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11 お先真っ暗

「亘くんはやっぱり私なんて嫌いなんだよね? だから私の前から消えたんだよね。連絡をくれないのも⋯⋯」


「違う! 違うんだ幸。確かに黙って君の前から消えたことは確かだけど......僕はまだ君のことが、大す⋯⋯」


「やっぱり、言い切ってくれないんだね。さようなら」


「待て! 幸、待ってくれ!」


叫ぶと同時に、目が覚めた。

飛び起きた先には、見慣れた部屋と家具があった。乱れる呼吸を整え、そこらじゅうから流れる汗をシャワーで流した。

学校では幸の幻覚が見てたり、生徒の顔に[幸]の文字が浮かんでいた。顔のパーツ全てが無く、浮かぶその文字だけで、会話や食事をする光景が嫌でも目に映る。授業も集中できず、結局適当な理由をつけて早退した。


夜になっても明かり一つもつけず、部屋の角に身を寄せ、腕で顔を隠した。

幻覚が僕を襲う。彼女との楽しかった思い出、彼女の笑顔、彼女の悪いところ。僕の目に映っていた彼女以外にも僕の知らない彼女までも脳裏をようによぎる。特に鼻につくのはたまに聞こえる「なんで、なんでなの⋯⋯」、「なんで何も言わないでいなくなったの?」という言葉だった。

もう、僕は自分で自分を制御できない。頭が割れるように痛くて、彼女の言葉が頭中に響く。


「あぁァ!!!!!⋯⋯」


気がついたら僕は、病院のベッドに寝かされていた。

依然として、汗は身体中から流れていることが分かった。自分が何故ここにいるかは大凡の予想はつく。しかし、僕の病状や何故ここにいるのかを看護師さんは丁寧に話してくれた。僕の叫び声に驚いてお隣さんが救急車を読んでくれたことも⋯⋯。


幻覚や幻聴の症状はいつどんな時に表に出るかは分からないからこそ、僕はなるべく医師からの距離がほとんど遠くない病室に入れられている。

僕は、これから何も起きないように最低限度の動き以外は全て表に出さないようにと心がけながら身をベッドにまかせた。

僕の幻聴や幻覚などの症状はおそらく、精神疾患といった精神病だろうと診断された。そして、僕は毎日のように最低限度の生活の動きに加えて、精神安定剤を3錠程だけ売店で買った天然水と共に喉に流し込んだ。

そんな生活が始まってからは幻覚や幻聴の症状は徐々に無くなっていった。

あとは自分の意識の問題らしい⋯⋯。

僕はいっそこの頭の中の知識や数える程しかない思い出を全てゲームのように初期化したいくらいだった。

壁に頭をぶつけたり、自分自身をタコ殴りにしたりと死なない程度にやれる事は全てしてきた。

だけど、最後の最後で躊躇してそれまでどんどん進んでいた足が止まった感覚がした。

踏み出す足さえ消え、僕は周りも真っ暗の何もない狭いところで倒れる。


〈お先真っ暗〉まさに僕のために作られたような言葉。

踏み出す足さえ無くなっても、この先に光がないことにも気づきながらも進み続ける。

どこで壁にぶつかってどこで止まるのかも分からない道を。


9月2日 19時 15歳

色々ありまして更新がだいぶ遅くなったことを大変お詫び申し上げます

これからも不定期更新ですが、何卒よろしくお願いします

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