表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

6 彼女の瞳に映るもの

目覚まし時計が部屋いっぱいに響き、僕は目が覚めた。約4時間の睡眠だったため、若干の睡眠不足でもあった。

寝起きで頭がフラフラしながらも、卵を割ってご飯の上にのせてはそれを雑にかき混ぜた。

朝に卵かけご飯しか食べないのが僕のスタイル。

中学に上がるまでは、毎日のようにご飯と味噌汁と焼き魚に漬物が僕が起きるまでには当たり前のように食卓に並んでいた。

しかし、既にあの懐かしい祖母の味は、もうこの世界には存在しない⋯⋯。


「いただきます」


一人寂しく食べるご飯に味なんてあるのか、もう僕にはそんな感覚すら麻痺しているように思えた。

僕は、卵かけご飯を無理やり胃に押し込むように流した。


そんな食事も終えると、またインターネットで昨日の続きを見始めた。

しかし、僕の中で計画が全て立て終わる頃には、待ち合わせの2分前だった。


「し、しまった! 最初からやらかしてしまったじゃないか!」


急いで用意をして家を飛び出すが、公園に着く頃には待ち合わせ時間なんてとっくに過ぎていた。


「ごめん幸! 色々あって遅れた」


「うんまぁ、想定の範囲内だったけど、ちょっと残念だよ⋯⋯」


「そ、その代わり! 今日は僕がとことん幸をリードするよ!」


「本当!? じゃあ、許してあげようかな? でも、私は厳しいよぉ?」


笑いながらそう言う彼女を見て少し安心したが、これで一つの計画が潰れたことには変わりない。


「あ、幸の私服似合ってるよ。なんかいつも制服だから新鮮だよ」


「え? 本当に!? やったー!! 私今日のために気合い入れてきたんだよ。お、お洒落なんてできないけど⋯⋯お姉ちゃんにお願いして一緒にコーデしたんだよ!」


ネットに書いてあることなんて正直半信半疑だったけど、少しは信じられるのかもしれないな。

確かに、彼女の私服が似合っていると思っていたのは本心だけど、それをわざわざ言うものではないと思ってた。やけに上機嫌な彼女を目の前に、何分か前の僕の顔を思いっきり殴りたかった。

今日一日の計画はこうだ。


1・9時40分に家を出て、先に彼女が来るのを待つ。

(これはさっき失敗したけど、いつまでも引きずってても仕方ない)

2・私服を褒めて、積極的に彼女をエスコートする。

3・映画を見る。(彼女の手を握るなどすればなお良し)

4・映画の感想を言いながら、昼ご飯を食べる。(勿論、お金は僕が払う)

5・彼女に行きたいところを聞いて、そこに行く。

6・カラオケなど、盛り上がれる所に行く。

7・彼女をしっかり家まで送ってデート終了。


まぁ、中学生だとこれくらいで限界なのかもしれない。それより、僕は彼女をしっかりエスコートすることだけに集中することだけを考えるべきだ。


「それじゃあ、行こうか?」


「あ、うん!」


電車で映画館に向かう時間は、今更ながら緊張と恥ずかしさで心が揺れていた。

隣に座る彼女もこんな気持ちなのだろうか。横目で彼女を見ると、目が合ってしまい少し気まずかった⋯⋯。


目的地のアナウンスが流れると、隣で僕の肩に頭を置いて、すやすやと寝ている彼女を優しく揺らした。


「幸もうすぐ着くよ。起きて」


「う、⋯⋯うぅん⋯⋯」


目を擦りながらあくびをする眠たそうな彼女の手を引っ張って電車を後にする。

駅から歩き始めて、15分程で映画館に着いた。

まだ上映までに時間はあったけど、それまでに飲み物とポップコーンを買ってさっさと席に着いた。


「楽しみだね! 亘くん」


「そうだね」


僕は、そう言うと彼女に優しく微笑んだ。


「あ、始まるよ!」


約2時間後、映画が終演した。

感動のラブストーリーだったけど、なにかが引っかかるような不思議な映画だった。ラストはハッピーエンドかと思えば、そうでもなくバッドエンドかといわれるとそうでもなかった。そのストーリーの中にも感動させる場面が多々あって涙脆い僕は危うく泣いてしまいそうだった。

隣の彼女は、静かに泣いていた。

しかし、その涙は映画で感動したとかそんなものじゃないように思えた。どこか哀れむように何かを見透かしているように見えた。

その涙は誰に向けてなのか⋯⋯。エンドロールが流れ終わるまで彼女に動きはなかった。


「さ、幸? 大丈夫⋯⋯?」


「あ、うん! ごめんね。なんか、映画で泣けちゃって」


(嘘つき⋯⋯)


「うーん! このお肉おいしいねぇ」


「そうだね⋯⋯」


昼ご飯を食べていても、さっき感じたなにかがずっと引っかかっている。一人で食べている訳でなくても、味が感じられなかった。

映画の感想も言わなくちゃいけないと思っていたのに、映画の内容なんて全て抜けてしまった。

そんなことよりも、考えさせられることに出会ってしまったから。


6月9日午後12時26分 15歳 カウントダウン1

読んでいただきありがとうございます

不定期更新ですが何卒よろしくお願いします!

(更新する時には、夜の9時半〜10時頃になります)

Twitterでも、更新通知は送っていますので応援していただける方はこちらからフォローなどよろしくお願いします!

@towa_15_

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ