの三人は、バリアの外か。




 俺は、姿を現した。今、シェルターのバリアの内側にいる。


「あ! カール様? 黒髪になられて……」


 俺の姿を知っている者がいてよかった。シェルターのバリアの内側にいたマルルの直臣二人も姿を現した。


「城を取り戻しに来た。よくここまで頑張ったな」


 大半の者はポカンとしている。ふっ、人間のガキの姿だからな。だが、もう呪具はつけていない。俺は姿を変えていても、自由に自分の力を使える。


「おまえら、ここは任せる」


「ハッ!」


 マルルの直臣達は、やるべきことはわかっているようだ。弱っている者達の治療を始めた。




 俺は、バリアをすり抜け、俺の闇の結界もすり抜けた。


 すると、勇者達は、やっと警戒し始めたようだ。


「お、おまえは何者だ? なぜバリアをすり抜ける?」


「まさか、黒の勇者の家系か? 魔王側に寝返っていたのか!?」


(黒の勇者は隠れ里にいるだろうが)


 城に攻め込んできている勇者の数は、ざっと見て70〜80人といったところか。この宝物庫付近に50人程度、あとは逃げ道を確保するためか、あちこちの通路に20〜30人いるようだ。


 兵器は、10台ほどか。兵器を使って城壁も、ぶち壊したようだな。あちこちの通路に配置されている。すべて、シードルの光属性のエネルギーを充填してあるようだな。


「おい、おまえ、なんだ? 勇者ならなぜ……」


「このガキ、サーチできないぞ」


 やはり、勇者はザコだな。光の剣を持っていなければ、ここにたどり着くことさえ、出来なかっただろう。



 俺は、奴らを睨んだ。だが、ガキの姿だからか、誰も俺の正体に気づかない。まずは、洗脳状態の解除をしてからだな。


 グワン!


「うわぁ、な、なんだ!? あぁぁあ……」


 俺は、魔王の波動を使った。


 勇者達はバタバタと倒れていった。


(チッ、一部のみだな)


 ほんの数人だけは、洗脳状態が解除された。洗脳されていた間の記憶がないのか、混乱しているようだ。

 だが、ほとんどは、倒れてもすぐに洗脳が復活する。これがシードルの洗礼か。


 そして、この宝物庫にいる奴らは全員洗礼を受けたようだな。至近距離で俺の波動を受けても、すぐに復活している。



『おまえ達、俺の城で何をしている』


 俺は遠くにいる勇者達にも聞こえるように、念話を使った。通路で見張りをしていた何人かは洗脳が解除されている。


「なんだ? まさか、魔王か?」


「魔王は殺したじゃないか。復活したのか?」


『勇者が魔王城に攻め込むとはどういうことだ? おまえ達が戦乱を再び引き起こす気か。俺の配下を大量に虐殺した罪は重いぞ』


「怯むな! 魔王は殺せ! 魔族は殺せ!」


『そうか、死を望むか……』


「うるさい、死ねぇぇ」


 勇者達は、光の剣を構え、俺の方に向かってきた。


 俺は、マルルが用意した剣を抜いた。


 ダンッ!


 俺は、剣に魔王の闇を纏わせ、奴らを光の剣ごと斬り裂いた。


「ウァァ〜! な、なぜ光の剣が」


「ぐぇぇ」


 弱い。クズだ。俺は確実に一撃で、奴らを仕留めていった。一撃で殺すのは、せめてもの慈悲だ。自分の意思とは関係なく、攻め込まされたのだからな。


 あっという間に死体の山ができた。血の臭いが鼻につく。俺は、しかばねに炎を放った。シードルのことだ。放っておけば、死者を再び使おうとするだろう。



『城から逃さぬよう、封鎖しろ』


『かしこまりました』


 バリアの外にいたマルルの直臣に仕事を与えた。



 俺は、ペンダント型のアイテムボックスから、兵器製造の呪具を取り出した。そして、奴が話し出す前に指示を与えた。


『城にあるシードルの光の兵器をすべて食ってこい』


『えっ…………状況を確認しました。11台ですね』


『10台じゃないのか?』


『装甲タイプが10台、浮遊タイプが1台です』


『浮遊タイプ? 偵察機か?』


『はい』


『ふむ、浮遊タイプ以外の10台を食え。浮遊タイプはどこだ?』


『何かを探しているようです。あちこち移動しています』


『では、そいつは、撃ち落として機動力を奪え』


『かしこまりました』


(緊急時は、コイツはまともだな)



 マルルの直臣達から、逃げようとした勇者達の退路を封じたと報告が入ってきた。俺は、彼らの報告順に、城の通路に移動した。


「うわぁ〜、やめてくれ」


「なんだ? 魔王の子供か?」


 洗脳が解除されている奴は、俺を怖れ怯えて動けなくなっている。俺は、向かってくる奴らを、やはり一撃で斬り倒した。そしてしかばねは、直ちに焼き払った。



『怯えている奴らを捕らえよ。洗脳が解除されているはずだ。捕らえたら、宝物庫のシェルター前に移動させろ』


『ハッ!』


 マルルの直臣は、拘束魔法を使って、震えている勇者達を次々と捕獲していった。



 俺は城の中をサーチした。あちこち派手に壊されている。そして、兵器製造の呪具は、シードルの光の兵器を丸呑みしているようだ。中に人間がいた場合は、ペッと吐き出している。


(あれだな)


 浮遊タイプの兵器は、姿を隠してあちこちワープを繰り返している。確かに何かを探しているようだ。ふむ、人ではない。兵器から出るセンサーは、四角い物を探している。


(その形は、記憶の鏡か……)


 俺は、浮遊タイプの兵器の現れる場所を予測して、先回りした。何度か結界の中に入ろうとしている。宝物庫の奥には俺の私室がある。


(来た!)


 俺は、兵器が現れた瞬間、電撃を撃ち込んだ。


 グシャ、パン!


 床に叩きつけられるように落下し、その直後、自爆した。シードルの目か。記憶の鏡に何の用だ?



 浮遊タイプの兵器が自爆した後、シェルター前には次々と、震える勇者達が現れた。


『完了しました』


 そう言うと、マルルの直臣達は姿を現した。それとほぼ同時に、倍のサイズに膨らんだ兵器製造の呪具が戻ってきた。このサイズでは、アイテムボックスに入らない。


『光の毒、ゲットしちゃったわ〜』


『おまえ、宝物庫のシェルターを直せるか?』


『ええ〜、厳しいわぁ〜』


『じゃあ、洗脳解除の道具を、そこに転がってる人数分作れ』


 そう言った瞬間、呪具は、ジャラジャラと吐き出した。人数分と言っただろうが!


 俺は、マルルが、この道具に雪だるまのような人形をぶら下げて喜んでいたことを思い出した。くっ……くそっ。




 俺は、拘束され、そして震えている勇者達を睨んだ。


「ヒッ……な、なぜこのような」


「それは、こちらが聞きたい。なぜ、俺の城に攻め込んだ? なぜ、俺の配下を大量に虐殺した?」


「わ、わからない。何を言われているのか。何が起こったのか……」


「おまえ達が操られていたことは知っている。洗脳を解除できない奴らは、全員始末した。おまえ達の罪は重い。勇者の血筋に泥を塗った」


「あ、貴方は、黒の勇者? それとも……」


「俺は、魔王カルバドスだ。勇者の家系の者を何人も保護している」


「えっ……」


「おまえ達は、事態が収束するまで監禁する。その後は、勇者の家系の奴らに引き渡す。死ぬことは許さぬ。自らの愚かさを悔いて生きろ」


 俺は呪術を使った。勇者達はパタリと意識を失った。これで自害はできない。そしてシードルに再び操られることもない。


 俺は必死に抑えていた。何度、殺しても足りない。だが、コイツらは、ただのシードルの道具だ。怒りをぶつける相手ではない。


(くそっ……)



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