13 新たな道
更新遅くなりすみません。
今日のは未来の亘くんの話の続きなのでこんがらないように気をつけて下さい。
「⋯⋯もう⋯⋯朝か⋯⋯」
昨日、高台で叫んでから何をしたんだろう。あんまり思い出せないけど、頭が割れるほど痛かった。
恐らく、二日酔いだろう。酒に弱いくせにやけ飲みをした結果がこれだ⋯⋯。
頭を右手で押さえながらベッドから立ち上がるとすぐさま時計を確認した。
時刻は午前10時を回っていて、完全に遅刻決定だ。後で裕也にどやされるんだろうな、と後悔しながらも大学に行くための準備を始めた。
朝食をとるひまなどあるわけがなく、歯だけ磨くと家を後にした。
朝の通勤ラッシュの時間は過ぎ、楽に電車に乗り込めたのは久しぶりで少しだけ、この電車を僕が独占しているように感じた。
大学に着くとなるべく人に見つからないように十分警戒して教室へ向かった。
この時間は生徒達は普通に授業を受けている時間だから、廊下に生徒がいる方がおかしいからだ。
教室に着くとやはり周囲の視線は一斉に一点に集中した。遅刻なんてしたことがない僕だからこそ、少し意外そうに見つめる奴もいればニヤニヤと軽く指を僕に向けて友達と一緒にひそひそと何かを呟く奴もいた。
教授には適当な理由で遅刻した、と予め言っておいたから、僕に構うことなく授業を進めた。
自分の席についてノートの準備をしていると斜め後ろの席から小さな紙飛行機が飛んできた。
「痛っ⋯⋯」
僕はすぐ斜め後ろの席の裕也を睨みつけた。裕也は僕の視線に気づくと手でなにか合図を送った。
やがて僕がその合図の意味が分からないと気がつくと口パクで何かを言い始めた。
それでも聞こえず、首を傾げると
「だぁかぁらぁ、紙飛行機を開けろって言ってるんだよ!」
と叫んだ。
裕也は、しまったと言う仕草と共に口を塞ぎ青ざめた顔で震えながら前を見た。
笑ってるのに絶対笑っていない教授が裕也の前に立っていた。
「山口、後で俺の所にこい。話がある」
顔は笑っているはずなのにその言葉には明らかに怒りが入っていた。クラス全員が震え辺りが凍りつくように静かになった。
「ひゃ......ひゃい」
裕也⋯⋯骨はちゃんと拾う。
「あぁ! あのくそ教授説教長いんだよ。ちょっと叫んだくらいでガミガミガミガミと!」
あれから裕也が連れられて戻ってきてから今まで教授を吐き捨てるように愚痴をこぼした。
この愚痴と頭痛に襲われながら食べるオムライスは美味しくないのは当たり前であり、お腹の膨らみもいつもより早かった。
350円も損した気分は最悪だ。
「でも、元を辿ればお前が分からなかったからだろ! お前がちゃんと感じとっていれば俺はこんなことにならなかった!」
「あのなぁ、あんなジェスチャー分かる分けないだろ。あぁ、そういえばなんで開けなくちゃいけなかったの?」
「ん? あぁ、なんで今日遅刻したんだよ?」
「あぁ、まぁ酒飲みすぎて寝過ごした」
「⋯⋯お前そんな酒飲むやつだったか?」
「いや、全然だよ」
「⋯⋯また、思い出しちまったんか?」
「⋯⋯」
「そうか、なんか悪かったな」
「良いんだよ。どうせ僕は人を不幸にしてし――」
そう言った瞬間に胸ぐらを裕也に掴まれた。裕也は怒りの意を顔に浮かべ、僕の頭に頭突きをした。
「あぁ! 痛ぇ!」
意外にも痛がってるのは裕也の方だった。
裕也は格好がつかなかったことに恥ずかしがらずに唖然としている僕の胸ぐらをまた掴んだ。
「お前がなんて言っても俺は否定し続ける! お前は人を不幸になんてしていない。だったら俺はどうなんだよ! お前と一緒にいて不幸だなんて思ったことなんて1回もねぇよ! だから⋯⋯だから、次そんなこと言ってみろ、絶対に許さないからな」
乱暴なやり方だったけど、僕の心に深く響いた。
歩いても歩いても霧が前を見せてくれず、止まることを許さない僕の人生。その霧を払ってくれ、全ての荷を下ろしてくれた。
途端に涙が止まらなくなった。いい大人が泣いて情けなくは思ったけど今は許して欲しい。そして祝って欲しい。
僕の新たな道の出発点を⋯⋯。
5月22日 午後12時40分 21歳
読んで頂きありがとうございます(*ˊᗜˋ*)/ᵗᑋᵃᐢᵏ ᵞᵒᵘ*
これからも不定期更新ですが何卒、よろしくお願いします!




