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25話 2人の幸

琴音さんの余命が告げられてから、2週間の月日が過ぎようとしていた。

依然として遥さんは学校で姿を現さない。

食堂から2人だけでも減るというのは本当に違う世界に居るような感じだった。それが自分の友達であったから余計にだろう。

裕也も僕も無言で食事を済ませるとそのまま自分の講義を受けてさっさと帰宅した。


裕也の目には絶望というよりは希望が映っているように思う。根拠はないけど、僕なら分かる。

琴音さんがもしかしたら目を覚ますことがあるのじゃないか。とか、生きる確率も高いんじゃないかと。

しかし、裕也は知らない。彼女が今どういう状況にあるのかを。

もちろん、余命などは知っている。しかし、それはあくまで2週間前のこと。

今の彼女の状況は2週間前が凶と表したのなら、今は大凶だ。

余命が早まるかもしれないと忠告され、集中治療室とまではいかないものの、面会も限られた時間にしかできない特別な病室に入れられていた。

そんな所へと今すぐに裕也を連れて行くのも酷だと思ったので、彼女のお見舞いに1人で行ったときだった。

見覚えのある顔が病室の椅子で座っていた。ドアが開いたのにも関わらず目線を彼女に向けたまま、優しい手つきで彼女の力の入っていない手を撫でていた。

僕は驚きのあまりただ病室の入口で立ち尽くしてしまっていた。

しかし、心の声はそっと漏れてしまっていた。


「幸のお母さん······」


どの音にも反応しなかった幸の母親はその声に耳を傾け、そこへゆっくりと視線を向けた。

目頭には涙を浮かべ、こちらをじっと見つめていた。


「もしかして、亘くん······?」


「はい、ご無沙汰しています」


心臓は今にも破裂しそうなくらいドキドキしていた。無理もない、あんな別れ方をした彼女の母親だ。

当然、怒っているに違いない。


しかし、1つ疑問点があった。それは、何故幸の母親がここにいるのかということ。

親戚などという関係にあるかもしれないが、その確率は非常に低い。幸の両親は共働きで平日は毎日仕事のはずだ。

ただ、そんなことよりも先にしなくてはいけないことが僕には残っている。


「このような場所で、こんなことを、ましてや僕が言うのは常識的にもおかしいのは分かっています。それに僕はこんなことを聞く権利なんて、とうの昔からないことも分かっています」


僕は幸の母親がコクンと頷くのだけ見て意志を決めた。


「幸さんは元気ですか······」


返事は返ってこない。その代わりに幸の母親の目からは涙の粒が次々と流れていた。

僕は覚悟を決めて真剣な目で幸の母親を見つめた。今更と怒られたり殴り飛ばされてもおかしくはないと思っている。

生半可な覚悟で僕はこの場所にいるわけではないと知って欲しかった。


しかし、やっと返ってきた返事は僕を絶望にたたき落とした。


「この子、この子が幸です······」


幸の母親が指した先は余命が短くなって、ベッドで眠っている琴音さんだった。


7月 14日 午前9時 21歲

お待たせしました!

一応、前よりも投稿ペースは遅いですし、文章力も下がってるかもですが、、、

取り敢えず、僕サヨの更新再スタートです!!!

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