8 別れ
病院に着くと、早速幸は集中治療室に運ばれていった。
僕は、事情聴取をされてなにがあったのか聞かれたので全てを話した。数10分後、幸の両親が病院に到着した。
病院の先生に事情を聞くと、幸の母親は腰を抜かしたように座り込んでしまっていた。
父親は何度も、先生に何かを問いかけていた。最終的には父親は先生の胸倉まで掴んでいた。
必死に止める、看護師二人。
「あ、あのぉ⋯⋯」
見るに見兼ねるこの光景に耐えられず、僕は勇気を出して1歩踏み出した。
「なんだ」
「その手離してください」
「なんでだ」
「見るに見兼ねません。僕は暴力が嫌いなので、警察沙汰にならない内に辞めてください」
「なんだとー!」
幸の父親は、怒鳴りながら両手を離すと、今度は僕をターゲットとした。
その目には、怒りと悲しみが混ざったような闇が映っているように見えた。
「何がしたいんですか?」
「俺は娘をこんな目に合わせたやつをぶん殴りに来たんだよ!」
「幸さんのことですか?」
「なんで、幸を⋯⋯まさか、お前なのか!」
僕は、静かにコクリと頷いた。
「確かに、今日僕は幸さんといました。幸さんが血を吐いて倒れてから救急車を読んだのも僕です」
その瞬間だった。幸の父親の右手が僕の顔に直撃するとともに重くて鈍い痛みが顔中をはしった。1m弱先の椅子まで飛ばされた僕は、頭からの流血がひどく、片目開けられなかった。
おそらく、椅子の角に当たったんだろう。
僕は自分の頭を触り、自分の頭から血が出ていることを改めて確認する。
「これだけですか?」
「は?」
「これだけ⋯⋯幸の痛みは! これだけなんですか!」
足を痛めた僕は、這いつくばりながらも幸の父親の足にしがみつく。
幸の父親には何度も足で払われたけど、それでも僕は諦めなかった。
「お願いします!僕は、幸を......幸をこんな目になんか合わせたくなかった。もう幸とは近づくつもりはないです。だからこそ、ケジメを付けてください」
幸の父親は、また無言で振り下ろすと上の階へ上がっていった。
「お願いします! お願いします⋯⋯お願い⋯⋯します⋯⋯」
手だけを前に出して、何度もそう言ったが段々意識が遠のいていくのが分かった。
(ここは⋯⋯)
気がつくと、僕は病室のベッドで寝ていた。おそらくあの後に気を失っていたのかもしれない。
その後、看護師の方がきて説明をしてくれた。
どうやら、幸の父親に殴り飛ばされた時に運悪く足の骨が折れたらしい。しばらく車椅子で生活しなくちゃいけないことになった。
ちなみに、幸の心拍数は正常に戻ったものの、まだ意識は戻らないようだ。
幸は元々、体が弱くてこの病院で通院治療をしていたらしい。何故吐血したかまでは判明しておらず、これから検査をしていくそうだ。
僕も多少の検査を受けた後に退院するらしい。
取り敢えず、幸が回復してきていることは確からしいので、安心した。
「ところで幸はどこにいるんですか?」
「すみません、それはあちら側の父親に教えるなと言われておりまして⋯⋯」
看護師のお姉さんは申し訳なさそうに頭を下げた。
「いえ、それでいいんです」
これで良いんだ。これで自分でも分かったはずだ。人と接点を持つとどうなるかが⋯⋯。
僕はもう幸に会うことすらできない。合わせる顔もないし、そもそも僕が幸せになること自体がおかしかったんだ。少しでも僕は一人じゃないと思っていた時間が本当に馬鹿らしくなってきた。
「さようなら、幸。君との時間たのし⋯⋯いや、もう何も言わなくていいや」
溢れる涙を拭わず、流れるままに流した。
自然に開こうとする唇を力で抑えきると、端のみを上にあげて手をグッと握った。
(これからは僕なんか忘れて名前の通りに幸せに生きてくれ)
僕はもう疲れたよ⋯⋯。
6月10日 午前8時 15歳
読んでいただきありがとうございます!
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(これからテスト期間に入りますので、しばらく更新できません......)
テスト期間が終わり次第どんどん更新していく予定なのでよろしくお願いします!!
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