2 一晩明けて
僕と幸の関係は、僕が思っていたカップル像とは少し違うような気がする。
彼女と目が合うとすごく嬉しかった。思わず手を振りそうになったりしたこともあって、左手で必死に右手を押さえつけながら廊下を歩いた時もあった。
しかし、話しかけようと手を伸ばしても、彼女の視界には、まるで僕が映ってないようにすぐに目をそらして歩いていった。
おそらく、まだ昨日のことを怒っているんだろう。
彼女との距離は走りさえすれば余裕で追いつく距離だった。
けど、それ以上に心の距離を感じて、寂しい気持ちとモヤモヤした気持ちが僕がそれ以上彼女のもとへ進ませることを拒否した。
まるで人生ゲームで一回休みのトラップにハマってしまったように足が動かず、僕は呆気にとられた。
帰り道、昨日の公園の前を通ると、やっぱり昨夜のことを思い出してしまい、恥ずかしさが少し顔に出た。
でも、その中に少し悲しみもあったかもしれない。
帰宅してシャワーだけを軽く浴び、髪をちゃんと拭いていない状態にも関わらず、ベッドに勢いをつけて飛び込んだ。
僕の頭の中には、やはり彼女が浮かんでいた。
ここでやっと、自分のメンタルの弱さに気付いた。
(何考えてんだろな、気持ちわりぃ⋯⋯)
僕は、一人でため息をつくとそのまま浅い仮眠についた。
仮眠のつもりが、そのまま深い眠りについてしまっていた僕は、夜中の1時半頃に目を覚ました。風呂にも入ってないし、ご飯も食べてなかったけどなにもする気になれなかった。
僕はまたそのまま眠りにつこうとしたが、お腹は正直だった。
(⋯⋯めんどくせぇ)
僕は、冷蔵庫に入っている生野菜のサラダを取り出して、机に並べそれにかぶりついた。ドレッシングもかけずに生野菜本来の味を楽しむのも、たまには悪くないと思った。
そして、そのシャキシャキする音が気持ちよくて、嫌なこと全てを忘れさせてくれるような気がしたから、これをいつまでも噛んでいたかった。
結局、生野菜のサラダだけだとお腹いっぱいにはならなかったけど、何も食べたくなかったので腹にためる程度には丁度良かった。
僕はまたベッドに戻って、スマホを手に取ると、何通かのメッセージが何時間も前に届いていた。
(寝ている時にLINEがきていたんだな)と、思いながらスマホのパスワードロックを慣れた手つきで解除して内容を確認する。
『亘くん、お疲れ様』
『今日は、無視してごめんね。あれから私自身考えて、私も悪かったと思ったんだ。だから、明日からは一緒に話したりしようね!』
僕は、『ううん、僕も昨日怒らせちゃってごめん』と返信すると、僕はまたベッドで眠りについた。
これで明日からはこのモヤモヤは消えることだろう。
6月2日 午前2時14分 15歳
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