15 もう一眠り
今回は息抜き程度に書いたのであまり本編はすすみません。
太陽も完全に沈み、上を見上げると月が光っている。僕達はカラオケとその周りの遊技場からさよならして、今はとある居酒屋にいる。勿論、女性陣も一緒でだ。
「そんでさぁ、俺はそのハゲ教授に言ってやったんだよ!」
どういう訳か、僕以外の3人はいつのまにかお酒に手を出していた。居酒屋だから仕方ないけど帰り道大丈夫なのかなぁ......。
女性陣は知らないが、裕也ははっきり言ってそこまでお酒に強くはない。そのくせして見栄を張ってロックなんか頼む。
帰りお前を家まで送らなくちゃいけない僕の身にもなってみろ。周りの人の視線は痛いし、なによりお前が酒臭い。
一方、後々のことをしっかり見透せる僕はというと、やっぱり炭酸水だった。
それに自慢じゃないけど、僕は他の人よりも酒が弱い。一口でも飲んだらそこで最後、気づいたら朝。夜の記憶はほとんどないくせに、二日酔いだけは残る。
だから酒は嫌いなんだ。
「それより、女性陣ちゃんと飲んでる? こいつは仕方ないにしろ、2人はどんどん飲めよぉ、今日はこいつの奢りだぁダーハッハッハ」
これは手遅れだ。女性陣の2人も僕に助けの視線を向けるが、僕にはなにもできない。ここまで酔ったらもう手遅れだよ⋯⋯。
「ほらぁ、琴音ちゃん飲んでる?」
「あ、いやぁ私そこまでお酒強くないのでここらへんでやめておきます」
今度は、苦笑いを浮かべながら「すみません」という彼女から、若干安心しかけていた彼女が標的となった。
「遥ちゃんも飲まないの?」
「あぁ、私も、もう⋯⋯大丈夫⋯⋯」
必死で目を逸らす彼女にまだ迫っていく裕也はどこからどう見てもストーカーにしか見えない。
「ほら、裕也、お前酔いすぎだ。帰るぞ」
流石にこんな裕也を見るに見かねたので僕は立ち上がって裕也に肩を貸すと、そのまま会計を済まし、裕也を家までおくるとそのまま帰路についた。
酒は飲んでも飲まれるなっていうのはこういうことなんだな、と僕は密かにもうお酒を飲まないことを誓った。
帰宅して風呂から出ると珍しく裕也以外のLINEの通知がきていた。
『亘さん、今日はどうもありがとうございました。裕也さん大丈夫でしたか? また機会があれば一緒にご飯でもどうですか?』
この丁寧な文章は琴音さんだ。カラオケから居酒屋に移る途中に2人のLINEを交換したのをすっかり忘れていた。
『うん、こちらこそありがとう。楽しかったよ。いいよ、お互い予定が空いた時なら』
僕は手早に文章をうつと、そのままベッドで眠りについた。
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翌朝、僕は、昨夜はあんなに酔っていたくせに一晩明けるとまるで何もなかったかのようにケロッとしている裕也の電話で起こされた。
「今何時だと思ってるんだよ」
「何時ってもう昼の12時だぞ、起きてて普通の時間だろ」
「え、もうそんな時間なの⋯⋯」
「大学休みだからって気が抜けてるんじゃないか?」
「あぁ、そうかもしれないなぁ」
気の抜けた返答に罪悪感も感じてはいるものの、寝起きなのだから裕也も許してくれるだろうと訂正はしなかった。
「それより、昨日の記憶あんまないんだけど、俺なんかやらかしたか?」
「あぁ、それはもう酷かったよ」
「うわぁ、まじか」
「うん、一応謝っておいた方がいいよ」
「まじかぁ、気まずいなぁ......」
「仕方ないだろ、自業自得だ」
やがて、裕也は寝起きに響く声であーだこーだと口々に呟き始めたので電話をきってやった。これ以上不毛な会話を続けても拉致があかない。
「あぁ、もう昼なのかぁ⋯⋯」
時間が昼でも気分は朝、何もしたくないのはいつでも一緒だ。
(今日はもう一眠りするか⋯⋯)
僕は静かに目を閉じた。
5月27日 午後12時5分 21歳




