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12 未来

朝の6時30分に起床して、コンビニの菓子パンを食べながら電車に乗り、大学に向かう。

毎日のように朝の通勤ラッシュに巻き込まれてきたからか、最近やっとそれに少し慣れてきたように思う。ただ暑苦しい車内の中だけは慣れなかった。

本当は、大学なんて行く必要は無かったのかもしれない。

僕には、もう叶えようと思う夢なんてないし、これから先も夢を見つけることなんてないだろう。


午前の授業が終わったあと、僕は食堂でオムライスにかぶりつく。

350円でこんなに美味しいオムライスが食べられるのは本当に嬉しい。それに僕は、このオムライスのためだけに大学に来ているようなものだ。この食堂が無くなれば、僕が大学を中退するということを意味している、そう言ってもいいだろう。


夕方からは、コンビニのバイトが入っている。主な仕事は品出しやレジスター、他にも店内の掃除など⋯⋯。

実は、簡単そうで疲れる仕事だ。

接客業だからって、常にスマイルなんてできるわけないし、対応が雑だって言われても、こっちもなにやっていいか分からないんだよ。


(今すぐ誰かに愚痴ってやりたい)


すぐさまポケットからスマホを取り出した。LINEから唯一の親友の裕也(裕也)を探して、通話ボタンを押した。


「もしもし、僕だよ。実はさぁ⋯⋯」


僕は、一部始終話すと、裕也に向かって愚痴や不満をぶつけた。そんな僕でも優しく包み込んでくれる裕也は、僕の中で仏様のような存在だった。


「へぇ、そんならバイト辞めたら。亘に合わなかっただけだろ。だってそれ普通のことじゃね? 雇っている側に、雇ってもらっている側が文句ゆうのもおかしいだろ」


「え、そうなの? なら僕も我慢して粘ることにするよ。ありがとう裕也」


こういう、他愛ない話もやっと面白いと思えるようになってきた。

もう少しで2年か⋯⋯。


「なぁ、幸...そっちはどうだ。こっちは、最悪だよ。お前のいない世界なんて最悪だよ、いっそ消えればいいのにな⋯⋯」


僕は、少し笑みを浮かべながら涙を流した。

なんで今になってあいつのことが頭の中に出てくるのかが分からなかった。もう、忘れたいのに、忘れられない。追憶が僕の胸をいつまでも苦しめた。

人混みの中、ただただあいつのことを思い浮かべながら走った。もう、何も考えたくなかったのに、彼女のことも何もかも。なのにどうしても頭の中には彼女が浮かんでくる。これ以上この目に何も映したくなかったから、腕で目を隠しながらひたすら走った。

人にぶつかっても、舌打ちされても、睨まれても⋯⋯もう、なにも痛くないんだよ! 周りなんてどうでもいいんだよ!


気付いたら僕は、高台にいた。二人の思い出の公園がその真下に見えた。そして僕は、真下に向かってこれ以上ないくらい大きく叫んだ。


「お前のいない世界なんて! ⋯⋯本当に、なんにもないんだよ⋯⋯」


徐々に静まる声と共に、体に力が入らなくなってそのまま座り込んでしまった。


松蔭は言った

「来るものは拒みません。ですから、その人が今までどれだけ駄目だったか、性格が悪かったかは、別に知りたくないですし、どうでもいいのです。

去るものは追いません。ですが、あの人がどれだけ素敵でいい人だったか、どういうわけか、いつまでも忘れられないんです」と。


5月21日 午後9時 21歳

読んでいただきありがとうございます不定期更新ですが何卒よろしくお願いします


「覚悟の磨き方」 超訳 吉田松陰 編訳 池田貴将 引用しました

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