4 カウントダウン
朝起きると、僕は床で寝ていた。
隣に置いてある携帯を見て僕は全てを悟った。
(あ、寝落ちした)
彼女とのLINE中に気を緩めて寝落ちしたらしく、何件もの通知がきていた。
『ごめん、寝落ちした』とだけうつと、朝ごはんを済ませてさっさと制服に着替えた。
「行ってきます⋯⋯」
何言ってるんだろな、一人なのに⋯⋯。
この家には、僕しかいない。
親は物心がつく頃には既に亡くなっていた。中学に上がるまでは、ずっと祖父母の家にいさせてもらったけど、その二人も今は⋯⋯。
僕の周りの人間は、次々と不幸に巻き込まれていった。次第に僕はこれが自分のせいなんじゃないかと思うようになってきた。だから、そんな自分を恨んだ。
しかし、そんな僕にも一つの希望ができた。
それが、幸だ⋯⋯。
彼女は僕にとって希望の存在。だからこそ、幸だけは絶対に傷付けたくはない。
“幸は僕が絶対守る。絶対に傷つけやしない”
あの夜、彼女に向かって勝手にそう心に刻んだ。
「おはよう、亘くん」
「あ、おはよう⋯⋯幸⋯⋯そ、その⋯⋯寝落ちして悪かった」
「本当だよ、寝落ちって健康に悪いらしいから、もうダメだよ!」
「はい⋯⋯」
LINEの返信をしなかったことに怒らず、健康面を心配してくれている所に対して素直に嬉しさを感じながらも、寝落ちしてしまったことへの反省をしながら、上靴に履き替えた。
幸と僕は同じクラス同士なので、教室までは一緒に向かった。
そこからは、ただの他人。僕達が付き合っていることは周りに秘密なのである。
たしかに、隠すことは幸には反対された。しかし、それだけは僕にも譲れなかった。勿論、付き合っていることを公開することは別にいいと思っている。
だからといって、それを公開すると周りの幸の評価が下がってしまうかもしれない。
僕には、友達はいない。
僕は今まで、人を不幸にしてしまうと思ったから、自分から周りに対して素っ気ない態度をとって、人を寄せ付けないようにしてきた。
それでも、一人だけそんな僕にも近づいて来る人がいた。
それが幸だった⋯⋯。
勿論、僕はいつも幸に対しても、塩対応だった。それでも、こんな僕に諦めず何度も近づいてくれたことが嬉しかった。
彼女だけが、いつも僕の理解者のように見えた。
何度も言うが、だからこそ僕は彼女を不幸になんてしたくない。関わりができてしまった以上、彼女に不幸が訪れるかもしれないことは分かっている。
だからこそ、僕は彼女を守る。この命に変えても幸を不幸になんかさせない!
そう思いながら、僕は教室に入った。
しかしこの日から、僕と幸にとっての全ての終わりまでのカウントダウンが本格的に進み始めた。
6月8日午前8時2分 15歳 カウントダウン3
読んでいただきありがとうございます!
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